
●10~6位を発表--世界一の桜並木にタレント桜も
寒かった冬も終わり、いよいよ桜の花見の季節が到来! 2018年は急に暖かくなったせいか、開花が例年よりも一週間から10日程開花が早い場所もある状況だ。そこで今回は、まだ余裕で花見に間に合う東日本エリアの中から、筆者が実際に訪れて特に素晴らしいと思った桜の名所を10カ所厳選し、満足度のランキング形式で紹介しよう。
○第10位 五稜郭公園の桜(北海道函館市)
第10位は、五稜郭公園の桜。北海道の桜は基本的にヤマザクラが多く、本州の桜を見慣れている目にはソメイヨシノほどの見応えがないのが実情だが、五稜郭公園の桜は北海道では貴重なソメイヨシノ。本州の花見名所にも負けない見応えで、北海道を代表する花見名所と言える。
特にオススメは昼間の桜で、観光名所の五稜郭タワーから見下ろす花見は、ここならではの絶景だ。五稜郭自体は昼間のみ入場可能で、時間外は外側に広がる桜林での花見になる。夜はライトアップがあるが、ぼんぼり(雪洞)によるものなので、北海道名物ジンギスカンの花見宴会には十分だが、鑑賞には向かない。
夜桜のライトアップなら、松前城まで行くのがオススメ。ただし、オリジナル品種のナデン(南殿)など見所も多いことを踏まえると、ぜひ昼間の桜も楽しんでいただきたい。
●information
五稜郭公園の桜
例年の見頃: 4月下旬~5月上旬
住所: 北海道函館市五稜郭町44
アクセス: JR函館本線函館駅から湯の川行き市電17分、五稜郭公園前下車徒歩15分
○第9位 世界一の桜並木(青森県弘前市)
第9位は、世界一の桜並木。世界一なのに知名度が非常に低いので、ぜひ知ってほしいという意味も込めて第9位とさせていただいた。総延長20kmにも及ぶヤマザクラの並木道で、「世界一長い桜並木」と呼ばれる場合もある。
日本屈指の桜名所、弘前公園がある弘前市内にあるのだが、岩木山方面の標高が高いエリアにあり、品種的にもヤマザクラなので開花が遅い。よって、弘前公園の桜が満開になっても、咲き始めの状況で同時に見るのが難しく、セットで有名になるというわけにはいかないのが、知名度が低い理由だろう。
ここが満開になる頃には、他の桜は終わっているが、比較的開花が遅い小岩井牧場の一本桜(岩手県)などとともに、広範囲に周遊して訪れていただきたい。
●information
世界一の桜並木(世界一長い桜並木)
例年の見頃: 4月下旬~5月上旬
住所: 青森県弘前市百沢~常盤野
アクセス: JR奥羽本線弘前駅から枯木平行きバス40分、岩木山総合公園下車すぐ
○第8位 裏磐梯桜峠(福島県耶麻郡)
第8位は裏磐梯の桜峠。ここは写真でも分かる通り、日本でも屈指の絶景だ。開花期間もゴールデンウィークに重なり、好都合のはずだが、ゴールデンウィークにはもっと有名な観光地が多いせいか、知名度が低いのが残念だ。しかし、どんな観光名所も最初は知名度が低いもの。いずれ日本を代表する桜の名所として認知されると確信している。むしろ、行くなら空いている今のうちだ。
裏磐梯だが喜多方側にあるので、喜多方駅からのアクセスが便利だ。喜多方といえば、もう一カ所「日中線記念自転車歩行者道のしだれ桜」もオススメ。しだれ桜の並木道は全国的にも貴重だが、その代表格ともいえる場所だ。ここも今後有名になるに違いない場所で、開花時期は裏磐梯よりやや早め。両方を見るつもりで行けば、どちらかが見頃を迎えているに違いない。
●information
桜峠さくらまつり
開催日: 2018年4月28日~5月6日
住所: 福島県耶麻郡北塩原村大塩桜峠8664-5
アクセス: JR磐越西線喜多方駅から磐梯高原行バス43分、ラビスパ裏磐梯下車すぐ
○■第7位 吉高の大桜(千葉県印西市)
第7位は、吉高の大桜。ランキングの前半は、これからの期待を込めて意図的に知名度が低い場所を選んでいるが、ここは東京からも近く気軽に行ける名スポットだ。写真のように樹形が極めて整ったヤマザクラの一本桜で、圧倒的な見応えに感動を禁じ得ない。
桜の花見というと、一般的には桜並木のように桜がたくさんある場所を連想するだろうが、実は一本桜の独特な魅力は、それに勝るとも劣らない醍醐味がある。樹齢300年を超える老木だが、その生命力は旺盛。満開期間が2,3日で本当のピークは一日ともいわれる儚い桜なので、満開前に行くと花がスローモーションで開こうとしているような気がするほどだ。
一本桜の素晴らしさは見た目の美しさだけでなく、人間より何倍も長生きな生命体の「生命力の実感」こそが本当の醍醐味。吉高の大桜は、それが非常に分かりやすく、一本桜の入門に最適な桜といえる。
吉高の大桜はヤマザクラなので、ソメイヨシノよりも開花が一週間遅れる。残念ながら見頃よりも早く行ってしまった場合には、小林牧場の桜も見ておこう。こちらは地方競馬の牧場で、大木のソメイヨシノの桜並木が素晴らしい。出店も多数出ており、ライトアップも実施され、典型的な花見を賑わいとともに楽しめる。
●information
吉高の大桜
開花情報
例年の見頃: 4月上旬(ソメイヨシノの約一週間後)
住所: 千葉県印西市吉高930
アクセス: 北総鉄道印旛日本医大駅から京成酒々井駅行きバス10分、印旛郵便局下車徒歩約30分
○第6位 わに塚の桜(山梨県韮崎市)
第6位は、わに塚の桜。日本には三大桜や五大桜など有名な桜が多数ある。わに塚の桜は、それらには含まれておらず、純粋に樹形の美しさで有名になった桜。ドラマ等のタイトルバックにも登場する、いわばタレント桜で、三大桜以外では日本一有名な一本桜に違いない。
昼間も絶景だが、夜桜のライトアップも素晴らしく、まばゆい光に照らし出された純白の夜桜は、まるで未知との遭遇のような幻想的な雰囲気。この世の物とは思えない美しさだ。近くには、日本三大桜にして日本最古の一本桜である山高神代桜があり、推定樹齢1,800年とも2,000年とも言われ開花時期も近いので、あわせて見ておきたい。
●information
わに塚の桜
開花情報
例年の見頃: 4月上旬~4月中旬
住所: 山梨県韮崎市神山町北宮地624
アクセス: JR中央本線韮崎駅から上円井上行きバス11分、武田八幡入口下車徒歩5分
続いては5位から1位までを紹介しよう。
●5~1位を発表--森の巨人たち百選に日本最古のしだれ桜
○第5位 越代のサクラ(福島県石川郡)
第5位は、越代のサクラ。林野庁が選定した国有林を代表する巨樹・巨木「森の巨人たち百選」に、花見を楽しめる木としては唯一ランクインしたヤマザクラの一本桜だ。
第7位で紹介した吉高の大桜も、ヤマザクラの一本桜としては極めて樹形が整っているが、越代のサクラには圧倒的な風格まで備わっており、上には上があると恐れ入る他ない。しかも、県道沿いにあって交通至便。ゴールデンウィークの貴重な一日を費やすのにも惜しくない花見名所だ。
開花が遅いヤマザクラで標高が高い場所にあるので、他の桜はほとんど終わっているが、あしかがフラワーパークの藤や、国営ひたち海浜公園のネモフィラが見頃を迎える時期なので、周遊して花見を楽しめる。
●information
越代のサクラ
例年の見頃: 4月下旬~5月上旬
住所: 福島県石川郡古殿町大字大久田字越代
アクセス: 東北新幹線新白河駅から石川営業所行きバス63分、終点石川営業所で有実上行きバスに乗り換え51分、終点下車徒歩約40分
○第4位 権現堂桜堤(埼玉県幸手市)
第4位の権現堂桜堤は東京近郊とは思えない、桜と菜の花が絶景の花見名所。ここも、第6位で紹介した「わに塚の桜」のように、映画やミュージックビデオのロケ地として頻繁に登場する場所で、実際の見応えも抜群だ。
今回紹介した花見名所では開花時期が一番早く、記事が公開される頃には見頃を迎えているに違いない。2018年は桜の開花が早い上に、他の菜の花名所でも不作の場合が多かったので、2018年は両者の絶景コラボは難しいかもしれない。しかし、このように容易でないからこそ、貴重な光景として素晴らしい思い出として残るのだ。
権現堂桜堤の見頃時期には、周辺の花見名所も一斉に見頃を迎えているので、ぜひ周遊して楽しみたい。変わった所では、古河の花桃もオススメ。桜よりも一足先に満開になるので、早い時期から楽しめる。
●information
権現堂桜堤(県営権現堂4号公園)
開花情報
例年の見頃: 3月下旬~4月上旬
住所: 埼玉県幸手市大字内国府間887-3
アクセス: 東武鉄道幸手駅から五霞町役場行きバス15分、桜まつり会場下車すぐ
○第3位 河口湖北岸の桜(山梨県南都留郡)
第3位は、河口湖北岸の桜。富士山と桜がコラボする場所は数多いが、河口湖までコラボする絶景が素晴らしい。秋には同様に紅葉と富士山と河口湖がコラボし、まさに絵葉書のような絶景だ。
特に写真撮影の名所になっているのが、湖山亭うぶや前バス停付近の「産屋ヶ崎の桜」と、サニーデ前長崎公園入口バス停から湖畔に向かった長崎公園の2カ所。その間の河口湖北岸一帯が、絶景の観光地になっている。
富士山と桜のコラボで、もう1カ所有名なのが新倉山浅間公園。富士山と桜に、五重塔に見える忠霊塔がコラボする、日本らしさを感じる絶景だ。開花時期も場所も近いので、あわせて花見しよう。
●information
富士・河口湖さくら祭り
開催期間: 2018年4月14日~4月22日
住所: 山梨県南都留郡富士河口湖町
アクセス: 富士急行河口湖駅から河口湖周遊レトロバス25分、猿まわし劇場木の花花美術館前下車すぐ
○第2位 三春滝桜(福島県田村郡)
第2位は、三春滝桜。日本三大桜唯一のしだれ桜で、しだれ桜では日本最古。事実上、風格も見応えも日本一の一本桜で、まさに必見だ。その素晴らしさが広く知れ渡っているために、その混雑も尋常ではない。車を使って前日から時間差で行けるのであればベストだが、そうでなければ丸一日費やす覚悟が必要だ。
基本的に混雑が嫌いな筆者は、今回も極力混雑が激しくない桜の名所を推薦している。しかし、三春滝桜だけはどんなに混雑しようとも、オススメから除外するわけにはいかない。まさに別格で、一度は見ないと話にならない桜なのだ。
しかし、逆に言えば一度見れば十分で、こんな混雑何度も経験するべきではない。そして、一度見た人には「合戦場の桜」がオススメだ。三春滝桜の子孫の桜なので、その素質は十二分。むしろ若々しい美しさが素敵だ。三春滝桜のライトアップはLED照明で冷たい印象だが、合戦場の桜のライトアップは、電球色の暖色系のライトアップで、夜桜も必見だ。
●information
三春滝桜
例年の見頃: 4月中旬
住所: 福島県田村郡三春町大字滝字桜久保
アクセス: JR磐越東線三春駅から臨時バス「滝桜号」で約17分
○第1位 弘前公園の桜(青森県弘前市)
第1位は、弘前公園の桜。日本三大桜名所と日本三大夜桜に唯一ダブル指定されている、名実ともに日本を代表する花見名所だ。中でも圧倒的に素晴らしいのが、写真の外堀の花筏。ピンク色の道路にしか見えないが、外堀の水面が桜の花びらで埋め尽くされているのだ。
こんなに散ったら、木に花が残っていないのではと思うほどだが、桜の木にも十分に花があるのが不思議。この点こそが弘前公園の桜の実力で、特産のりんごの剪定技術を応用して桜の手入れをしているので、桜が元気で花数が多いのだ。
桜の元気さは開花速度にも現れており、一日でも暖かい日があると、前の日が何分咲きだろうが、一気に満開になってしまう場合がある。よって、岩手の北上展勝地や秋田の角館といった東北三大桜名所を巡りながら北上したのでは間に合わない。しかし、遅れ気味で行けば花筏が見頃なので、遅れ気味で行くのも結果オーライといえる。
あわせて行きたい桜名所としては、第9位で紹介した世界一の桜並木があるが、標高が高くヤマザクラなので、あまり咲いていない場合も多い。その場合には、芦野公園がオススメ。桜の数は多くはないが、鉄道と桜のコラボを楽しめる珍しい花見名所だ。
●information
弘前さくらまつり
開催期間: 2018年4月21日~5月6日
住所: 青森県弘前市下白銀町1-1
アクセス: JR奥羽本線弘前駅から市役所行きバス15分、市役所前公園入口下車すぐ
桜の花見は春には毎年できるが、遠くまで旅行する元気がある内に花見をできる年数なら、大半の大人には数十年程度しか時間が残されていないのではなかろうか。日頃の忙しさを理由に、貴重な季節のイベントを見過ごしたのでは、人生に潤いがなくなってしまうに違いない。桜の儚さにかけて、一度しかない人生を楽しもうではないか。この記事を参考に今年こそ、過去最高の花見旅を実現していただきたい。
○筆者プロフィール: 藤田聡
温泉研究家、オールアバウト「温泉」「紅葉スポット」ガイド。温泉旅行検定試験で2年連続日本一になり、検定協会から「温泉旅行博士」の称号を授与される。温泉地を中心に周辺観光地の取材・撮影を行い、海外旅行にも決して負けない、国内旅行の奥深い魅力をメディアで発信中。紅葉や一本桜、夜景や四季の花などの絶景スポットにも精通している。
