これが小江戸川越だ! 城下町をめぐり知られざる歴史や伝統の表裏を知る


2016.09.07

マイナビニュース

●なぜ川越に東照宮? なぜ『とおりゃんせ』は帰りはこわい?
川越市は埼玉県のほぼ中央に位置し、江戸時代には川越城の城下町として、小江戸と呼ばれ栄えた歴史のある町だ。江戸時代以前から存在する寺社や、明治・大正・昭和の各時代の風情を味わえる町並みが残されており、街歩きをするだけで、まるでタイムマシーンでタイムトラベルをするような気分を味わうことができる。そんな川越の街の見どころを市内の川越高校出身の筆者が案内しよう。
○日光、久能山と並ぶ三大東照宮
川越市内の主な駅には、JR・東武東上線の川越駅、西武新宿線の本川越駅があるが、今回は川越駅から歩き始めることにする。川越駅に下り立ったら、まずは、川越を代表する観光名所「川越大師喜多院」境内にまつられている「仙波(せんば)東照宮」を目指そう。仙波東照宮までは、川越一の繁華街「クレアモール」を抜け、東照宮中院(なかいん)通りを経由して、徒歩で約20分ほどだ。
東照宮と言えば、徳川家康をまつる神社というのはご存じだろう。栃木県の日光東照宮と、家康の遺体が当初埋葬された静岡市の久能山東照宮が有名だが、これに仙波東照宮を加え、「三大東照宮」とされる。
なぜ川越に東照宮があるのだろうか? それは、家康の側近として政治に深く関与し、「黒衣の宰相」とも呼ばれた天海僧正が喜多院の住職を務め、家康の死の一年後、遺骨を久能山から日光に遷す際、喜多院に四日間逗留し、供養したことに由来するそうだ。なお、遺骨は久能山に残されているという説もある。
ちなみに仙波というのはこの辺りの地名でその昔、仙芳(せんぼう)仙人が洋々たる海だったこの場所の海水を法力で除き、その地に尊像をまつったのが、喜多院の前身である無量寿寺のはじまりとする伝説に由来するようだ。つまり、仙芳がなまって仙波になったというわけだが、仙人の名前が地名の由来だなんて、ロマンを感じずにはいられない。
●information
仙波東照宮
埼玉県川越市小仙波町1-21-1
アクセス: JR・東武東上線の川越駅から徒歩約20分
○見どころいっぱいの川越大師喜多院
木立に囲まれ静かな仙波東照宮から、多くの人々でにぎわう喜多院の本堂(慈恵堂)に向かって歩いて行くと、陽射しがとてもまぶしく感じられる。喜多院を訪れたなら、本堂のほか、江戸城から移築された客殿と書院は必ず拝観したい。寛永15(1638)年の川越大火により山門を除く喜多院の建物は全て焼失してしまうが、再建に際し、天海僧正を父のように慕う三代将軍・家光が、江戸城の御殿を移築するように命じたものだ。
建物内には、かつてNHKの大河ドラマで話題となった家光の乳母である春日局(かすがのつぼね)の「化粧の間」や「家光誕生の間」、さらに当時の湯殿(風呂)や厠(トイレ)なども残され、とても興味深い。
解説によれば、当時の将軍は湯殿では襦袢(じゅばん)を身につけたまま湯浴みをしたという。また、厠は二畳半ほどの広さだが、用を足すときは四隅を警護の者が守り、穴の下ではくみ取り役が桶を構えていたという。これでは風呂もトイレもスッキリしないと思うのは、筆者だけではないだろう。
さて、建物を出たら、有名な「五百羅漢(らかん)」も拝観しよう。江戸時代の天明2(1782)年から約50年にわたって彫られた538体の石仏群は、酒を酌み交わす者、寝そべって腰をマッサージされる者など、まるで生きた人間のように表情豊かに表現されており、見ていて飽きることがない。このほか、喜多院には七不思議の伝説なども伝わり、伝説に登場する場所を探してみるのも面白いだろう。
●information
喜多院
埼玉県川越市小仙波町1-20-1
アクセス: JR・東武東上線の川越駅から徒歩約20分
建物・五百羅漢拝観料:大人400円、小・中学生200円
○川越城址と『とおりゃんせ』発祥の地
城下町・川越に来たなら、やはりお城を見ないわけにはいかない。次は、川越城本丸御殿を訪ねてみよう。喜多院の境内を北に出ると、千葉の成田山の川越別院がある。その先の県道を渡ると、ここから先は住宅地の中のやや入り組んだ小道になるが、丁寧に道標が設置されているので迷うことはないだろう。
途中、天守閣のない川越城で、天守閣の代わりの役割を果たしたという「富士見櫓(やぐら)」跡に立ち寄るのもオススメだ。現在は、小高い岡の上に神社がまつられているだけで、木々が生い茂って眺望もないが、かつては川越城下はもとより、その名からすれば富士山も一望できたに違いない。
富士見櫓跡から元の道に戻り、少し歩けば川越城本丸御殿に到着する。川越城の歴史は室町時代に遡り、その後、戦国時代には小田原北条氏の城のひとつとして、豊臣秀吉に攻められたこともある。江戸時代になると、江戸城の北の守りとして重要視され、代々の城主のうち8人までもが老中・大老を務めるなど、まさに「老中の居城」であった。
現在の本丸御殿は、江戸時代末の弘化3(1846)年に、城主の居所である二の丸御殿が火災によって焼失したため、当時空き地だった本丸に、嘉永元(1848)年に建てられた本丸御殿のうちの一部を保存したものだ。明治維新後は、役場(入間郡役所)や武道場、たばこ工場、中学校校舎として使われたという。
本丸御殿の見学を終えたら、道路を挟んで向かいの初雁公園の一角にまつられている、わらべ唄『とおりゃんせ』発祥の地とされる三芳野神社に立ち寄ってみよう。『とおりゃんせ』の最後は、いきはよいよい 帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせという、ちょっと怖い歌詞になっている。
これは当時、三芳野神社は川越城の城内にあり、庶民がお参りを許されるのは、年に一度の大祭や七五三の祝いなど特別な場合だけだったことに由来しているとか。城内では警護の侍が眼を光らせていて、帰りは荷物チェックなどが厳しかったことから、このような歌詞が生まれたというのが有力な説だ。
●information
川越城本丸御殿
埼玉県川越市郭町2-13-1
アクセス: JR・東武東上線の川越駅より、イーグルバス「小江戸巡回バス」で本丸御殿バス停下車徒歩すぐ
入館料: 一般100円、大学生・高校生50円
川越城本丸御殿の歴史を堪能したら、今度は明治・大正・昭和にタイムトラベルをしてみてはいかがだろうか。川越城本丸御殿から市役所前を過ぎ、「札の辻」交差点方面へ足を進めると、明治・大正・昭和の各時代の風情を味わえる町並みが広がる。もちろん、川越名物のあの高級グルメもお待ちかねだ。続いてはそんな街歩きを紹介しよう。
●明治・大正・昭和のタイムトラベルの最後は伝統の鰻でしめる
○400年にわたって時を街に知らせる鐘
まず、明治時代の町並みというのは、川越を代表する景観「蔵造りの町並み」である。土蔵のようなどっしりとした構えの家々は、明治26(1893)年の川越大火で、旧市街のおよそ4割が焼失したものの、土蔵だけが焼け残ったのを教訓に、地元商人が耐火性に優れる蔵造りの店舗をこぞって建築したことでできあがったという。
この蔵造りの家々の一角には、400年にわたり城下町に時を知らせてきた川越のシンボル「時の鐘」がある。この時の鐘は2015年7月~2016年12月までの予定で耐震工事中で、2016年10月頃までは工事用の幕に覆われ、その姿を見ることができない。
○町並みはさらに大正から昭和へ
大正時代の風情は、時の鐘から南へ200mほどの場所にある「大正浪漫夢通り」商店街で味わうことができる。この商店街はかつては「銀座商店街」というアーケード商店街だったエリアで、必ずしも大正時代の街並みがそのまま残されているわけではない。
しかし、商店街の入り口に建つ「川越商工会議所」の建物(旧武州銀行川越支店 昭和3年/1928年築)や、かつては呉服屋だった「シマノコーヒー大正館」の建物(昭和8年/1933年築)などレトロな建物が、モダンな大正時代の雰囲気を彷彿(ほうふつ)させる。ちなみに、川越の大正時代を代表する建物といえば、大正浪漫夢通りからもほど近い、「埼玉りそな銀行川越支店」の建物(旧第八十五銀行本店: 大正7年1918年築)がある。
そして、昭和の風情が味わえるのは、駄菓子などを売る小さな商店が軒を並べる「菓子屋横丁」だ。ここは、テレビでもよく紹介されるので、ご存じの方も多いだろう。昔懐かしい駄菓子のほか、川越のオリジナルの菓子なども販売されており、子供のみならず大人も楽しめる。学校の帰りに買い食いした駄菓子などを見つけ、懐かしくなる人も多いのではないか。
○埼玉が誇る「埼玉S級グルメ」の鰻も見逃せない
川越は歴史ある鰻(うなぎ)屋が多い。海のないこの辺りでは、かつては鰻は貴重なタンパク源だったのだ。そういえば同じく埼玉県の浦和(さいたま市)も、江戸時代から鰻が有名だったと聞く。
数ある川越の鰻屋の中で、今回は、大正浪漫夢通りにある、江戸時代の文化4(1807)年創業という「小川菊(おがぎく)」で「うな重 上」(香の物・吸い物付、税込3,400円)をいただいた。学生の頃は、いつかこんな店で鰻を食べてみたいと思ったものだ。なお埼玉県では、地元・伝統食材を用い料理人の工夫や店舗の雰囲気で埼玉らしさを伝える飲食店を「埼玉S級グルメ」に認定しているが、同店は2014年にこの「埼玉S級グルメ」に認定されている。
川越の旅、いかがだっただろうか。川越の観光エリアはそれほど広くないので、今回歩いたコースも半日あれば十分歩いてまわれる。また、観光スポットをめぐる「小江戸巡回バス」というレトロバスも運行されているので、上手に利用すれば、より快適に観光を楽しめるだろう。
なお余談だが、川越城本丸御殿の裏手にある筆者の母校・県立川越高校では、映画『ウォーターボーイズ』のモデルとなった男のシンクロが、毎年9月、同校の学園祭「くすのき祭」で行われるのもご案内しておこう(2016年は9月3日~4日開催)。
※記事中の情報は2016年8月時点のもの
○筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)
旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。 

川越
place
埼玉県川越市脇田本町
川越城本丸御殿
place
埼玉県川越市郭町2-13-1
phone
0492225399
opening-hour
9:00-17:00(最終入館16:30)
仙波東照宮
place
埼玉県川越市小仙波町1-21-1
phone
0492225556
opening-hour
10:00-16:00
喜多院
place
埼玉県川越市小仙波町1-20-1
phone
0492220859
opening-hour
【3/1-11/23】8:50-16:30[日祝…

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