車内にテーブル席があり、コース料理や沿線の地酒などを楽しむレストラン列車が各地でさかんに走っている。今回は、その中から4つの列車にスポットを当てて紹介してみたい。
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01
赤い観光列車、しなの鉄道「ろくもん」
しなの鉄道沿線にある上田市(長野県)ゆかりの真田一族の家紋「六文銭」にちなんで「ろくもん」と名付けられた観光列車。
JR九州の観光列車でお馴染の水戸岡鋭治氏がデザインした個性的な外観と、インテリアが特徴である。観光列車ろくもん
基本は、軽井沢発長野行き「ろくもん1号」が、軽井沢の名店、沢屋「こどう」と小諸近郊のアトリエ・ド・フロマージュ提供による洋食コース料理のランチ、長野発軽井沢行き「ろくもん2号」が長野県内にある小布施の名店「鈴花」提供の懐石料理でやや遅い昼食を味わう。
ろくもん1号の洋風コース料理
さらに、軽井沢17時14分発長野行き「ろくもん3号」では、沿線を中心とした信州プレミアムワインと軽めのコース料理を楽しめる。
1号、2号は週末を中心に運行、3号は月に1~3日の限定運行となる。
このほか、「ろくもん」は何種類もの特別運行が予定されている。
「姨捨ナイトクルーズ」は、篠ノ井駅からJR篠ノ井線に乗り入れ、日本三大車窓のひとつとして有名な姨捨駅の眺望、それも夜景を楽しむプランだ。食事付きプランでは、信州ワインと洋食を味わえる。2019年1月と2月には、ワインではなく地酒の利き酒プランが予定されている。食事は地元の名店が提供する和食だ。
さらに、2019年1月と2月には、「北信濃雪見酒プラン」が新設された。通常運行の軽井沢~長野間ではなく、北しなの線(長野~黒姫)を往復する。信越国境の豪雪地帯へ向かい、長野県が誇る女性杜氏3人が選んだおススメの日本酒3種が楽しめる。料理は「ろくもん2号」でお馴染の鈴花(小布施町)の和食料理が提供される。北信濃雪見酒プランの食事と地酒
3号車は障子とひのきを使った和風コンパートメントなので、動く料亭といった雰囲気となろう。「雪見酒プラン」では、帰路の車内でバイオリンとチェロによるミニコンサートも予定されている。至れり尽くせりの行程は、列車内とは思えない楽しみが一杯で、2時間半の旅はあっという間に終わってしまう。
障子で仕切られた和風コンパートメント
「ろくもん」の1号車は、乗車券+指定席プランとして、食事なしで列車旅を楽しみたい人向けの車両である。
ろくもん電車 公式サイト https://www.shinanorailway.co.jp/rokumon/周辺の予約制駐車場
周辺の予約制駐車場
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02
新潟の地酒を楽しむ「越乃Shu*Kura」
長野駅からは、JR飯山線経由で十日町へ向かう観光列車「おいこっと」が週末を中心に運転されている。その終点十日町駅で3時間ほど滞在すると、日本海に沿ってぐるりと大回りして上越妙高駅へ向かう観光列車「越乃Shu*Kura」に乗り継ぐ楽しい列車旅が可能だ。
越乃Shu*Kura
越乃Shu*Kuraは、全区間新潟県内を走り、新潟の地酒と音楽を楽しむユニークな観光列車である。3両編成の内訳は、日本海がかぶりつきで見える展望ペアシートとらくらくボックスシートから成り立っている1号車、イベントスペースと「蔵守」というサービスカウンターで、地酒やおつまみ、お土産などを販売している2号車、特急列車並のリクライニングシートが並ぶ3号車だ。
面白いインテリアの2号車イベントスペース
1号車は特製のお弁当やドリンクが付く「びゅう」の旅行商品を購入しないと乗れない。3号車は、駅の窓口や券売機で指定券(520円)と乗車券を購入すれば誰でも乗れる。2号車のイベントスペースは3号車の乗客でも利用可能なので、特製弁当以外の地酒や食料は、売店で購入して楽しめる。常時5種類の新潟県内の地酒が味わえる有料の利き酒コーナーも注目の的だ。また、越乃Shu*Kuraオリジナルの大吟醸も販売していてお土産にもぴったりだと思う。
オリジナル大吟醸など車内限定の品々
イベントスペースでは、ジャズなどの生演奏や地酒の試飲会などの催しが何回となく行われる。ホームのすぐ下が日本海となる青海川駅では22分も停車するので、時期によっては日本海に沈む夕日が眺められるだろう。私が乗車した日は、同乗していた演奏者がホームに降りてジャズの生演奏を聴かせてくれた。
青海川駅ホームでの生演奏
この列車は、日によって越後湯沢発の「ゆざわShu*Kura」、新潟駅始発の「柳都Shu*Kura」と列車名を変えて運行している。いずれも、長岡~上越妙高間は共通の列車ダイヤで走る。
越乃Shu*Kura公式サイト http://www.jrniigata.co.jp/train/shukura/周辺の予約制駐車場
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03
きらびやかな車両「花嫁のれん」
「越乃Shu*Kura」の終点上越妙高駅から北陸新幹線に乗ると、1時間少々で金沢駅に到着する。
金沢は人気の観光地であり、宿泊は市内でも充分だが、余裕があれば列車で1時間ほどのところに位置する和倉温泉でのんびり過ごすのもおススメである。金沢駅と和倉温泉駅の間は、特急「能登かがり火」が1日に何往復もしているけれど、時間が合えば観光列車「花嫁のれん」に乗ってみたい。
赤と黒を基調に輪島塗や加賀友禅をイメージした華やかな車体。車内も高級旅館を彷彿とさせる木の格子や金箔を張るなど絢爛たるインテリアなのだ。花嫁のれん号
1日2往復するうち、金沢発の1号と3号はスイーツセット、お昼に和倉温泉駅を発車する2号は、老舗旅館加賀屋監修の和軽食セット、夕方に和倉温泉駅を出る4号には、ほろよいセットが用意されている(いずれも事前予約が必要)。
2号で提供される和軽食
金箔を模した車内
列車には和装のアテンダントさんが乗務し、テーブル席まで食事を運ぶなどのおもてなしがある。乗車時間は1時間15分~30分ほどと長くないので食事をしているうちに終点についてしまいそうだ。
和装のアテンダントさんがお出迎え
意外に平坦な田園風景が続くだけなので、飲食に専念できるだろう。能登の車窓を楽しみたいなら、「花嫁のれん」から乗り継げる「のと鉄道」の観光列車「のと里山里海号」がおススメだ。
花嫁のれん公式サイト https://www.jr-odekake.net/navi/kankou/area_hokuriku/hanayomenoren/周辺の予約制駐車場
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04
都心発なので気楽に楽しめる西武の「52席の至福」
遠くまで観光列車に乗りに行く時間が取れない人におススメなのが、西武鉄道の「旅するレストラン 52席の至福」だ。
秩父の武甲山をバックに走る「52席の至福」
隈研吾氏がデザインした車内
池袋駅あるいは西武新宿駅から西武秩父駅まで、普段走っている特急「レッドアロー」が80分ほど着いてしまうところを倍近い2時間半から3時間かけてゆっくりと走る。池袋や西武新宿発の列車はブランチコース、西武秩父発はディナーコースとなっている。
さらに、池袋駅を夕方出発し、2時間20分程西武池袋線内を走行して池袋駅に戻ってくるIKEBUKUROディナーコースという列車もある。いずれも埼玉県産の食材をふんだんに使ったコース料理が提供される。メインディッシュ
往復ともレストラン列車で優雅に過ごすのもよし、片道は特急列車を使うのも変化があってよい。
2019年3月からは、レッドアローに代わる新型特急ラビューLaviewが華々しく登場する。「いままでに見たことのない新しい車両」としてPRも始まった。単なる移動ではなく、行きと帰りの鉄道旅行を楽しむのが、今のトレンドなのだ。
52席の至福 公式サイトhttps://www.seiburailway.jp/railways/seibu52-shifuku/女優土屋太鳳さんがPRする新型特急Laview
周辺の予約制駐車場
周辺の予約制駐車場
(注)各列車のメニューは年度や季節によって変わります。写真は、あくまでイメージとしてご覧いただければと思います。
◆取材協力:しなの鉄道、西武鉄道