関東といえばあまり日本酒のイメージがないかもしれないが、栃木には、実に33の酒造メーカーが点在している。なんといっても名水の多い場所であることと、伝統と新しい技術を持った技術集団「下野杜氏」が活躍する土地でもあり、長く愛される銘柄はもとより、革新に満ちた注目の銘柄も生まれているのだから、日本酒好きならずとも、栃木を訪ねたら酒蔵に寄らないなんて、実にもったいないことなのである。
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創業から200年以上の歴史蔵がさくら市に
栃木県さくら市には、今全国の日本酒愛好家の間で最も注目を浴びる酒蔵がある。その名は「株式会社せんきん」。銘柄は「仙禽」と書く。仙人に仕えた鶴の意味を持つ名で、この蔵は、実に、江戸後期文化3年(1806年)創業という長い長い歴史を持っているのだ。
しかし他の日本酒蔵元と同様に、高度成長期の最大消費時代以降、年々売り上げが下がり、酒蔵としては瀕死の状況を迎えていた。それを打開したのが、現社長であり当蔵の長男である薄井一樹氏。ワインのソムリエ養成スクール卒業後、ワイン世界の知識を身に着け蔵に戻り、弟の現常務である薄井真人氏とともに、杜氏の力を借りることなく、自らの手で新たに酒造りを始めた。 -
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11代目の生み出す日本酒、「甘酸っぱくて、フルーティー?!」
初リリースは2007年。その味たるや、「え? なにこれ? 甘くて酸っぱい!」とちょっとした衝撃の味わいだった。なにせ当時は、辛口で濃厚でぐっと飲みごたえある日本酒が人気のころ。その中にあって、まるでワインみたいにフルーティーで超甘酸っぱい酒を造ったのだ。失敗? いえいえ、これは戦略。いわゆる「衝撃の味」をひっさげ市場に打って出て、仙禽ブラザーズの勝負をかけたのだ。
結果、その味は受けた。とくに日本酒をあまり飲んだことがない人や女性層、また、ワインファンに「これなら飲める」「日本酒を初めておいしいと思った」「フルーティーで美味しい!」など想定外の感想が“衝撃”商品の周りをグルグル回り始めた。
その後、ソムリエでもある薄井氏は、ワイン酵母で醸した日本酒「ドルチェ・シリーズ」や蔵内の自家製酵母や伝統手法の生酛造りなどを取り入れ、とにかくできるだけ自然な日本酒造りを目指した「ナチュール・シリーズ」などの作品を世に出し、日本酒とはこういう味でなければならないという業界の規制概念をみごと覆してきた。
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権威あるコンクールで金賞受賞
もちろん、ただ奇をてらった酒造りのみを行っていたわけではない。試行錯誤から約10年。仙禽は、日本で最大最強といわれるコンクルール「SAKE Competition2018」において、「クラシック仙禽 無垢」が純米酒部門で4位、Super Premium部門にて「仙禽 醸(かもす) 袋搾り斗瓶囲い無濾過原酒」が金賞第1位を獲得するまでになった。愛好家のみならずプロにも認められる酒質という評価を得たのだ。
今では、水も、米も、すべて蔵のある地元産のみを使用した酒造りに邁進中。それは、地元の風土が融合することによって、本当の地酒が生まれると確信しているからだ。彼らの想いやそれらを生み出す手法はフランス流に「ドメーヌ」と呼ばれている。
※「ドメーヌ」とはフランスのワイン用語で自社畑のブドウを使用し、自社内で製造・瓶詰まで一貫して行う製造者を指す言葉(せんきんHPより)。 -
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仙禽をお土産にしたいときには、栃木の酒を取り扱う「滝澤酒店」へ
仙禽の蔵があるのは、栃木県さくら市。栃木のほぼ中央に位置し、宇都宮からも足の便がいい。日光東照宮や大谷資料館、那須の温泉地に向かう際に、足を伸ばしてみてはいかがだろう。大谷石造りの見事な蔵が迎えてくれるはずだ。ただし、一般見学は受け付けていおらず、蔵でのお酒販売はも行っていないので、お酒購入は、お蔵の近くのお酒屋さん「滝澤酒店」http://takizawa-sake.com/
をおすすめする。 -
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こんな場所に、こんなモダンなイタリアンが! 仙禽とともに食事ができる店「NIWA」
また、蔵の近くにある、おすすめの「飲める店」も紹介しておこう。意外かもしれないがイタリアンだ。店名は「Cafe &Dining NIWA」。かのフランス、アルザスの三ツ星レストラン「オー・クロコディル」で修行したシェフが作るモダン・カジュアルな料理とともに、仙禽のお酒を楽しめるのだ。栃木の静かな田舎町で?と思うかもしれないが、ここは体験の価値あり。
周辺の予約制駐車場
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もちろん、宇都宮の餃子も楽しみたい!
蔵を訪ね、地元で仙禽を飲むならば、やはり、宇都宮の餃子も外せない。仙禽があるのは氏家駅。電車ならば宇都宮乗り換えで東北本線だ。乗り換え時に楽しめる宇都宮餃子なら構内の「元祖 宇味家 JR宇都宮駅構内店」だろう。混んでいても比較的すぐ空くので、急ぎの乗り換え時にもトライOK。
秘伝のタレ 地方発送あり
更新日:2024/03/19
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お泊りならば那須温泉、ゆったり「仙禽」を飲む贅沢を!
地酒を楽しむ旅ならば、日帰りはちょっと厳しい。そこは温泉にでも入って、ゆっくりのんびりと宿で地酒を楽しみたいもの。仙禽の蔵のあるさくら市から北上すると、歴史ある那須温泉が出迎えてくれる。おすすめの宿は「那須温泉 山楽」。なんといってもここはあの那須御用邸と同じ温泉だし、大正12年創業の老舗旅館として与謝野晶子らも宿泊する名旅館として知られているのだから見逃せない。
高原の雄大な景色と良質の温泉と四季折々の料理とともに「仙禽」を飲めば、都会で飲む「仙禽」とは一味違った魅力を発見できるにちがいない。ツイン JAPANESE ROOM
¥31,426
2024/04/02 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金 更新日:2024/03/19