かの葛飾北斎が逗留し作品を残したという、歴史と文化薫る長野県・小布施。名物の栗を使った和菓子が全国区の人気を誇る小布施堂を囲む界隈は「味わい空間」と呼ばれ、古くて新しい街並みが多くの旅人を惹きつけています。美術館のような品格と静けさに深く癒される「味わい空間」の一角をなす造り酒屋「桝一」は、創業250年余を数える老舗。山深い北信濃の地に訪れた客人は“まれびと”と呼び、主人は盛大にもてなしたとか。そんな真心と心意気を受け継ぐのが「桝一客殿」です。県内の砂糖問屋から移築した蔵をはじめとした、重厚な外観に歴史の深さを思わずにはいられません。ロビー付近に積まれた古瓦は、時代を経た建物を修復するためのものだとか。重ねてきた時間への誇りと愛着を感じます。歴史がにじむ外見と打って変わって、施設内はとてもモダンで洗練された空間。木材などの天然素材を基本にしながらも、シックな雰囲気はまるで美術館のよう。それもそのはず。設計を手掛けたのは、パークハイアット東京などにも携わった著名建築家・デザイナーのジョン・モーフォード氏。北斎よろしく、当地に滞在し基本設計を編み上げました。細部にまでこだわり抜いたからこそ、歴史ある木造建築と洋風のエレガンスが見事に調和しているのでしょう。客室はすべて、快適かつ利便性の高い洋室。高い天井が特別な開放感をもたらす「書斎型ツイン50平米」のお部屋は、その名の通りライティングデスクが備わっています。いつもと違う伸びやかな空間で、創作の翼を広げたり企画を練るのもいいもの。広々とした居間のソファーに身を委ね、ただ穏やかにまどろむのも素敵なオフの時間ですね。「リラックス型ダブル」は、蔵の風情を残す雰囲気たっぷりのお部屋。窓ガラスの向こうに見える手入れの行き届いた坪庭が、優しく目に映ることでしょう。清潔感あふれるファブリックやリネン、シンプルで品のいいインテリアに囲まれているうちに、心がすっと凪いでいくのを感じるでしょう。すべての客室に備わるガラス製バスタブの、比類なきデザイン美に驚くはず。木製では温泉のように見え、バスタブはシティホテル風で味気ない……。設計者のモーフォード氏が、特に心を砕いたデザインなのだそう。試行錯誤の末、ガラスとステンレスのコンビネーションによる美しいバスタブが生まれました。スペシャルなお風呂で、リラックスタイムを送るのもまた、この宿ならではの楽しみです。自由気ままな滞在で自分らしさを取り戻す宿に24時間使用できるライブラリーが備わっています。もともと江戸時代から文庫蔵として使われていた場所で、読書に耽るのも贅沢な過ごし方。
実は、街中にはライブラリー・オブ・ザ・イヤーの受賞歴もある「まちとしょテラソ」も。読書家なら両方に足を運び、読書三昧するのも、旅のいい思い出になりそうです。周辺の「味わい空間」へは、小径（遊歩道）が整備されています。敷地内をそぞろ歩く感覚で「北斎館」や「小布施堂本店」へアクセスできるのはとても便利。「桝一市村酒造場」では、美味しい地酒を買い求めるだけでなく、その地方ならではの「手盃（てっぱ）」と呼ばれる量り売り直飲も体験できます。酒蔵自慢のお酒全種を試飲できるのは、日本酒ファンならずとも試してみたいサービスです。お食事も、小径を伝って出かけましょう。人気の和菓子店「小布施堂本店」には、レストランが併設されています。「産地から王国へ」というコンセプトを掲げ、伝統的な地野菜を取り入れた、旬の味覚を楽しめるお食事が堪能できます。飾らない雰囲気の中で、信州大王イワナや信州ハーブ鷄を使ったカジュアルな和食がいただける「寄り付き料理 蔵部」もグルメ心が刺激されるお店です。江戸時代から酒蔵で働く蔵人たちがよりあい、酒を酌み交わしたという「寄り付き」らしい人懐っこさに、ほっこりすることでしょう。宿に篭って趣味の時間に没入するもよし。大切な人と語り合いながら、街を散策するのもよし。暖かな季節はレンタサイクルを借りて、少し遠出するのも探検気分で心が躍るもの。どんな過ごし方も、きっと心に残るスペシャルな思い出をくれるはず……。宿では親子の絆を深めてほしいと、添い寝であれば高校生までは無料という稀有なサービスも。多感な時期であっても、旅先の開放感や心弾む出来事が手伝って、いつもより会話が弾むのではないでしょうか。“まれびと”が我が家に居るような快適さで寛げるようにという意志を受け継ぐ宿は、自由な風をまとった新感覚の宿泊施設として、今再び旅人に愛されています。「桝一客殿」で、田舎らしいあったかいもてなしと、世界標準のスタイリッシュな快適さに優しく包まれてみませんか。 桝一客殿 長野県／小布施町 詳細情報はこちら
