日本一破天荒な公園があると聞いてやってきたのは岐阜県養老町にある「養老天命反転地」。起伏が激しく傾斜だらけの地面、へんてこな形のパビリオン、真っ暗闇の迷路。染み付いてしまった常識や概念は捨てるべし!不安と好奇心の狭間に立ったときそこに見えた世界とは?!
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リバーシブルデスティニー=宿命は反転できる!!
「養老天命反転地は」、1995年に岐阜県・養老の山合いに開園したテーマパーク。現代美術家の荒川修作、その妻である詩人マドリン・ギンズによる長年の構想を実現した実験的なアートプロジェクトです。
約18,000平方メートルの園内は緑豊か!
2人には、世界の絶望的な状況を希望ある未来へ転換させようという共通の想いがありました。
「天命反転」とは、「REVERSIBLE DESTINY(リバーシブルデスティニー)」。日本語で「反転できる宿命(天命)」と訳されるそう。これには「人間は生まれたら死ななければならない、という宿命を覆したい」という強い想いが込められているのだとか!
つまり養老天命反転地は、「死」を前提とした消極的な生き方をやめて、古い常識を覆そうと私たちに提案してくれている場所なのです。ふ、深い・・・!2人が長年の研究で大切にすべきと考えたのは、人間の「身体」がもつ可能性。園内からは水平垂直のものを極力排除。私たちのバランス感覚を揺さぶり、よちよち歩きの子どもに戻してしまう仕掛けが至るところに施されています。
公園ならぬ深すぎるテーマを知ったところで、まずは体感してみないことには始まりません!
さっそく園内へGO~~
無料でスニーカーの貸し出しもあるので、パンプスの方は利用をおすすめします。 -
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全く落ち着かない。「養老天命反転地オフィス」
外の世界から私たちを切り離すように、すり鉢状になった広大な敷地の中には、9つのパビリオンと148の道、5つ日本列島が造られています。ここではいくつかのパビリオンをご紹介!
まずはドミノを彷彿とさせるような外観の「養老天命反転地オフィス」から。建物の中にはテーマパークのようなカラフルな迷路空間が。天井を見上げると全く同じつくりになっています。反転・・・てことか!
絶対仕事なんてできないぶっ飛びオフィス。
迷路を奥に進むとこれまた不思議。足元が坂になっているので壁が高くなり、自分が小人になっていくような感覚に襲われるんです。
立ち位置によって変わる景色。なんか深い。
こんなふうに写真の上下を反転すると、あら不思議。
無重力!!
荒川氏とギンズ2人で設計した時のデッサンなども展示。
う~ん解読不能。
男子トイレの天井にはなぜか卓球台。
女子トイレは目隠しがなければ窓から見え放題。芸術家の頭は理解しようとするもんじゃないですね(笑)
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全くくつろげない。「極限で似るものの家」
岐阜県の形をした屋根、それを反転させた地面からなるメインパビリオンがこちら。「極限で似るものの家」という摩訶不思議なタイトルがつけられていますが、この中に入ってみるとその理由がわかるんです。
岐阜県の昔の地名が書かれています。
一人通るのにやっとの狭い通路をおそるおそる進むと、ソファやテーブルなどの家具、冷蔵庫やシンクなどの日用品が次から次へと出現!でも全て壁が突き刺さっていてとても使える状態ではありません。
すわれない・・・
寝れない・・・
天井をふと見上げると、家具や家電など同じものが天井にも設置されてるっ!まるで、知らないもうひとつの世界が存在している感覚。
書斎の上に書斎!
養老天命反転地のパンフレットを開くと、荒川氏&ギンズからの提案と書かれた「養老天命反転地:使用法」が書かれています。
「極限で似るものの家」では、
・中に入ってバランスを失うような気がしたら、自分の名前を叫んでみること。他人の名前でもよい。
・今この家に住んでいるつもりで、また隣に住んでいるようなつもりで動き回ること。
・思わぬことが起こったら、そこで立ち止まり、20秒ほどかけて(もっと考え尽くすために)よりよい姿勢をとること。
使用法通りに行動してしまうとヘンな人に見えそうな気がします(笑)。でも回りからどう見られるかなんてことは、ここでは邪魔な雑念なのかも。住み慣れた家とは全く違う不自由な場所に身をおくことで、慎重に歩いてみたり、色んなことを考えながら進んでいることに気づいた筆者。身体が慣れてしまうと、無意識になってしまうのかも。。。。人間って怖い!
突然のガスコンロ
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「全身」と「五感」をフル稼働!
その後も、起伏の激しい道に何度も足をとられそうになりながら、独特なネーミングのパビリオンを行脚。
急斜面にソファーやシンクが散らばる「運動路」。ハナからくつろがせてくれる気配がしません。中は真っ暗な迷路になっている「切り閉じの間」。手を突き出しながらたどり着いた先の天井には、輝く日本列島が!
中で外国人のこどもがギャン泣きしてました。。。
人が通れるほどの深い溝。枝分かれしている先は行き止まりに。うーん、一筋縄ではいかないなぁ。
「死」への抵抗を至るところに感じます。
歩いていると突然現れる大きな穴・・・結構深くて怖すぎ。
急斜面からさらなる斜面が突き出す「精緻の棟」。ここでは、世界を驚かせたマイケル・ジャクソンの「体を斜めに傾ける」ワザをあなたのものに。SNSウケ間違いなし。
斜面に対して水平にカメラを向けるのがコツ♪
「もののあわれ変容器」
使用法:何かを決めるために、あるいは以前決めたよりもより繊細に、またはより大胆(あるいはその両方)になるために「もののあわれ変容器」を使うこと。人生の一大事にはここに来るべき?
人間を岩を登る昆虫にみたてた「昆虫山脈」。昆虫になった気分で登ることが大事だそう。見た目より意外に簡単に登れます。
よじよじ。
低い壁が迷路のようにめぐらされている「宿命の家」。足元を見ると窓越しに「キッチン」などの生活の場が閉じ込められていて、どこまでも不思議すぎる世界観。
文字なのか、絵なのか。謎の黒光りする立体アート。この隙間はフォトスポットにもなっています。
パーフェクトフィット!
園内をまわってみて感じたのは情報量が多いこと!終始、荒川氏とギンズの脳みその中でころころと翻弄されているような感覚になるんです。
キャパオーバーになりそうなのをこらえ、なんとか全パビリオンを制覇。。。最後のほうは若干足がもつれ気味の筆者でしたが、非日常の世界に没頭することで、一種の爽快感、達成感を感じ気持ちが軽くなったような気がするのでした。 -
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【ごはんタイム】頭と身体に養老グルメを補給!
養老天命反転地で遊んだ後は、すぐばにある白い大型テント張りのグルメスポット「楽市楽座・養老」でごはんタイムを♪施設内では、軽食から郷土料理、ご当地ビールなど、遊び疲れた身体にも大満足のメニューが楽しめちゃいます。
自家製どて丼 650円、養老産しいたけウインナー(3本入り)500円
柿ドリンク・柿サワー 各150円、養老山麓サイダー 200円、養老名水滝ビール 550円
高台にあるので眺望も抜群!!
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【アクセス】岐阜市内から電車で約1時間!
岐阜駅から、JR東海道本線快速で大垣駅へ。そこから養老鉄道養老線に乗り換えて約30分で「養老」駅に到着。
レトロな赤い列車がかわいい「養老鉄道」
養老駅ではたくさんのひょうたんがお出迎え!
「養老駅」からは徒歩約10分ほどで「養老天命反転地」に着きます。
駅からはほぼまっすぐの道が続きます。
また土・日・祝日限定でシャトルバスも運行中。養老鉄道「養老駅」から養老天命反転地を経由して、養老公園(松風橋)までを無料で結びます。
シャトルバス詳細はこちら -
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「養老」は2017年がアツイ!
「養老」といえば有名なのが「養老の滝」。1300年前に養老の滝の美しさに感動した当時の女帝・元正天皇が、元号を「霊亀(れいき)」から「養老」に改元したことは、今なお「滝の水がお酒になった」という孝行息子の昔話に語り継がれています。
2017年は、養老改元から1300年という記念すべき年。特に11月には、改元当時の行幸行列を再現したイベントや、養老の滝のライトアップ、養老のシンボルでもある“ひょうたん”を使った幻想的なイルミネーションなどが開催予定。美しい紅葉と清らかな水の流れに、養老町がの歴史を想うひとときを味わってみてはいかがでしょうか?養老の滝
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きっとあなたの明日が変わる!
「養老天命反転地」は、子どもも十分に遊べるスポット。でもここに隠された仕掛けや意図は、無意識に日々を過ごしてしまいがちな大人にこそじんわりと響くような気がします。
荒川氏とギンズはもうこの世にはいません。でも2人が残した養老天命反転地は、いつでも私たちに変われることを教えてくれています。どこからか「REVERSIBLE DESTINY=宿命は反転できる!」という声が響いた気がするのでした。