2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公であり、さらに2024年上期にも流通開始の新一万円札の顔となることが決定しているなど、「渋沢栄一(しぶさわえいいち)」は今まさに時の人であると言えます。
その渋沢の息吹を現代に伝える建造物のいくつかが、生誕地の埼玉県深谷市や後年居を構えた東京都北区に残っています。
これらの建造物は現在、渋沢の生涯に触れられる施設として公開されており、中には重要文化財や地域の指定遺跡に指定されているスポットも。さらに深谷周辺には渋沢が実業家として関わった秩父鉄道熊谷駅~寄居駅、JR深谷駅など、渋沢ゆかりの現役公共施設も点在しています。
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【東京都北区・埼玉県深谷市】大河ドラマ館|『青天を衝け』の舞台裏を見学しよう
大河ドラマ『青天を衝け』の衣装展示や撮影秘話などを見ることができる「大河ドラマ館」。
東京と埼玉の2箇所で開催されていますが、こちらは「資本主義の父」の地位を確立した渋沢が住居を構えた東京都北区飛鳥山の飛鳥山公園博物館内に開設された施設です。
北区「大河ドラマ館」では、8mの大型スクリーンや迫力の4Kドラマシアターによるダイナミックな映像でドラマの世界を体感できます。
主演俳優の吉沢亮さんをはじめとするドラマ出演者のインタビューや、パリ万博シーンCG撮影の様子を見られます。そのほか、「なりきり1万円札」というコーナーでは、ブースで撮影した自分の顔をお札の肖像画と差し替えられるユニークなコンテンツも。大河ドラマ館 イメージ
一方、埼玉県深谷市の「大河ドラマ館」では、渋沢ゆかりの家「中の家」などを忠実に再現したセットを見て歩けます。
館内は一部を除き、記念撮影もOK。ドラマで実際に使用された小道具や衣装の展示などもされており、ドラマの世界観を存分に楽しめるに違いありません。
北区「大河ドラマ館」の開設期間は令和3年12月26日(日)まで(深谷は令和4年1月10日まで)。現地での当日券購入も可能ですが、原則事前予約制です。【アクセス】
JR京浜東北線「王子駅」南口から徒歩約5分
東京メトロ南北線「西ケ原駅」2番出口から徒歩約7分
東京さくらトラム(都電荒川線)「飛鳥山停留場駅」から徒歩約4分周辺の予約制駐車場
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【埼玉県深谷市】渋沢栄一記念館|渋沢栄一のアンドロイドによる講義を受けよう
埼玉県深谷市にある「渋沢栄一デジタルミュージアム」の一角にある「渋沢栄一記念館」。正面入口には、赤城山の方向を眺める渋沢像があり、威風堂々たる風格が滲み出ています。
今や記念館の名物となった渋沢栄一アンドロイドの講義は、渋沢が唱えた「道徳経済合一説」を現代風にアレンジした内容で、利潤追求と道徳心の追求を両立すべしという教えについて学べます。
資料室には富岡製糸場設立など実業に関する資料や、実業同様に力を注いだ多くの学校設立にまつわる資料、さらに昭和38年(1963年)に千円札肖像画の最終候補となった際の新聞記事などを展示しています。なお、資料室および講義室の見学は事前予約制となっています。渋沢栄一記念館
【アクセス】
JR深谷駅北口から深谷市コミュニティバス「くるリン」北部シャトル便で約25分、「渋沢栄一記念館駅」下車
JR深谷駅北口から徒歩約5分の仲町バス発着所より「渋沢栄一 論語の里 循環バス」で約22分、「渋沢栄一記念館駅」下車 -
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【埼玉県深谷市】JR深谷駅|赤煉瓦が結んだ東京駅との縁
「JR深谷駅」に降り立つと、東京駅にそっくりのレンガ造りのデザインが特徴的な駅舎に出会えます。実は、この深谷駅も渋沢栄一にゆかりのある施設。
東京駅に使用されている赤煉瓦の約9割(833万個)は、渋沢が設立・運営に携わった深谷市の日本煉瓦製造株式会社で製造されたものが使用されています。
そのご縁から、平成8年(1996年)に東京駅丸の内口のデザインを模して現在の「JR深谷駅」へと改築されました。
深谷駅に到着したら、この渋沢とのつながりのある駅舎と北口にある「渋沢栄一からくり時計」をじっくり眺めてみてはいかがでしょうか。JR深谷駅
【アクセス】
上野東京ラインで「東京駅」から約100分
湘南新宿ラインで「新宿駅」から約90分 -
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【埼玉県深谷市】旧渋沢邸「中の家(なかんち)」|今に残る、渋沢帰郷の場
旧渋沢邸「中の家(なかんち)」は、渋沢栄一の妹夫妻が明治28年 (1895年)に上棟した建物で、多忙な渋沢が深谷の血洗島(ちあらいじま)に帰郷した際に滞在した場所です。
こちらは当時の姿のまま現存しており、埼玉県指定旧跡「渋沢栄一生地」に指定されています。
渋沢が滞在するために設けられた十畳の部屋の見学はできないものの、立派な門構えや当時の北武蔵における養蚕農家屋敷の形をとどめる主屋、藍玉の製造・貯蔵場や米蔵などとして使用された4つの土蔵などは、中庭から見学できます。明治期の豪農の家屋や暮らしぶりを知る上でも一見の価値があるでしょう。
「渋沢栄一記念館」から徒歩約10分と、渋沢ゆかりの地めぐりとしてのアクセスも良好です。旧渋沢邸「中の家(なかんち)」
【アクセス】
JR深谷駅北口から徒歩約5分の仲町バス発着所より「渋沢栄一 論語の里 循環バス」で約28分、「中の家駅」下車 -
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【埼玉県深谷市】諏訪神社|幼い日、獅子を舞った場所
「諏訪神社(すわじんじゃ)」は、旧血洗島村(ちあらいじま)の鎮守であり、耕作の神、五穀豊穣の神としてだけでなく、狩猟の神、また武神として知られる〈建御名方命(たけみなかたのみこと)〉を祀る神社です。
秋の例大祭では、室町時代から伝えられている「血洗島獅子舞」(深谷市無形民俗文化財)が奉納され、渋沢自身も幼い日に踊ったこの獅子舞を楽しみに帰郷していたとされています。
拝殿は大正5年9月(1916年)に渋沢が寄進造営したもので、翌月には「諏訪神社」の氏子らが境内にある「渋沢青淵翁喜寿碑」が建立され、現在の姿になりました。諏訪神社
【アクセス】
JR深谷駅北口から徒歩約5分の仲町バス発着所より「渋沢栄一 論語の里 循環バス」で約28分、「中の家」下車後徒歩約6分諏訪神社
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【埼玉県深谷市】誠之堂(せいしどう)|後進達から渋沢への贈り物
「誠之堂」は、渋沢の喜寿を祝い、渋沢が頭取を務めた第一銀行の行員らの出資により大正5年(1916年)に銀行の敷地内である東京都世田谷区に建てられた煉瓦建築です。
平成11年に深谷市にて移築復元・一般公開に至り、現在は国重要文化財に指定されています。建物名の「誠之堂」は渋沢が自ら命名したもので、日本近代建築史上で大正期を代表する建物として建築関係者の間では高い評価を受けています。
外観はイギリス農家風としながらも、内外の装飾には日本や朝鮮、中国の意匠を取り入れるなど、様々な要素がバランスよくまとめられています。特に室内の天井装飾や中国風の珍しい題材によるステンドグラスは必見です。誠之堂
【アクセス】
JR深谷駅北口から深谷市コミュニティバス「くるリン」北部シャトル便で約20分
「大寄公民館」下車誠之堂
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【埼玉県深谷市など】秩父鉄道|鉄道への強い思いが結実した路線
「秩父鉄道」は、埼玉県の羽生駅から秩父市の三峰口までの71.7kmをつなぐ鉄道路線です。
埼玉北部地域の交通が不便だった明治期、秩父と熊谷の有力者たちが上武鉄道株式会社を設立。熊谷~寄居間で営業を開始したものの、経営難に陥り、渋沢に相談したことが始まりと言われています。
そこで鉄道の重要性をかねてより感じていた渋沢が、資金援助や沿線の観光開発に注力して経営を手助けしたという歴史があります。
沿線にある人気観光地の長瀞(ながとろ)の基礎も、渋沢が築いたと言われています。深谷駅から市内の沿線駅であるふかや花園駅へは熊谷駅での乗り換えが必要ですが、旧血洗島地区の渋沢ゆかりの地をめぐるついでに足を延ばすのもいいでしょう。秩父鉄道
【アクセス】
東武伊勢崎線「羽生駅」から乗り換え
JR高崎線、上越・北陸新幹線「熊谷駅」から乗り換え
JR八高線、東武東上線「寄居駅」から乗り換え
西武秩父線・池袋線「御花畑駅」から乗り換え秩父鉄道
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【東京都北区】渋沢史料館|渋沢の旧邸 「曖依村荘」跡に建つ博物館
渋沢史料館は、「渋沢×北区 青天を衝け 大河ドラマ館」のお隣に位置する博物館です。1982年11月に開館し、2020年11月にリニューアルオープンしました。
「ふれる」「たどる」「知る」という3つのテーマを軸に、年齢や言葉といった様々な視点から渋沢の人となりや活動を理解できる展示を、常設展示及び年2回の企画展示で実施しています。青淵文庫
また、旧渋沢庭園に残る、大正期の2棟の建築「青淵文庫(せいえんぶんこ)」「晩香廬(ばんこうろ)」の内部公開も行っています。
さらに、デジタル画像で渋沢の旧邸を体験する「渋沢栄一さんぽ」や、渋沢に関する図書を自由に読むことのできる「青淵書屋(せいえんしょおく)」、資料館発行の展示図録やオリジナルグッズを購入できる「青淵商店」など、資料展示以外の施設も充実しています。
なお、2021年1月15日時点では新型コロナウイルス感染予防・拡散防止のため、オンライン申込による完全予約制となっています。先着順で、開館時間の30分前までの予約が可能です。晩香廬
【アクセス】
JR京浜東北線「王子駅」南口から徒歩約5分
東京メトロ南北線「西ケ原駅」2番出口から徒歩約7分
東京さくらトラム(都電荒川線)「飛鳥山停留場駅」から徒歩約4分周辺の予約制駐車場