【能登】心満たされる 能登人の強さと優しさに触れるスロートリップ


2020.10.15

NAVITIME TRAVEL EDITOR

【能登】心満たされる 能登人の強さと優しさに触れるスロートリップ

旅行に求めるものは何ですか。美味しい料理、素敵な温泉、さらにそこに追加するのであれば、人との出会い。
「能登はやさしや土までも」という能登の風土を表した表現があります。これは、能登の厳しい自然環境で生きていく為、支えあい心豊に暮らしてきた能登人(のとびと)の強さと優しさを表した言葉です。能登を旅して驚くのは「日本の原風景」と言われる緑の山と青い海、世界農業遺産にも選ばれている「里山里海」の美しい風景、そして能登で活躍する人々の飾らず優しい人間性です。この記事ではそんな能登人を通じて、旅がより一層魅力的になる訪問先を紹介します。

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    【珠洲市】吉祥寺:伝統の珠洲焼に新しい風を吹き込む女性作家

    能登半島の北端珠洲(すず)市、内陸の少し高いところにある臨済宗の「吉祥寺」。鎌倉時代に創建されたという歴史あるお寺です。緑に包まれ、鳥のさえずりや木が風に揺れる音まで聞こえてくる静けさと落ち着いた雰囲気が魅力。
    そこで伝統の珠洲焼を現代風に復活させているのが、吉祥寺が実家という珠洲焼作家の山田睦美さんです。

    吉祥寺の片隅には山田さんが焼いた珠洲焼が並びます。モダンなデザインは、器を実際に使う女性に向け、料理が映えるように考えてとのこと。
    鉄分が多い珠洲の土は、還元といぶしをかけて焼き締めることで独特の黒灰色になります。この黒灰色と質感は、珠洲焼の力強く素朴な美の特徴と言われています。

    珠洲焼は平安時代末から室町時代後期にかけ、珠洲から日本各地に流通しましたが、理由がはっきりしないまま15世紀後半に忽然と姿を消しました。
    一度途絶えてしまった伝統の珠洲焼は、おそらくその時代に沿っていなかったのではないか、1976年に復興したが時代にあったものを作らなければまた途絶えてしまう。途絶えさせないためには何をするべきかを珠洲焼全体で考えなければならない、とふんわりと柔らかく真のある口調で語ってくれました。

    山田さんの作品は、珠洲焼館で手にとることができます。
    「珠洲焼を始めて気がついたことがあります。つくっている時に、既に行き先は決まっているのではないか、と。そういうご縁を感じることがよくあります」
    お寺の神聖な空気と、そこで育った山田さんの雰囲気がぴったりと一致する瞬間でした。

    吉祥寺
    place
    石川県珠洲市
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    珠洲焼館
    rating

    4.0

    5件の口コミ
    place
    石川県珠洲市蛸島町1-2-480
    phone
    0768825073
    opening-hour
    9:00-17:00
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  • 02

    【輪島市】能登日和:農家のおかあさん達が切り盛りする人気ランチのレストラン

    能登の人気観光地「白米千枚田」から車で25分程のところに元酒蔵の座敷の一角を改装したレストラン「能登日和」があります。元酒蔵ということもあり、メニューには甘酒や、塩麹で漬けたお肉、お魚、デザートに梅酒のゼリーなどこだわりの品々が並びます。

    実はこのレストランを営むのは地元のおかあさん達。地域のひとり暮らしのお年寄りもここへ集まって元気になってもらいたい、と優しい気持ちで集まったおかあさん達がつくったお店です。お料理に使われる野菜のほとんどはおかあさん達の家で採れたもの。

    お年寄りにも使いやすいようにと低い椅子とテーブルに付けられた御膳には、華やかな朱色の輪島塗。健康的なお料理は5品の「日替わり定食」1,000円から、日替わりの「お肉付き」は1,400円、二の膳付き9品の「能登日和御膳」2,200円、予約が必要な12品の「酒蔵御膳」2,800円と4つから選べます。

    今では珍しいこのようなお膳スタイルのお料理は都会に人にも珍しがられ、喜ばれます。と可愛らしいそろいのユニフォームで対応してくれるおかあさん達に癒されます。
    HP:http://55wajima.com/notobiyori/

    酒蔵座敷 能登日和
    place
    石川県輪島市町野町3-42
    phone
    05020207409
    opening-hour
    11:00-14:00
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  • 03

    【能登町】ふくべ鍛冶:東京の有名セレクトショップも扱う能登の野鍛冶の道具たち

    「能登マキリ」をご存じですか。古くは北海道のアイヌ地方から北前船で伝わった漁師がロープを切ったり、船の上で魚を捌いたりするときに使っていた道具です。ふくべ鍛冶のマキリ(孫光別作)は日本刀にも使われる現代では最上級の鋼である玉鋼(たまはがね)を使った日本で唯一の逸品。最近のアウトドアブームで、マキリが山でも使える万能ナイフとして注目され、本物志向の男性から熱い支持を得ています。
    東京のセレクトショップでも扱われ、ピーク時はなんと2年待ちになったこともありました。

    そんな一大マキリブームを起こした4代目の干場健太朗(ほしばけんたろう)さんは、町で唯一の鍛冶屋を存続させたい、と伝統的な鍛冶打ちの実家を継ぎ、先代と一緒に店を切り盛りします。
    ふくべ鍛冶は、能登の野鍛冶として包丁だけではなく農家で使う鎌や鍬などの農工具から漁師が使う海の道具までおおよそ150種類以上という様々な道具を作るといいます。
    使う人のリクエストに合わせ、ほぼオーダーメイドとなってしまうと干場さんは苦笑します。

    健太朗さんが町役場を後にして実家を継いだ時に実行したのが移動鍛冶屋でした。
    機械化の波で使い捨ての道具が主流の中、明治41年の創業初代が行ったのと同じように移動鍛冶屋として能登半島を周り、農家や漁師から道具を預かり工場で修理したものを届ける地域に密着した仕事を始めました。そこで出会う道具は先代、先々代が作ったものもあったそう。長く使ってもらえる鍛冶道具に自信をもった健太朗さんは次々にアイディアを出していきます。

    時代に合うように、とネットを活用し近くで包丁メンテナンスが出来ない人のためにポストに入れるだけの「包丁研ぎ宅配サービス」も開始しました。
    里山里海を生きる人のための道具を作り、生活を支え続ける「ふくべ鍛冶」。いつの時代も使う人のことを一番に考えているからこそ、次々に新しいサービスを生み出すのでしょう。
    HP:https://fukubekaji.jp/

    ふくべ鍛冶
    place
    石川県鳳珠郡能登町字宇出津新23
    phone
    0768620785
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  • 04

    【能登町】鶴野酒造店:若き兄妹が奮闘する創業230年の小さな酒蔵

    伝統的な酒造りを継承してきた230年の歴史ある酒蔵「鶴野酒蔵店」。大黒柱であったお父さんが不在であるにもかかわらず、酒造りを力強く続けています。お父さんの他界を機にお母さんである鶴野みどりさんは13代目の女将となり、若い次女(薫子さん)も杜氏になりました。お父さんから守って欲しいと言われた歴史ある酒蔵を存続させるため、長男(晋太郎さん)も勤務していたIT企業を辞め能登に帰り、酒造りの勉強を始めます。家族総出の酒造りが始まりました。
    晋太郎さんは、能登の酒蔵にはIT企業に引けをとらない位の魅力がある、と酒を通じて能登自体の魅力も発信していきたいといいます。

    お店の看板のお酒は米の旨味を感じられる後味のスッキリとした味わいの「谷泉」。木製の道具を使い全て手作業、無濾過で瓶に詰め、冷蔵庫で熟成させます。

    女性杜氏ならではの感性を生かした酒を造りたい、と次々に新しい酒造りに挑む母と娘は、「登雷(とらい)」という2つ目の看板商品、超辛口純米吟醸をつくりました。能登の冬の海で起こる海から天空に上っていく雷の気象現象のように突き抜ける辛さと、初めて酒造りに「トライ」したことを掛け合わせたネーミングです。驚くほどに辛いお酒ですが、旨味がしっかりしていると辛口好きに大人気となっています。

    他にも「谷泉」のラベルを女性の手にとってもらいやすくとカラーリングを変えてみたり、フルーティーな香りの季節限定の商品を作ってみたりと、女杜氏のチャレンジは続きます。鶴野酒造店を訪れれば、快くお酒の話を聞け、気になったお酒を試飲させて頂けます。

    どの銘柄も北陸の日本海に近い酒蔵の味わいと思うと妙に納得感があり、厳しい環境でも強く生きる酒蔵の人々を思い出すような味のお酒です。生産数が少なくあまり流通していないので、能登の土産に持ち帰ったら喜ばれるはず。
    HP:https://www.taniizumi.com/

    株式会社鶴野酒造
    place
    石川県鳳珠郡能登町字鵜川19-64
    phone
    0768672311
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  • 05

    【輪島市】HEIDEE WINERY(ハイディワイナリー):能登の国産ワインを盛り上げる新しいワイナリー

    オーナーの高作正樹さんがお父さんの故郷の輪島市でハイディワイナリーを設立したのは2011年。ぶどうを育成する丘陵地帯の目の前には海が広がる絶景のこの土地が気に入ったといいます。ぶどうは環境に影響を受けやすい果物で、気候や土壌の個性、地形などが味に大きく反映されます。決して簡単では無いはずの能登半島の環境を信じ、土地を開墾するところから妹さんと始めました。

    ワイン造りの考え方はナチュラルで、「海のそばで生まれたぶどう」の個性を引き出すため、除草剤や化学肥料を一切使わず、果物にストレスを与えないために手摘みで収穫するというもの。言葉で言うのは簡単ですが、自然に寄り添いながらぶどうを育成していくのは簡単なことではありません。高作さんは柔らかい口調で、ワイナリー設立の経緯や、ワイン造りの過程を醸造所見学時に教えてくれます。

    ワイナリーに併設する絶景のカフェ・レストランでは、ワインの試飲やワインに合うお料理を頂くことができます。広々とした店内は、全面ガラス張りで見渡す限り棚田の緑と日本海のコバルトブルーの海が広がります。まるでヨーロッパにいるかのような雰囲気のレストランで過ごすひとときはとても贅沢。

    ワイナリー見学はホームページから予約を受け付けており個人で500円、見学および試飲は1,000円です。テイスティングのみも1杯250円でできますよ。国産ワインに注目が集まる中、またひとつ新しい素敵なワイナリーが能登に誕生しました。
    HP: https://heidee-winery.jp/

    株式会社ハイディワイナリー
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    5.0

    3件の口コミ
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    石川県輪島市門前町千代31-21
    phone
    0768422622
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  • 06

    【七尾市】本行寺:隠れキリシタンを熱く伝える住職に会えるお寺

    七尾市には「山の寺瞑想の道」という小高い山の中に16ヶ寺を結ぶ小道が整備された一帯があります。かつて前田利家公が奥能登方面からの防御陣地として転用する目的で寺院を集めてできた場所です。何れも歴史ある立派なお寺ばかりなのですが、その中でも昨今ダークツーリズムの場所として注目を集めるお寺が「本行寺」です。

    2018年に長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産が世界遺産に登録されましたが、実はここ能登の本行寺もキリシタン大名として知られる高山右近ゆかりの寺なのです。本行寺の小崎住職は隠れキリシタンの歴史を詳しく説明してくださいます。身振り手振りを交え、時には声を大きく、また本来博物館に収蔵されてもおかしくないような貴重な秘宝や書状なども惜しげもなく見せてくれるのです。

    コロナ前は海外からも隠れキリシタンの秘宝に掌を合わせようと、熱心なカトリック教徒の方が沢山訪れたといいます。日本人で歴史に詳しくない方でも、片言の言葉しか通じない外国人でもお構いなく高い熱量で説明してくれる住職の話にどんどん引き込まれていきます。

    高山右近は2016年にカトリック教会で最高位の「聖人」に次ぐ「福者(ふくしゃ)」に認定されました。能登の山奥のお寺で隠れキリシタンの歴史に触れることができるとは驚きのお寺です。

    ご住職に連絡を入れることで予定が合えばご案内いただけることもあります。また毎年5月おこなわれる「アマニー祭」では秘宝の公開や、「隠れキリシタン料理」をいただくことができますよ。
    HP:http://web3.incl.ne.jp/gakuen/

    本行寺
    place
    石川県七尾市小島町リ134
    phone
    0767530799
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  • 07

    【アクセス】能登空港(のと里山空港):羽田からわずか60分で半島の中心へ直行

    能登半島は案外近い、というととはご存じですか。飛行機を使えば羽田から60分で能登半島へひとっ飛び。ANAが1日2便運行しています。
    また、のと里山空港は能登半島の中心に位置しているので、今回紹介した全ての場所は車で1時間もあれば到着することができますよ。

    のと里山空港

    のと里山空港

    豊かな自然・美しい景観、心の安らぎが得られる癒しの能登、ぜひ旅してみてはいかがでしょうか。

    能登空港
    place
    石川県輪島市三井町洲衛
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    <今回紹介したスポットは『のとねっと』でも紹介されています>
    https://www.notohantou.net/travelnoto/

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