マッキー牧元の“宿・食探訪記”「箱根本箱」お食事編


2020.02.05

一休コンシェルジュ

多くのメディアに登場し、グルメ界では、言わずと知れたマッキー牧元さん。“美食”を求めてほぼ毎日、全国を飛び回る彼ですが、それと一緒に素敵な宿にも泊まられています。前回マッキー牧元さんは、箱根・強羅の宿、“本のある暮らし”を提案する「箱根本箱」に滞在した模様(お部屋編はコチラ)をお伝えしてくれました。今回は「お食事編」。美食家をも唸らせた「箱根本箱」一皿とは、必見です。この宿に来ないといただくことのできない、価値のある料理箱根本箱で、ディナーが始まった。コの字型カウンターのオープンキッチンの中では、佐々木祐治シェフが調理を始めている。
彼は、ミラノ「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」、青森県弘前市の「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」などで経験を重ねたのだという。
手元を見つめる真摯な眼差しと細やかに動く手先に、食欲が湧く。ビールで喉を潤していると、アミューズが運ばれた。
倒木をそのまま使ったような、細長い木製の器の上に盛られた、6種類のフィンガーフードである。
ジャガイモとマッシュルームのペースト。パセリを混ぜ込んだ衣で揚げたイカスミライスコロッケ。とろとろになった白菜の甘みとハムの塩気が合う、3時間ローストした白菜と生ハム。ガラスのボウルに入れられた柿のグラニテ。エゴマの葉の中に詰めた豚のリエット。タルト生地に、優しい甘みを滲ませる百合根のムースを詰め、香ばしい桜エビを乗せた料理を次々に食べていく。
様々な甘みと塩気、香りが交差して、胃袋を動かす。続いての前菜は、白子のグラティネであった。
セルフイユの根で作ったというソースに黒大根、スティックセニョール、オリーブの粉と香草オイルが添えられている。
珍しいセルフイユの根は、サツマイモのようなほのかな甘い香りを持ち、それが白子のねっとりとした甘みを優しく包み込んでいる。
思わず、気持ちが緩くなった。次は、「有機野菜のココット蒸し」である。
ストゥブの中に、北山農園の有機野菜が入れられている。
ウイキョウと人参の葉っぱ、インゲン、カリフラワー、黄人参、プチヴェール、黒キャベツ、細蕪、黒大根、サツマイモ、紫芋が、ぎっしりと身を寄せ合っている。
どの野菜も力強く、土と太陽の香りを放つ。
中でもカリフラワーが素晴らしかった。
普段は主張が弱い野菜だが、このカリフラワーには手応えがある。
丸い甘みが、噛むごとに滲み出してくる。
笑顔を生む力がある。4皿目は、「自家製タリオリーニ アカザエビ とフルーツトマト」であった。
ううむ、色っぽい。
アカザエビのしなやかな食感を噛みしだくと、繊細な甘みが溢れる。
そこにほのかな色気があって、濃いポモドーロソースの味わいとせめぎ合う。
そこへ、生のウイキョウのみずみずしくも爽やかな香りが抜けていく。
そのバランスが見事で、美しい。続いての肉料理は、「裾野ポークのカツレツ」ときた。
ピンク色に仕上がった肉の断面が、汗をかいている。
思わず喉がなって、たまらずかぶりつく。
豚肉は実にきめ細やかで、豚脂の甘い香りが口いっぱいに広がっていく。
添えられた、ビショップスクラウンという赤唐辛子の一種も、パイ生地を砕いた粉もアクセントとなって、豚肉を盛り立てる。ドルチェは、「蜂蜜とバニラビーンズジュレ、バルサミコでマリネしたイチゴ マスカルポーネのムース」が出された。
バルサミコの熟れた深い酸味と甘みが、苺のフレッシュな酸味と出会う瞬間がたまらない。
どの料理も、地元の凛々しい野菜、赤座海老、豚肉、果物を駆使した、この宿に来ないといただくことのできない、価値のある料理であった。地野菜による様々な野菜料理がいただけるのが嬉しい。翌朝は、同じダイニングで朝食をいただいた。
大きなガラス戸から差し込む陽光が、心地よい。
メニューは、掛川シバちゃん牧場のヨーグルト。マチェドニア。すりおろし人参ジュース。菊芋のポタージュ。4種の人参のキャロットラペ。カボチャとレーズンのサラダ。紫キャベツのサラダ。インゲンのトマトソースあえ。ポーチドエッグ。グリーンサラダに「ブーランジェリーヤマシタ」の天然酵母のパンが用意される。
地野菜による様々な野菜料理がいただけるのが嬉しい。人参ジュースで体をリセットし、ポタージュで心を温め、生野菜をムシャムシャと食べ、時折パンをかじる。
凛々しい野菜たちの味わいが、胃袋を脳を叩き起こし、本当の目覚めを連れてくる。さあ食後は、テラスでコーヒーでも飲みながら、読みかけの本を読もうかな。 箱根本箱 神奈川県/箱根 詳細情報はこちら  

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箱根本箱
place
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-491
phone
0460838025
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