東急目黒線西小山駅周辺は、個性的な個人店が見つかる東京の穴場エリア。そんな西小山に2013年3月オープンした「キュイソン ルカ」は知る人ぞ知る焼き菓子の専門店です。丁寧につくられた愛らしいお菓子たちは、一度食べれば思わず誰かに教えたくなるおいしさ。焼き菓子の“できたて”のおいしさを知ってほしい。そんな想いで日々お菓子づくりに励むオーナーの野澤さんに、お話をうかがってきました。
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01
閑静な住宅街の街角で
西小山駅から一直線に続く並木道を進むと、緑と白のストライプ模様のテントがぽつり。緑豊かで閑静な住宅街のにあるアパートの一階に「キュイソン ルカ」はあります。シックなレンガ調のタイルがオシャレな外観。大きなガラス窓からつい中を覗いて見てみたくなります。
ドアはいつもオープン
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02
できたての焼き菓子がずらり
店内に足を踏み入れると、たちまち包まれる香ばしい香り。耳に心地よく響いてくるジャズ。
中央にあるどっしりとしたテーブルには、空気に触れないよう一つ一つ丁寧にラッピングされたお菓子が美しく陳列されています。
フィナンシェにマドレーヌ、種類も豊富
かわいらしいモチーフクッキー
見るからにサクサク
フルーツたっぷりのパウンドケーキも
同時に店内のインテリアにも目を奪われます。あたたかな灯りを落とす真鍮のライトや大きなドライフラワーのリース、飴色の床など目に入るものがとても素敵で、外国のお菓子屋さんにいるみたい。
女性は絶対に好きな空間
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03
キュイソンルカ誕生秘話
今回お話をうかがったのは、キュイソン ルカのご主人でオーナーパティシエの野澤克正さん。店内のお菓子はすべて野澤さんが男手一つで手づくりしています。
そんな野澤さんは元サラリーマン。会社で働いている時からいつかお店をやりたいという漠然とした想いがあり、コツコツ貯金をしていたという堅実家の一面も。料理や工作など幼い頃から「ものづくり」が好きで、今思えば小さい頃に母親がプリンやフィナンシェをよく作ってくれたことが影響したのかも、と懐かしそうに話をしてくれました。キュイソン ルカ オーナーシェフの野澤克正さん
会社を辞め、ル・コルドンブルーという本場フランス人講師が教える菓子専門学校に通ったのち、3つのケーキ店で13年ほど修業を積んだ野澤さん。
「専門学校では、マダムに混じって勉強しました(笑)。今考えればかなり高度な技術を教えてもらったと思います。」店内奥の厨房が野澤さんの“いつもの”場所
焼き菓子屋を目指したきっかけを聞いてみると、
「ケーキ屋では、焼き菓子って添え物みたいな感じ。店頭には出ない失敗作の焼き菓子を食べた時、できたてはこんなにおいしいのにお客さんに知ってもらえないのはもったいない、と思ったんです。」
ケーキ店での主役はケーキ。生ものであるがゆえ製造にも手間がかかるし、どうしても焼き菓子はつくりおきになってしまう。いつしか野澤さんは、焼き菓子を専門に作るお店を出したいと思うようになったそうです。「今まで二子玉川の高島屋でお菓子を買っていたというお客さんが、うちに来てくれて爆買いしてくれるようになったんですよ」
とうれしそうに話す野澤さん。
開業以来、野澤さんがつくるお菓子を求めて、地元民だけでなくわざわざ買いにやってくる人も多く、確実にそのファンを増やしています。確かな技術と「できたて」へのこだわりが裏打ちされている証拠ですね。 -
04
こだわりの賞味期限「7日間」
キュイソン ルカの焼き菓子の賞味期限は「7日間」。これは保存料をつかわず、できたてのおいしさがそのまま感じられるようにという思いから。焼き菓子の種類はフィナンシェ、ガレットブルトンヌ、ガトーバスクやリボンでラッピングしたクマのメープルマドレーヌなど常時20種類以上が揃っています。しゅわっとほどける口どけのシフォンケーキも人気商品。
クマのメープルマドレーヌ
紅茶のシフォンケーキ
かわいらしい箱に入れてもらえる詰め合わせギフトセットもあり。
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05
建築家も見学にやってくる空間美
西小山は知り合いがいたこともあって土地勘があり、物件を探していたそう。店前の並木道と変わった窓の形が気に入り、タイミングよく空き物件。さっそく申し込んだものの、すでに先約が数件。飲食店はNGと聞いてあきらめていたところ、なんと大家さんがお菓子好き。特別に貸してもらえることに。野澤さん、強運の持ち主です。
変わった窓の形は前の借主がつくったものだとか。
店内を彩る木製の什器やインテリアは野澤さん自身が選んだお気に入りの品々。開業前にふらっと入った経堂のアンティークショップでひと目惚れしたという巨大なダイニングテーブルは、150年前インドの山奥で使われていたものだとか。
「そこのショップの雰囲気がすごく気に入って、オーナーが店をデザインした建築士さんを紹介してくれてうちのデザインもやってくれることになったんです。」元々はボロボロで、磨いてようやくここまできれいになったそう。
インドの部族の族長の名前が書いあるんだそう。解読不能。
他にも、50年前のオランダのイカ釣り漁船で使われていたライトや、一つづつ色が違うまるでチョコレートのようなモロッコ製のタイルなど、遊び心あるインテリアが店内にはいっぱい。
「内装は手伝ってもらいながら自分でもやりました。床なんかは、斜めに板を張っていくのが難しかったですよ」
スマートフォンに入った当時の改装中の様子の写真を見ながら、懐かしそうに話す野澤さんは大変だったと言いつつも楽しそう。お店への愛情をひしひしと感じました。イカをおびきよせていたライト。まさか焼菓子店で使われるなんて。
手作業で貼るのも苦労したそう。
洗練された感性にあふれたキュイソン ルカの空間演出は、建築やデザインのプロたちの目にも止まるように。建築家のバイブル誌「商店建築」に掲載されたこともあり、それを見た建築家の人が店を訪れることもあるんだとか。
「みなさんお金かかってるでしょって言うんですけど、すごくまけてもらったから金額言うとびっくりするんですよ(笑)」「商店建築」には見開きで特集されています。
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06
じっくり育てるシュトーレン
最後に野澤さんに一番好きな焼き菓子を聞いてみました。かえってきたのはクリスマスのお菓子としておなじみのドイツのお菓子「シュトーレン」。フルーツやナッツは9月頃から洋酒に漬け込み、毎日ぬか漬けのようにひっくり返してなじませるんだそう。こだわりは白い砂糖に隠れたアーモンドを練りこんだマジパン。
洋酒をぐんぐん吸っておいしくなります。
「毎年予約でほとんど売り切れてしまって、クリスマス当日はお店にないから今年はまた少し多めにつくってます」
特別に見せもらったできたてのシュトーレンと、2週間寝かせたシュトーレン。できたては無臭なのに、2週間たったものは内側からじゅわりと染み出るような濃厚で華やかな香りが漂ってきます!雪化粧をしたできたてシュトーレン
シュトーレンはこの“寝かせ”が重要だとか。ゆっくりと時間をかけて育てられたシュトーレンは一度食べたらきっと虜になりますよ。私も少し頂きましたが、しっとり感がすごくてびっくり!食べるたびにいろんな食感や味を感じられてわくわくするお味でした。
見た目も香りも変わった2週間後のシュトーレン
店頭にはリボンでおめかしをされ並びます。取材時にも、「去年食べておいしかったから」と予約しにくるお客さんが。リピーターがこれからも増えそうですね。
シュトーレンの予約はお早めに。
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07
西小山の街角で今日も
取材中も厨房のタイマーがなると、お菓子のもとへ急行する野澤さん。ユーモアをまじえて質問に答えてくれる素顔のそばに、お菓子作りにかたむける熱量を感じた瞬間でした。アンティークが彩る空間で、今日も野澤さんは一生懸命お菓子を焼き続けています。ぜひ一度、ささやかだけど幸せな焼き菓子を味わってみませんか?
「Lucca」は“光り続ける”という意味
- キュイソン ルカ
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4.5
2件の口コミ -
- 東京都品川区小山5-25-10 平岡マンション1C
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