進化する清澄白河。パンとコーヒーどっちも主役、が新しい「 B²」


2021.05.06

Harumari TOKYO

パンとコーヒーの相性の良さはいうまでもない。東京には高い技術を持つパン職人はもちろん、焙煎士やバリスタも数多く存在し、日々しのぎを削っている。しかし、どちらも本物の味を楽しもうとすると、ベーカリーとコーヒーショップ、別々の店に行くのが当たり前だった。ひとつの店で、両方がハイクオリティの美味しさで味わえれば最高なのに。そんな欲張りな願いを叶えてくれるのが、話題のカフェ「B²」だ。唯一無二! ベーカリー工場とコーヒー焙煎工場が一体化2015年のブルーボトルコーヒーの初上陸を機に、コーヒータウンとなった清澄白河。だが近年、幅広いジャンルの食クリエイターが集まり、常に目が離せない“美味しい”街のひとつとなっている。ミシュランガイドに掲載された中華レストラン、ナチュラルワインを堪能できる車庫を改装したビストロなど、フーディが熱い視線を送るグルメスポットが大人気だ。そんな清澄白河で今「天然酵母のパンと自家焙煎コーヒー」をコンセプトにしたカフェ「B²(ビースクエアード)」も注目を集めている。店舗があるのは、清澄白河駅から門前仲町方面へ続く清澄通り沿い。オープン時間はベーカリーカフェらしく、早めの朝9:00。開店から30分ほどして訪れてみると、店頭のカウンターにはすでに多くのパンが焼き上がっていた。地元客が続々と訪れては、パンとコーヒーを手に仕事場や自宅へと向かって行く。通りから一見すると、こじんまりとしたカジュアルなベーカリーに見えるが、店内には開放的な空間が広がる。中央に堂々とそびえ立つのは、巨大な焙煎機。それを囲むように、スタッフたちがコーヒーを淹れたりパンを包んだりするカウンターが並び、店の奥にはベーカー(パン職人)が黙々とパン作りに励んでいる工房も。隔たりなくすべてがオープンになったスタイルは、まるで工場のようなインダストリアルな無骨さを持ちながらも、壁には落書きがあったりイラストがあったり、随所にちりばめられた遊び心あるデザインに親近感を覚える。「清澄白河は、コーヒータウンであると同時に人気のベーカリーもたくさんあって、パン好きの方もとても多く訪れる街です。パンとコーヒーの相性の良さは誰もが認めるもののはずなのに、両方が確かなクオリティで楽しめる店って、まったくといっていいほどないんですよね」そう話すのは、店長の岡本成哉さん。B²はまさにそれを体現した店だという。20年以上の職人歴を持つベーカーが100%天然酵母で作るパンと、プロのバリスタが淹れる自家焙煎のスペシャルティーコーヒーが同時に楽しめる、ベーカリー工場とコーヒー焙煎工場が一体になったカフェだ。クラフト感が生む信頼。現場が見えるから、どっちも手に取りたくなる確かに今や東京には、行列ができるほど評判のベーカリーも人気のコーヒーショップもごまんとある。両方ある店も当たり前。しかしあくまでそれらは、どちらかがメインでもう一方はサブポジションということがほとんど。美味しいパンとコーヒーを求めて、それぞれのお気に入りの店をハシゴする人も多いだろう。B²では、パンもコーヒーもどちらも主役だ。コーヒー好き、パン好きのどちらかだけが満足できる場所ではなく、どちらも本物の美味しさであり、なおかつお互いの魅力を知る架け橋になりたいという。「プロの職人技をお客様にすべて見てもらうことは、僕たちが提供するもののクオリティの高さを証明すると同時に、パンにしか興味がなかった人がスペシャルティコーヒーにチャレンジしたり、コーヒーを飲みに来た人がパンを手に取ったりするきっかけになると思うんです」かくいう岡本さん自身も、店作りに携わる前まではコーヒーが専門分野で、パンに特別な興味はなかったのだとか。しかし熱意あるベーカーに出逢い、その技に触れて実際に味わってみると、美味しさの違いやパンの奥深さに驚いたそう。逆に店では、何度もパンだけを購入していた客が、ある時を機にコーヒーを購入するようになるのを目にすることも多いという。
「コーヒーは、できあがる過程や職人の技術があまり広くは知られていません。コーヒータウンと呼ばれる清澄白河でも、まだまだそう感じます。価値がわからないとどうしても手が出しにくい。だから僕たちは焙煎や抽出の様子をフルオープンにして美味しい理由を見せながら、そんな本物の味を気軽に手に取ってもらえるように、フレンドリーな店作りを心がけています」
客との間に壁ができないようカウンターの高さを低めにし、床はフラットにして客と同じ目線に立てるようにしているのもそのためだ。コーヒー好きもパン好きも満足させるクオリティ自慢のコーヒーは、産地や煎り具合ごとに8種類ほどをラインナップ。初心者からコアなコーヒー好きまで、なるべく客の好みに寄り添えるようにと、浅煎りから深煎り、ディカフェも揃える。もちろん、ハンドドリップのほか各種エスプレッソドリンクも、豊富な経験を積んだバリスタが美味しく淹れてくれる。一般的なカフェやコーヒースタンドではなかなか接することがない焙煎士と会話できるのも、この店の特徴のひとつだ。保存方法や飲みごろなどの確かな情報が直接聞けるのはありがたいし、ちょっとしたコーヒーの淹れ方のコツなどをレクチャーをしてくれることもあるという。一方で、常時50種類ほど並ぶというパンは毎朝店内の工房で焼き上げる。100%天然酵母を使い、北海道・帯広産の希少な小麦粉「はるきらり」をはじめ、もっとも小麦の味が生きるよう数種類の粉をブレンド。それぞれの生地に合わせてパンの中に入れるクリームやあん、サンドイッチに使用するレバーパテなどの惣菜まで手作りというこだわりようだ。パスタに使うデュラム粉を使ったパンは、コクのある香りとやや黄色い色が特徴。端切れがよいのに独特のもちっとした食感があり、噛むほどに味わい深い。「コーヒータウンというイメージが強いから、コーヒー好きだけが楽しめる街と思われる方も多いかもしれません。だからこそ地元の方はもちろん、どんな方にも気軽に立ち寄っていただける存在でありたいと思っています。もちろんコーヒーもパンも、コアなファンの方にも満足いただけるものを揃えています。僕自身もパンの美味しさを知って、パンと一緒に飲むコーヒーをより楽しめるようになりましたし、その逆もしかりだと思うんです」日常的に使える店でありたいからと定休日はなし。清澄白河でのカフェ・ベーカリー巡りのルートに組み込むにも、在宅ワークが続くご時世の朝ごはんやランチ、息抜きにも心強い。
今や清澄白河は、コーヒーだけを楽しむ街ではない。パンとコーヒーの美味しいマリアージュに出逢いに、出かけよう。取材・文 : RIN 

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B2(ビースクエアード)
place
東京都江東区深川1-9-10
opening-hour
9:00-18:00
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