【滞在記】「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」で眼前に広がる雄大な海と美食を満喫!


2022.08.18

一休コンシェルジュ

穏やかである。地平線の彼方まで大気が穏やかで、柔らかい。
海辺に建つ、数々のリゾートホテルに訪れたが、こんなに穏やかな気を感じたことはなかった。ただ静かだということではない。宿泊客は大勢いるし、海やプールでは小さい子供達がはしゃぎながら泳いでいる。それなのにも関わらず、のったりとした気分を運んでくる。眼前に広がる静かな大海原や、晴れ渡る雄大な空もあろう。
ホテルマンたちの、ホスピタリティもあろう。だがそれだけではなく、この地全体が醸し出す時間が、ゆったりと流れ、心を優しくさせる。今の若い子たちの言葉で言えば、完璧な“チルっている”場所である。都会の汗が落ち、今までの時間が緩み、本来の自分の時間が戻ってくる。ホテルの部屋に入った瞬間に、それを感じるのである。泊まったのは、メイン棟の「ザ・アイランド」から徒歩約3分のところに建つ、客室数23室、長期滞在用の「ザ・ビーチハウス」である。オープンエアバルコニー付55平米のゆったりとした大きさの客室で、全ての部屋から広々とした海を独り占めにできる。ソファやデイベッドに寝転びながら、日がな一日、本でも読みながら過ごしてもいい。気が向けば、目の前のプライベートビーチで泳いでもいい。ホテルで食事も取れるし、簡単なキッチンで自炊してもいい。過ごし方を微塵も束縛しないのが、「ザ・ビーチハウス」だろう。一方「ザ・アイランド」も、海や岩肌、原生植物など、瀬良垣島の自然が眼下に広がり、心地よい時間が過ごせる。さて夕食は「日本料理 シラカチ」に向かった。
ちなみに「シラカチ」とは瀬良垣の琉球語の呼び方である。
ここで沖縄本土復帰50周年を記念して、3月から始まった琉球和会席のコース「URIZUN」がいただける。琉球和会席とは、琉球王朝が薩摩藩や中国の大使を接待した料理をベースにして、現代的にアレンジした料理だという。その前にバーで、アペリティフをいただいてみた。
オリジナルカクテル「ハーリー」は、シークワーサーと沖縄産のまさひろオキナワジンにローズウォーターを加えたカクテルで、爽やかな酸味とジンのコク、ローズウォーターの甘い香りが調和した、なんとも気分を鎮めるカクテルである。「ハーリー」で、グッと食欲が高まった。それでは琉球和会席をいただこう。前菜は「苦菜と長命草、柑橘の白和え」。豚の肩ロースや魚のすり身を合わせて蒸しあげた、優しいソーセージとかまぼこの味が溶け合った「シシかまぼこ」。「和三盆カステラ玉子」。イカを飾り切りにした「花烏賊」。豚のロースをタレに漬け込んで、黒胡麻ペーストを重ねて蒸しあげた「ミヌダル」は、余分な脂が落ちた豚肉が胡麻の甘みと出会って、一口食べた瞬間に思わず笑みがこぼれる。提供される寸前に、サッと茹でて、繊細な甘みが活きた「沖縄産車海老とキャビア」。マグロを芯にして昆布巻きにした「クーブマチ」といった料理が並ぶ。どれも沖縄伝統の料理であるが、盛り付けや彩がモダンであり、食材の本質を活かした味付けに整えられている。次は「いなむどぅち風」のお椀が出された。
沖縄の郷土料理で豚肉や野菜などを全部短冊に切って、砂糖で甘く味つけた汁料理である。しかしその甘みは現代では重い。そのため砂糖は使わず、久米島の白味噌に西京味噌の甘みだけを加えて仕立てられていた。ほっと心を撫でるような甘さである。そこには、やんばるの地鶏と合鴨を合わせたつみれに、近江蒟蒻、恩納産しいたけ、かまぼこが細切りにされ、からし菜、溶き辛子が添えられる。それは、うちなんちゅうでもないのに、どこか懐かしく感じる味わいだった。郷土の伝統料理は残していかねばならない。しかし、本当に料理を残そうと思うなら、伝統のやり方を深く理解しつつ、新たに翻訳しなければならない。伝承と伝統は違うからである。伝承とは、既存のやり方をそのまま受け継いでいくものだが、伝統とはその文化に敬意を払いつつ、ユーザーの指向をキャッチして、現代の手法でより良くなるなら、新たなやり方でやっていくことである。ある意味モダンナイズすることが必要なのではないだろうか。「シラカチ」で始められた琉球懐石には、その風が吹いている。その後は、様々な野菜などと合わせると、表情が変わる中トロやコウカ、ミーバイの「お造り」。紅麹の熟れた塩気がフォアグラの脂の香りと牛肉の滋味を盛り立てる「沖縄産黒毛和牛とフォアグラの紅麹風味焼き」。イラブの出汁が、どこまでも滋味深い「てびちとイラブの玉地蒸し」など、伝統料理や食材に新たな工夫を加え、洗練された郷土料理として生まれ変わった皿が、存分に楽しめる。考案したのは、沖縄出身の料理長嘉数順(かかず じゅん)氏である。嘉数氏は泡盛マイスターの資格もお持ちで、このモダン琉球和食をいただきながら、お勧めの泡盛をいただくのも素敵である。最後の食事は、沖縄パインを食べさせながら育てたスッポンを使った丸雑炊であった。このスッポンは臭みがなく、素直な味わいで、特有の深い旨味が米と抱き合って、溜息が出るような旨さをもたらす。まさに、元気が出るホテルにふさわしい料理である。沈みゆく夕日を眺めながら、いただく新琉球料理の幸せを、どっぷりと堪能した。翌朝は「オールデイダイニング セラーレ」の緑に囲まれたテラスで、海を望みながら朝食ビッフェをいただいた。数々の沖縄料理や沖縄そばなどの郷土色を盛り込んだビッフェが楽しい。日中は、プールや海に浸かりながら過ごし、プールサイドバーでビールと軽食をいただく。再び夕刻がやってきた。本日は「シラカチ 鮨」である。
沖縄で鮨というとあまりイメージがないが、この店はリピーターが多いという。僕もいただいた後に、思わず言ってしまった。「もし近所にあったら、通ってしまいます」。いやこの店に行くために、ハイアットに泊まってもいい。
その理由は4つある。1つ目は、魚の質の高さにある。
料理長大東太(おおとうふとし)氏は、毎朝、豊洲市場と福岡長浜市場から魚を仕入れ、地元である広島からも仕入れているという。三重の胡麻鯖、北寄貝、毛蟹、瀬戸内の紫ウニ、熊本鱧、北海道キンキ、大分赤貝、長崎ヤリイカ、溶けるような穴子など、大都市に負けぬ質の高い魚を、的確に仕事をして寿司に仕立ている。2つ目は、大東氏の工夫にある。
例えば、北海道キンキは冬瓜、アーサーの香りと合わせ、 アーサーの中で泳ぐ姿が見えて、キンキって沖縄にもいたんだと錯覚させるほどの味に仕立ててある。また熊本鱧は、島ラッキョウと澄んだ魚出汁と合わせ、鱧と島ラッキョウの繊細な甘みと独特の香りが共鳴し合う。その他ヒラメに合わせた海ぶどうの対比的食感、ヒモを中にかまして握る赤貝、甘酢漬け求肥昆布を乗せたしめ鯖皮炙りの握り、すだちと握ったイサキの色っぽさなど、随所に独自の仕事が配されて、魚を引き立てる。
ここ瀬良垣に来ないと食べることが叶わない寿司である。3つ目は、日本酒の品揃えの見事さにある。
有名人気銘柄も揃えているが、奥播磨、十字旭、神亀など、太い酒質を持った酒が用意してあり、燗酒を頼めば、大東氏自ら見事な燗づけで出してくれる。日本酒好きなら堪らないラインナップだろう。そして4つ目は、大東氏の接客にある。
にこやかで柔らかく、説明もわかりやすく、魚への愛を感じる。初めてなのに、ずっとこの店に来ているかのような安心感がある。話を聞けば、リピーターのお客さんが多いという。その理由がわかった気がした。寿司を食べ終え、テラスに出て、夕陽が沈んだばかりの大海と空を酒と一緒に眺めた。たった数分しかないマジックアワーだという。太陽は、数分前に沈んでいる。だが空は、まだ別れを惜しみ、かすかな明かりを抱いている。温かき昼の恵みに心を震わせ、わずかな灯火をたなびかせる。だがその余韻も、やがて漆黒の闇に溶けていく。僕らはその時初めて、切なさを知る。「毎日表情が変わるんです。これを見ていたら何もいらない」。シラカチの料理長嘉数氏の言葉が、その時に蘇った。ここは、「穏やか」という言葉の真意を、考えさせられる場所なのだ。 ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄 沖縄県/恩納村 詳細情報はこちら  

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ハイアットリージェンシー瀬良垣アイランド沖縄
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4.5

1660件の口コミ
place
沖縄県国頭郡恩納村瀬良垣1108
phone
0989604321
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ルーム キングベッド 1 台

¥19,112

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2024/05/02 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/04/18

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