総支配人が語る、長崎のクラシックホテル「雲仙観光ホテル」の魅力


2021.11.11

一休コンシェルジュ

伝統を今に伝え続けるクラシックホテル。色あせることのない風格に、魅了される人も多いのではないでしょうか。そんなクラシックホテルの魅力を、インタビューを通してご紹介。
今回は、日本有数の温泉地として知られる九州の長崎・雲仙のシンボルでもある「雲仙観光ホテル」の総支配人・船橋聡子氏に、ホテルの魅力やおすすめの過ごし方、未来に向けての取り組みなど、幅広く語っていただきました。
※インタビューはオンライン上で行いました。1.コンセプト“新しくノスタルジア”を体現する陸上の豪華客船―「雲仙観光ホテル」の歴史を簡単にお聞かせください。昭和30年代当時の玄関までのアプローチ西暦でいうと1935年ですが、語呂でいうと和歴を使わせていただければと思います。
「雲仙観光ホテル」は、昭和10年10月10日午前10時に、国の国策ホテルとしてオープンいたしました。
幻になってしまいましたが「東京オリンピック」が開催されるということで、国を挙げて外貨獲得であったり、外国人誘致を目的として西洋式のホテルが必要になったり、そういった時代背景です。
風光明媚であり、当時は上海航路が非常に活発で上海からも簡単に入国できた雲仙の地に、ホテルが建てられることになったんです。
当時の鉄道省が主導で行われた工事であり、創業時は「県設雲仙観光ホテル」という名前でした。外国人に向けた「雲仙観光ホテル」の案内オーナーは大阪の「堂島ビルヂング」という会社ですが、当時「堂ビルホテル」という宿泊施設をすでに運営・経営しておりました。その手腕を買われた先代が、「雲仙観光ホテル」の運営・経営を任され、それが当館の始まりです。開業当時のロビー「堂島ビルヂング」はビル会社ですが、元は船会社でした。
船会社が始めたホテルということで、「雲仙観光ホテル」は客船をイメージして作られたという特徴があります。
大型の客船は、1カ月や2カ月を色々な方と一緒に暮らすという感覚ですよね。そんな“暮らすような寛ぎを持ってお客様を迎えましょう”というのが、創業当時のコンセプトの一つでもあります。今でも細やかなディティールの部分で、そういった所を表現しているんですよ。例えば客船の場合、食堂に行く時はステップを上がってお食事時間に入っていくかと思うのですが、それを表現しているメインダイニングに向かう階段だったり、天井の梁であったり。
また、17時30分のご夕食開始時間には、ドラを鳴らして「これからお食事の時間が始まりますよ」ということをお客様にお伝えするようにしています。―今も当時のコンセプトを大切にされているのはとても素敵ですね。開業後は様々な出来事を経て、接収の時代に入られるかと思います。接収が解かれた後の歩みをお聞かせください。雲仙カントリークラブ接収から解かれた後は、主に上海を周遊されていた欧米人の方々の避暑地として栄えました。その方々は本国、例えばイギリスやフランス、ドイツなどに長い時間をかけて帰るよりも、日本でヨーロッパを体感できる場所は雲仙の地だと考えていました。
ちょうど船の航路もあったということで、こちらに来られて1カ月、2カ月とご家族でお過ごしになられていたそうです。
ホテルの近くに「雲仙カントリークラブ」という、日本初のパブリックゴルフ場があるんですが、そこは今でも羊が放牧されていて、イギリスの湖水地方やアイルランドの景色を彷彿とさせる場所になっています。そういった所で欧米人の方々が郷愁に浸りながらゆっくり過ごしていらっしゃいました。
ダイニングホールは200畳程あるのですが、当時は社交ダンスのパーティーなどサロン的な交流の場として使われていたそうです。
私自身、ホテルが持つ最大の文化発信というのは、皆様の文化交流だと思っているのですが、そういったことが体現されていた時代ですね。―当時の方々も見たり触れたりしたであろう、歴史を感じられる場所を教えてください。歴史を感じるという観点でいうと、やはりバーが一番ですね。バーは創業当時から、全く設えが変わっていません。ダイニングの木の床や大階段の手すり、ランプなども当時から変わっていないので、ぜひ見ていただきたいですね。―当時の趣を感じられる箇所が館内の至る所に散りばめられているのですね。「雲仙観光ホテル」といえば、ウィリアム・モリスの壁紙を使ったお部屋も代名詞の一つかと思います。客室は何度かリニューアルをしているのですが、今のオーナーが15年程前のリニューアルで「お部屋の中もヨーロッパのようにしたい」と、自身が好きだったウィリアム・モリスのデザインを持ってきました。
一つとして同じ壁紙のお部屋はありません。それぞれにテーマがあって、「こういった方に使っていただきたいから、この壁紙」という形になっています。ですから、リピーターの方ですと「今度はこの色のお部屋がいい」ですとか、逆に「今回もこの色のお部屋がいい」などのご要望をいただくことも多いんです。2.ホテルの息遣いを感じながら、非日常の中で日常を楽しむ―壁紙でお部屋を選ぶのは、面白いですね。そんな「雲仙観光ホテル」を知り尽くしている船橋様ですが、館内で最も好きな場所はどこですか?実は、私自身が元々幼少期から家族と「雲仙観光ホテル」を訪れていて、その時に一番感銘を受けたのは、やはりロビーです。
ありきたりかもしれませんが、ロビーというのは、お客様が最初にホテルの空気を感じる場所です。お泊まりになる方も、そうではない方も含めてですが、今までの歴史の中で数多くの人々の足跡が、ロビーの床には刻み込まれています。
ロビーの中心にお花を飾っているのですが、その装花から滲み出る華やぎや、宮大工によって細工された手斧削(ちょうなけずり)の手すり、シンクの絨毯など、一歩足を踏み入れた瞬間にホテルが生きていると感じ、何人もの先人達が積み上げてきたものが一瞬にして頭を巡ります。
ですから私自身、今でもロビーでお客様にご挨拶する時が一番楽しいですし、心が沸き立ちますね。「ファシリティとしてはここ」というのは、やはりバーですね。アルコールをご利用されない方にも、ぜひ一度ご覧になっていただきたい場所です。
至る所に職人の魂が込められていて、例えば、床は1枚1枚素焼きしたタイルが埋め込まれています。全て手でパズルのようにはめ込んでいるのですが、どこを見ても同じものが一つとしてないんですよね。
そういった空間というのは、他ではあまり見られないものじゃないかと思っています。―先人達が心を込めて作ったものを現代でも見られるのは、感慨深いものがありますね。
歴史をたっぷりと感じられる「雲仙観光ホテル」ですが、クラシックホテルだからこそのおすすめしたい過ごし方を教えてください。私共のホテルは、“時を忘れて大自然と悠久の歴史の中に身を委ね、自分を解放してください”という意味合いで、お部屋に時計を置いていません。
ご存じの通り、このホテルは国立公園の中にありますので、大自然に囲まれて緑の中で深呼吸ができます。例えば、時間を忘れて自然と触れ合ったり、または2,000冊程蔵書のあるライブラリーで読書をしたり、「撞球室」でビリヤードを楽しんだり、バーでダーツをしたり……思い思いに過ごしていただければと思います。4、5年前に女性のお友人同士、連泊で来られている方がいらっしゃったのですが、ラウンジで何日もずっとおしゃべりをされていたそうです。ある日スタッフが「お天気も良いので、お出かけになるのもおすすめです」とご案内したところ、「ここでおしゃべりをするのが楽しい」と仰っていただいたというエピソードがございます。
その時にも思いましたが、我々が良いと思っていることが必ずしもお客様にとって良いわけではなく、非日常の空間で友人とゆっくりおしゃべりするという、日常のことをするのが寛ぎの一つなんだということを、改めて学びましたね。3.ホテルの語源でもある“人との関わり”を大切に100周年へ―ホテルを取り巻く環境が変化する中で、「雲仙観光ホテル」が行う未来への取り組みをお聞かせください。やはり、ホテルはホスピタリティ、ラテン語の“ホスピス”という意味合いがあって、相手の人の癒しになったり、心が沸き立つような発見があったり、明日への活力になったり、色々な意味で人と人とが交流する場所です。
現在「雲仙観光ホテル」は86周年ですから、後14年で100周年になります。100周年に向けて、ホテルが持つたおやかな部分というのを、人材教育として生かしていきたいと考えています。感染症対策のため、マスクを着用して演奏会を行っています。またこれは持論になってしまいますが、ホテルはビジネスである一方で、文化を啓蒙して文化芸術を創造していく使命があると思っています。
そういった意味で、これからも音楽の演奏会であったり美術展であったり、86年間の歴史の中で脈々と繋がれてきた文化活動を未来へと伝えていきたいです。そして建物に関しては、経年的な劣化というものはもちろんありますが、今現存するものは大切にメンテナンスをし、新たに作る部分に関しては、新しい技法を用いて作っていきたいです。
思考の部分に関しては“原点回帰”をコンセプトに、自分達で磨きつつ大型補修をしながら、未来へと繋げていきたいですね。船橋様が仰っていた、「ホテルは人と人との交流の場である」という言葉がとでも印象深かったです。
かつて欧米人の方々の心を癒していたように、これからの「雲仙観光ホテル」も、訪れる多くの人々に温もりを与え続ける存在になっていくのだろうなと感じました。**************
総支配人 船橋聡子氏 プロフィール名古屋市出身。スイスNSHドイツ語学科卒業。同Swiss Hotel Management School RGD 修了。大手シティホテル接遇部、外資系ホテル宿泊営業部、在外日系ホテル開業準備室にてゲストサービス基盤立上げ、マーケティング戦略広報に従事。また新聞社事業部にて国際イベント、エキシビション等の事務局マネージメントに携わるなど、国内外において皇族、各国大使等のVIP 接遇を始め、専門のマーケティング・ブランデイング戦略および広報を長年に渡り務める。2015 年12月雲仙観光ホテル総支配人、2020年4月代表取締役社長/総支配人就任 雲仙観光ホテル 長崎県/長崎・雲仙 詳細情報はこちら  

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雲仙観光ホテル
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4.5

193件の口コミ
place
長崎県雲仙市小浜町雲仙320
phone
0957733263
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