
千葉県・館山の静かな港町。町の空気に溶け込むように佇む真っ白の建物は、なんと国の有形文化財。窓の向こうの海を眺めながら、香り豊かなコーヒーとふわふわマフィンを頬張る穏やかなひととき。忙しない日常を抜け出して、昨日の自分より少しだけやさしくなれる場所「TRAYCLE Market&Coffee」をご紹介します。
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時をかさねる港町のカフェ
千葉県南部、房総半島の館山市に建つ「TRAYCLE Market & Coffee」は、フェアトレードコーヒーが楽しめるカフェと、セレクトショップが一体となったお店。白壁が美しい木造2階建ての洋館は、大正初期の建築でこう見えてなんと築100年!
白壁に赤い屋根が目印。
ドアを開けるとすぐに笑顔で迎えてくれるのが、オーナーの知識 淳悟さんと絵理子さん。初めて訪れるのに馴染みのお店に来たようなほっとする感覚は、お二人が丁寧かつ自然体で接してくれるから。
ナチュラルな笑顔が素敵な知識淳悟さん、絵理子さんご夫妻。
階段を上がった先は、ゆったりしたカフェスペース。元々は和室だったそうで、欄間や床の間などの意匠がそのままに残されています。かつて小学校で使われていた机や、ご夫妻が好きなアンティークの家具が置かれ、昔懐かしい心地よさ。
裸電球の灯りがやさしく灯る店内
聞けば、もともとは銀行として使われていたという建物。1階には当時を物語るように重厚な金庫が残されています。その後、絵理子さんのおじいさまが資料館として運営したのち、建物の価値が国に認められ有形文化財に指定されることに。「もっとたくさんの人にこの建物を見てほしい」とご夫妻の手で建物を引継ぎ、修繕や改装を施したのち、2016年冬に「TRAYCLE Market & Coffee」としてリニューアルオープンしました。
カフェスペースの片隅に残る資料館の面影。
窓の奥に小さな港を臨むことができるのが、このロケーションならでは。時計の針をゆるめたようなのんびりとした時が流れ、ソファに身体を埋めてまどろんでしまいそう。
「たまに寝入ってしまう方もいるんですよ(笑)。」と絵里子さん。この不思議な心地よさは、町の色と建物に刻まれた歴史が混ざりあうことで生まれる特別なものかもしれません。大きな倉庫も味わい深い風景に溶け込みます。
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02
コーヒー&マフィンの魅惑のマリアージュ
コロンビア、エクアドル、フィリピン、東ティモール・・・提供するこだわりのコーヒーは全てフェアトレードの豆を使ったもの。豆は注文が入るごとに焙煎され、一杯ずつ丁寧にハンドドリップしてもらえます。
深煎りや酸味があるものなど好みに合わせて豆の個性が楽しめます。
コーヒーのお供にうれしい、手作りの「おからマフィン」は日替わりで6種類。フェアトレードチョコレートやオーガニックのフルーツを使ったものから、南房総産のきのこや野菜を使ったお食事系まで。生地のほのかな甘みが食材そのものの味を引き立て、とってもやさしい味わい。前日までの連絡でリクエストや取り置きもOKだそうです。
ほわっほわの生地にたっぷり食材。おからなので食べ応えもしっかり!
イートインでは、日替わりのスープにマフィンが2つ選べるランチセットも人気。この日は南房総産の野菜たっぷりの豆乳と生姜のスープ。ごろごろ感があるお野菜と、しっかり旨味が溶け出したスープはほっこりするおいしさでした♪
マフィン&スープランチはコーヒーor紅茶付で900円(税込)。
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03
そもそもフェアトレードって?
最近店頭でもよく見かけるフェアトレード商品。フェアトレードとは、開発途上国で生産される原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、社会的・経済的に弱い立場の生産者や労働者、その家族たちを支援する「貿易のしくみ」のこと。
学生時代、留学先であらゆる国の人と出会い、彼らが置かれた環境や世界の現状を目の当たりにした絵理子さんは、「世界はもっとフェアであるべき」と強く感じたそう。この想いがフェアトレード商品を選ぶ理由につながっているといいます。以前は都内でIT関連の会社で働いていたという知識ご夫妻。スマホひとつでモノが簡単に消費できる時代、それが本当に豊かで幸せなことなのか疑問を抱くようになった淳悟さんは、もっと直接的に広い視点で世界に貢献できることがしたいと考えるように。フェアトレードについて、「強制ではなく、お客さんが好きなものを消費して、心地よく過ごしてもらう中で自然と知ってもらえたら。」と話してくださいました。
ロゴの三つの葉っぱは「豊かさ」、「伝統」、「資源」を意味しているそう。
店内には、フェアトレードの食品や生活雑貨もたくさん!おしゃれなデザインはさることながら、おいしさや品質、使い心地にもこだわったアイテムばかり。暮らしの中にフェアトレードを取り入れてみる、気軽なきっかけにもなりそうですね。
クラフト感たっぷりのアクセサリー。
肌にも環境にもやさしいオーガニックコットンのファッショアイテムも。
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04
町で唯一の映画館に変身!
実は毎土曜日、店内は10席ほどのちいさなミニシアターに姿を変えるのです。上映するのはフェアトレード、難民、環境破壊などエシカルなテーマの映画作品たち。実際に知識ご夫妻が鑑賞して心動かされたものだそう。
鑑賞はフェアトレードコーヒーとクッキー付で一人 1500 円。
館山には映画館がないそうで、ここが町で唯一の映画館。コーヒーを片手に、少しだけ遠い国に住む人をまず「知る」ことから始めてみる。一人の力でもこんなにも世界は変えられるというポジティブなメッセージがこの「TRAYCLE Cinema」から発信されています。
グッと雰囲気が増す夜の外観。
※「TRAYCLE Cinema」はイベント時にはお休みとなります。開催日はお店のホームページでご確認ください。
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“TRAYCLE“を始めよう
「TRAYCLE」は、フェアトレード、トラディション(伝統)、サイクル(循環)という言葉を組み合わせてつくった造語だそう。好きなときに、好きなものでいい。小さな気づきが、世界の誰かを幸せにする。そんな素敵なサイクルの中に自分がいることを気づかせてくれる「TRAYCLE Market & Coffee」。
南房総の花々が見頃を迎える季節、おでかけやドライブの途中に心地よいひとときを味わってみてはいかがでしょうか。