【後編】地獄なの? 天国なの? 長崎「界 雲仙」で2泊3日の異世界トリップ


2023.01.31

マイナビニュース


1914年に軽井沢で温泉旅館を開業し、2023年で109年の歴史を数える星野リゾート。「旅を楽しくする」をテーマに、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」のサブブランドを展開し、2023年1月以降は国内外に4施設をオープン予定です。今回はそんな新しいワクワクを生み出し続ける星野リゾートに注目! 今こそチェックしたい話題の施設を深掘りしていきます。
第17回目は、地獄が目の前! という激レア立地に開業した「界 雲仙」2泊3日滞在記の後編。早朝の雲仙パワーウォークから始まり、全国の温泉ファンが憧れる名湯へざぶん。コンパクト雲仙温泉の町をそぞろ歩きをしてきました。
温泉もご当地グルメも、エンドレスに楽しい! 地獄の沼にハマる旅をお届けします。
→前編を読んでいない人はこちらから
■三文以上の価値がある、早朝のアクティビティへ
2日目の朝は早起きして、今回の旅で楽しみにしていた「界 雲仙」のアクティビティ「雲仙地獄パワーウォーク」へ向かいます。
ひんやりした空気が肌をさす中、向かったのは、もうもうと湯けむりを上げる雲仙地獄。湯けむり橋をスタートして、メジャーな地獄から穴場の地獄まで、ガイドさん役のスタッフさんと一緒にめぐります。
湯けむり橋周辺は、とにかく湯けむりの量がすごい……! 歩いていると、作りたてのゆで卵のような硫黄臭がぷんっと香り、「温泉地に来たぞ~」という刺激スイッチがオンに。
マストアイテムは、専用の衣装と足袋、そして杖。これらは、すべて無料で借りられます。
「冬の早朝ツアーは絶対寒すぎるでしょ……」なんて思い込みは大間違い。この衣装が、想像以上にあったかい! 冷えは足元からきますが、足袋を通じて地獄の地熱が足の裏から伝わり、歩くたびにあたたかさが体に伝わります。
しばし遊歩道を歩くと、強い硫黄臭がたちこめる「お糸地獄」に到着。グツグツと噴き出す湯けむりが異世界感を高めます。これぞ、まさに見える地獄。
地獄と名がつくだけあって、それぞれの地獄にはディープ&ダークな歴史があります。例えば、噴気の勢いNo.1の「大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)」は、その名の通り勢いよく吹き上がる噴気の音が、地獄の死者の声に聞こえることから名付けられました。
……近づくと、なるほど!「あ~、あ~」という低音ボイスが。地獄の底からもれてくる人のうめき声にも聞こえます。
そんな地獄感満載の「大叫喚地獄」では、鬼になったつもりで行うエクササイズにトライ。大股で一歩前に踏み出すと同時に、両手で持った杖を前に突き出します。大きな声を出しながら「お~!」「や~!」と声を上げると、すっかり気分は鬼。体も脳もシャキッと覚醒します。
こちらはガイドさんに教えてもらった、知る人ぞ知る地獄。この地獄から引き入れた温泉は天然のろ過装置を通過して「界 雲仙」まで運ばれるのだとか。
「雲仙地獄パワーウォーク」では、こんなレアでディープな情報を教えてもらいながらめぐれるので、旅が何倍にも楽しくなります。
ゴール地点の「旧八万地獄(50周年広場)」は、地熱の作用で足元がポカポカ快適。さながら天然の床暖房です。ここに布団を敷いたら永遠に寝られそう……。
そんなスーパーリラックス空間で行うのは、ストレッチやヨガ。青空を見上げながら、体を伸ばすのが気持ち良い! 寒くてぎゅ~と縮こまっていた体がほぐれ、気持ちまで軽やかになります。
このアクティビティは、三文以上の価値がある! 早起きするのはちょっと大変ですが、ぜひ参加してみてください。
アクティビティ後は、「界 雲仙」に戻って至福の露天風呂タイム。地獄を愛でながら絶景温泉を楽しめるのも、この宿の醍醐味(だいごみ)です。
■素材のおいしさが染み渡る「具雑煮」の朝ごはん
運動後なので、おなかがペッコペコ。いつもより食欲旺盛です。朝食に出されたのは、島原で郷土料理として親しまれている「具雑煮」。
「具雑煮」は、とにかく具だくさん。山の幸から海の幸まで、いろんな素材の旨味がお出汁に溶け込んでいます。体に染み渡るおいしさって、こういうこと!
■地獄から湧く名湯で癒やしのひとっ風呂
おなかが満たされたら、気分はすっかりお出掛けモード。調べたら雲仙温泉で唯一、白濁したにごり湯に入れる場所を発見! しかも、九州全土だけでなく、日本全国から通うファンが多い入浴施設……そう聞いたら、行かないわけにはいきません。
期待に胸を膨らませて向かった先は、「界 雲仙」から車で約10分の「小地獄温泉館」。場所は温泉街から少し離れた、静かな山中の小地獄エリアにあります。
創業は古くなんと江戸時代から。近くの「青雲荘」の外湯としても使われています。
受付は銭湯っぽい雰囲気。昭和にタイムスリップしたような、懐かしさが漂います。入浴料は大人1人460円。500円でお釣りがきちゃうのがすごいですよね。
多くの温泉ファンを引き付ける理由は、なんといっても泉質の素晴らしさ。すぐ裏手に源泉があり、そこから循環させることなく乳白色の湯を浴槽に注いでいます。
今回、特別に源泉と湯だまりを見せていただきましたが、とても大きくて迫力満点! これだけの湯が、江戸時代から枯れることなく湧き続けていると思うと、感慨深いですよね。
それでは、名湯をいただきます! 先に入っていた常連さんの鋭い視線が、逆に刺激的。目が合ったので軽くお辞儀しながら湯船に入ると、「こんにちは」と挨拶してくれました。
緊張がほぐれたところで、かけ湯をして浴槽へざぶん。源泉がすぐ横! ということもあり、入った瞬間、強力な湯の力をぐっと感じます。
白濁した湯はどこかまったり。熱いけどマイルドです。あまりの気持ち良さに、ついウトウト……。まさに地獄という名の天国です。

■コンパクトな雲仙温泉街を楽しむ
温泉に入って、気分もすっきり。次に立ち寄ったのは、雲仙温泉街の中心部にある「お食事処 たら福食堂」。こちらは「ちゃんぽん」だけなく、長崎名物「トルコライス」や「さらうどん」もある、アットホームな食堂です。
せっかくなら雲仙ちゃんぽんの味比べを……ということで、今回はちゃんぽんをオーダーしました。
ちゃんぽんの麺は少々柔らかめで、女性に嬉しいサイズ感です。バランスのとれたスープがおいしくて、優しさあふれる1杯。あっという間に完食です!
昼食後、軽い足取りで向かったのは、「お食事処 たら福食堂」から徒歩1分の場所にある「温泉神社」。ここは町のご祭神。島原半島にある温泉神社の総本山でもあります。
境内はこぢんまりしていて、ウエルカムな明るい雰囲気。「温泉神社」と書いて「うんぜんじんじゃ」と読む点もユニークです。
ご本殿の横には、 珍しい「夫婦柿」の木があります。2本の柿の木が寄り添うように立つ「夫婦柿」には、「あなたの願いが叶います」と、気になる看板が。
……ほんまかいな?! と思いながらも、やっぱり試したい!!
看板に書かれていた「祈願の作法」どおりに、柿の木をなでなでしながらお願い。ちょっぴり周囲の視線が気になりましたが、恥ずかしさを超えて行う祈願は、きっと大きな幸運をもたらしてくれるはず。
さて、雲仙グルメといえば「湯せんぺい」は欠かせません。「湯せんぺい」とは、雲仙の温泉水を入れて焼き上げるお菓子のこと。
「遠江屋本舗(とおとうみやほんぽ)」では、「湯せんぺい」を手焼きして販売。週末になると、職人さんが1枚1枚丁寧に焼く、みみつき&焼き立てを楽しめます。
通常「湯せんぺい」は製品化するタイミングでみみをカットするため、みみつきの状態で食べられるのは珍しいんです!
手焼きの「湯せんぺい」は、口の中に入れた瞬間、舌先でとけてしまうほどの軽やかな味わい。中はサクッと甘く、みみの部分は焦げ感もあってもっちもち。ウエハースにも似ているので、お茶だけでなくコーヒーにも合いそうです。
ところで、このお菓子に見覚えはありませんか?
そう! これは、「界 雲仙」の夕食時に「鬼やらい」をしながら割ったお菓子。そんなつながりを知っていると心がほっこり和むだけでなく、ツウな旅ができますよ。
雲仙ならではのおいしい思い出を作った後は、シメにもうひとっ風呂。朝一番から絶え間なく人がやってくる、人気の共同浴場「湯の里温泉共同浴場 だんきゅう風呂」へやってきました。
場所は温泉街から一歩奥に入った、住宅街の一角。黄色の文字で「湯の里温泉」と書かれた看板が目印です。
こちらは、大人1人200円とびっくりする安さ! 2泊3日の滞在中、毎日入っても600円。ランチよりお値打ちに利用できます。
「ここのお湯は熱いよ~」と聞いてはいましたが、浴槽に手を入れてみると想像以上に熱いっ!!
気合を入れてチャレンジするも、なかなか浸かれず四苦八苦……。そんな様子を見ていた常連さんが、「ここからだと入りやすいですよ」と優しく教えてくれました。
落ち着きを取り戻し、教えてもらった湯口から離れた場所へ。ゆっくりゆっくり入ると、ジンジンする熱さが染み渡ります。慣れてくるとこの熱さが、温泉好きにはたまりません。
「湯の里温泉共同浴場 だんきゅう風呂」では、動力を一切使用せず、パイプだけで地獄からここまで源泉を運んでいるそうです。さすが雲仙の名湯。熱いけど冬の冷えた体には最高でした!
■「界 雲仙」で新鮮な海の幸に浸る夕食
宿に戻ったらお楽しみの夕食。2日目なので、初日とは違う会席料理を楽しめます。1日目と内容が違う先付け&八寸は、やはり盛り付けが美しい!
特に感動したのがお造り。この日提供されたのは、ブリ・タイ・イカ・マグロの4種類。魚種が豊富な長崎県だからこそ、どれもとびきり新鮮でおいしい感動体験を味わえます。
■選んで、刷って、楽しい、活版印刷体験
3日目の朝は、ご当地文化を体験できる参加無料の「ご当地楽」にチャレンジ。施設ごとに内容は変わりますが、「界 雲仙」では活版印刷を体験できます。
意外と知られていませんが、日本の活版印刷のルーツは長崎県。16世紀後半、長崎の島原半島に海外から活版印刷の機械が持ち込まれたのが始まりだとされています。
スタッフさんから活版印刷の歴史を学んだら、いよいよ体験! 文字のブロックを1文字ずつ組み合わせ印刷用の版を作り、専用の手動印刷機で印刷し、ポストカードを作ります。
「どんな内容にしようかな?」「どこに配置しようかな?」と、イメージを膨らませながら小さな文字を組み合わせるのが楽しい! ところどころ、ピンセットを使って苦労しながら文字を配置するので、版が完成すると愛着もひとしお。
そうして完成したポストカードがこちらです。活版で押され、デコボコした文字。そこにのるインクの陰影。デジタルにはないあたたかさであふれています。
さらに、出来上がったポストカードを入れるカードホルダーは4色あり、好きな色を選べるのも嬉しい点。歴史に思いをはせながら、世界に一つだけのお土産を作れるステキな体験ができました。
■雲仙温泉から30分の小浜温泉へ
「界 雲仙」をチェックアウトしたら、そのまま帰るのはもったいない!
せっかくなので、施設から車を使って30分で行ける小浜温泉へ立ち寄ります。小浜温泉は海岸に面した温泉地。日本一の長い足湯「小浜温泉足湯 ほっとふっと105」もあります。
橘湾を眺めながら入る足湯は至福の時間です。さすが日本一! 足湯でここまでの開放感は、なかなか味わえません。
「ほっとふっと105」のすぐ横には、小浜温泉の蒸気を利用した「海鮮市場 蒸し釜や」があります。こちらは好きな材料を選んで蒸してもらえるなど、定食メニューも充実。ランチにぴったりなスポットです。
ネタはどれも新鮮。海の幸と温泉のいいとこどりが楽しめます。好きなものを好きなだけ選ぶことができるから、満足度は200%! 蒸し上がった牡蠣やサザエは、ジューシーさがたまりません。
1人でも幸福感いっぱいだったので、みんなでワイワイ体験すればきっと忘れられない思い出になるはず。
絶景温泉も感動グルメもレアな体験も、旅人の欲しいものがすべてそろう「界 雲仙」。日常から離れてワクワクしたい方はぜひ訪れてみてください!
■Information
界 雲仙
【場所】長崎県雲仙市小浜町雲仙321
安藤美紀 あんどうみき 猫好きのフリーライター。2012年より独立し、全国津々浦々、旅をしながら見過ごすのはもったいない+αのワクワクするような旅情報を発信してます。これまで書いた記事の数は、700本以上。温泉ソムリエマスター、健康入浴指導士でもあります。温泉、ドライブ旅、グルメ、ディズニー系が得意。 この著者の記事一覧はこちら 

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2024/05/09 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/04/25

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