【取材】加賀・山代温泉に佇む老舗旅館で、北大路魯山人も愛した温泉と美食に憩う


2022.11.17

一休コンシェルジュ

北陸を代表する温泉地・山代温泉郷に佇む「あらや滔々庵」は、18代続く老舗旅館。山代随一の湯量を誇る源泉を楽しめるほか、稀代の芸術家・美食家として有名な北大路魯山人ゆかりの宿としても知られています。今回は、そんな宿の魅力を一休コンシェルジュ編集部が取材してきました。開湯約1300年の山代温泉郷に佇む、老舗温泉旅館「あらや滔々庵」が位置するのは、石川県・加賀市で開湯約1300年の歴史を誇る山代温泉郷。数々の文人墨客を魅了してきた温泉地は、観光スポットが豊富なことに加え、日本を代表する伝統工芸品・九谷焼の故郷としても知られています。宿はJR加賀温泉駅から車で10分ほどの場所にあり、駅からの無料送迎も行なっています(要事前予約)。早速入口へ向かうと、足元には熱々の源泉が。温泉旅館ならではのお出迎えです。柵の中を覗いてみると、たくさんの卵を発見!ここで温泉に浸けられたあと、温泉卵としてゲストに振る舞われるのだそう。宿に入る前から気分が高まります。北大路魯山人の作品が残された、美術館さながらの空間玄関から館内へ一歩足を踏み入れると、洗練された和の雰囲気漂うロビーがお目見え。大正初期、当時まだ無名だった北大路魯山人が逗留していたこちらの宿。あらや宿主・15代源右衛門は、魯山人の作品を注文するなどして交流を深め、彼の生活を支えていたのだそう。玄関横には、魯山人の作品である「暁烏の衝立」が飾られていました。ロビーには風情ある中庭を望むスペースに加え、スパークリングワインなどのドリンク類が置かれていました。滞在中、ちょっと一息つきたいときに嬉しいサービスですね。館内には、至るところに魯山人の作品が展示されています。なかでも「赤絵十皿」は、彼が初めて手掛けた陶芸作品とされる貴重な品。魯山人のみならず、代々受け継がれてきた美術品や現代アートも展示されており、美術館さながらの空間が広がります。伝統の朱壁が印象的な、前田家ゆかりの特別室「御陣の間」「あらや滔々庵」の客室数は全17室。半露天風呂付の客室もあり、お部屋にいながら100%源泉掛け流しの湯を満喫することができます。まずは、特別室「御陣の間(おちんのま)」を案内していただきました。室内は約98平米とゆとりのある造りで、主室と寝室の二間で構成されています。この客室の大きな特徴でもあるのが、主室を彩る漆塗りの柱と鮮やかな色の「朱壁(しゅかべ)」。金沢伝統の美しい壁色が、しっとりとした独自の雰囲気を生み出しています。前田家歴代藩主ゆかりの由緒ある客室で、当時の間取りのまま現在の建物に移築したのだそう。隣には畳敷きの寝室が。ローベッドのため、室内がより広く感じられます。障子戸の向こう側には、バスルームも。2つの浴槽が繋がった珍しい造りで、上の浴槽に注がれた源泉が下の浴槽に流れていく仕組みです。上は温度が高く、下はぬる湯になっているので、そのときの気分に合わせて湯浴みを楽しめます。窓が大きく開き、風が通り抜けて何とも心地よい気分に。壁の陶板は、魯山人の旧宅をイメージして作られたとのこと。浴槽の横には、ゆとりのある洗い場とシャワー。洗面台まわりも広々としているので、使いやすそうです。アメニティ類も、必要なものがしっかりと揃えられていました。宿で最も歴史のある「御陣の間」は、魯山人も好んで逗留していたのだそう。実際に滞在してみれば、偉人たちが過ごした空間の魅力がわかるかもしれません。バーラウンジ「有栖川山荘」の空間を活かして改装した離れ客室続いてご紹介いただいたのは、離れの客室。実はこちら、もともとバーラウンジとして使われていた離れ「有栖川山荘」を客室へと改装したのだそう。渡り廊下の横にそびえるご神木を眺めながら、客室へ向かいます。かつて宿と親交の深かった、皇族・有栖川熾仁親王にちなんで名付けられた「有栖川山荘」。十分すぎるほどの広さを持つ室内は和室二間と寝室という構成で、主室には熾仁親王の直筆による「江山清趣」の大書が飾られています。畳敷きにラタンチェアが配され、やや和モダンな雰囲気。座椅子と座布団が置かれた和室も。廊下のガラス障子からは外の木々が見え、風情を感じます。寝室にはローベッドに加えて、作業がしやすそうなデスクも完備。とても静かで、読書などが捗りそうです。バスルームは入った瞬間に檜の香りが漂い、癒し効果も抜群。窓を開ければ、半露天風呂気分で湯浴みを満喫できそうです。ゲストからも評判だった、バーラウンジ「有栖川山荘」を改装するという大胆な試み。オープンはもう少し先とのことでしたが、滞在できる日が待ち遠しい限りです。湯量豊富な源泉を掛け流しで楽しめる、3種類の大浴場客室のあとに見せていただいたのは「あらや滔々庵」の大きな魅力でもある、3種類の大浴場。もちろん、源泉を100%掛け流しで楽しむことができます。時間帯による男女入れ替え制のため、一度の滞在ですべてのお風呂を利用できます。まずは大浴場「瑠璃光」へ。山代温泉を守り続ける、薬王院温泉寺の本尊「薬師瑠璃光如来」から拝命したというこちらのお風呂。造られた昭和30年代当時としてはかなり大きな内湯で、とても評判だったそう。今もなお多くのゲストに親しまれ、その歴史を刻み続けています。入口の横には、こんな張り紙が。地下わずか数十メートルから湧出しているのが山代温泉の特徴で、宿名にもなっている「滔々」は、温泉が淀みなく湧き続ける様子を表しています。その意味のとおり、宿では1日約10万リットルもの湯が湧き出ており、山代随一の湯量を誇っているのだそう。内湯だけでなく、屋根付の露天風呂も完備されています。続いて、大浴場「原泉閣」へ。こちらも内湯と露天風呂という造りになっています。左手にあるのは、温泉縁起にまつわる壁画。四季を表現したもので、見る人によって春夏秋冬の印象が異なるのだそう。自分ならどの季節に見えるのか、訪れた際にチェックしてみるのも面白そうです。「瑠璃光」と同様に露天風呂を完備。それぞれの大浴場で趣が異なるため、ぜひすべて利用したいところです。最後に案内していただいたのは、特別浴室「烏湯」。源泉を五感で感じ取るメディティエーション・バスという、独自のコンセプトを持つこちらのお風呂。黒をベースにした空間には、源泉のミストが立ち込めています。2種類ある湯船は、熱湯とぬる湯にわかれているので、交代浴をすることも可能。心を鎮めて温泉に浸かれば、身体の疲れも解れていくことでしょう。美食の地・石川にある宿ならではの、四季を感じる料理の数々海・山・川・里と、あらゆる食材が豊富に揃う美食の地・金沢、そして加賀。宿では、そんな土地の素材を活かした季節ごとの日本料理を味わうことができます。料理だけでなく、盛り込む器にもご注目。九谷焼や山中塗といった地元作家の作品や、宿ゆかりの芸術家の作品など、館主の好みで選ばれた様々な器が料理をより華やかに彩ります。冬の味覚を代表するカニを盛り込んだコースもご用意。石川ならではの青いタグ付ズワイガニを、茹で・焼き・刺身といった宿おすすめの調理法でいただくことができます。新鮮なカニが持つ、身の甘味や味噌の旨味を心ゆくまで満喫してみては。館内には、魯山人の作品を展示したギャラリーも最後に見せていただいたのは「作品展示室」。ここにも魯山人の書や器などが展示されています。室内はこぢんまりとした茶室のような造りで、静かに作品を愛でることができるのが魅力。日が差し込んだ室内は、日常から切り離されたような穏やかな雰囲気でした。日本が誇る伝統と美食の街・金沢の奥座敷、加賀山代温泉に佇む「あらや滔々庵」。今回の取材を通じて、客室や温泉の魅力はもちろん、ホスピタリティの高さも感じることができました。魯山人もこよなく愛した空間で“こころに贅沢”な滞在を叶えてみてはいかがでしょうか。 あらや滔々庵 石川県/加賀 詳細情報はこちら  

read-more
あらや滔々庵
place
石川県加賀市山代温泉18-119
phone
0761770010
すべて表示arrow

ラグジュアリー スイート

¥209,000

arrow icon

2024/05/03 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/04/20

この記事を含むまとめ記事はこちら