最先端の公園。ニューノーマルな大人時間を過ごせる池袋の最新スポットに潜入


2020.09.30

Harumari TOKYO

未だ収束の兆しが見えない未知のウイルスによって移動を制限される状況が続くなか、身近な街への関心が増し、また三密を避けて楽しめる場所として今スポットライトを浴びているのが「公園」だ。公園にいち早く着目し、近年次々に先進的な取り組みや新しい過ごし方を提案している街が池袋である。家族連れや高齢者のための場所ではない、誰もが使える公園へ。池袋が新しく作ってくれたのは、大人こそ楽しめる場所だった。公園から街を変える。池袋の劇的進化の秘密池袋の公園……と聞くとちょっと悪そうな人々が集っているシーンを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。2014年には23区内で唯一の「消滅可能性都市」として選ばれてしまうなど、街のイメージはお世辞にも良いとは言えない状況だった。それを打破すべく、豊島区は持続発展都市を目指し、さまざまな街の再開発に着手してきた。
なかでも、「公園に集う人が街の雰囲気を左右する」ということに着目。公園は街の顔、文化の発信地であると捉え、2015年頃より池袋駅周辺にある東西合わせて4つの公園の整備に力を入れてきたのだ。
それぞれの公園は異なる特色を持つ。開放的な芝生が広がる都会のオアシス「南池袋公園」、ステージがあり、クラシックのコンサートなど本格的な芸術に触れられる「池袋西口公園」、アニメなど池袋カルチャーにどっぷり浸かれる「中池袋公園」、そして2020年7月11日にプレオープンし、地域のための公園を目指すのが「としまみどりの防災公園(愛称 IKE・SUNPARK)」だ。とにかく“暮らしと近くにある公園”「ここは元々造幣局の跡地だったんですが、区内にはない大きな緑地のある公園を作って欲しいという近隣の方の声が昭和の終わり頃から30年以上続きました。それがやっと形になった待望の公園なんです」。
そう語るのはIKE・SUNPARKの管理事務所の所長を務める村田尭弘さんだ。
地域の人の要望で実現し、地域のための、暮らしと近くにある公園をコンセプトに掲げる。
ピクトグラムをオリジナルで作成し、入りやすいよう見た目にこだわったトイレは女性トイレを多めに設置し、多目的トイレも2つ完備。失礼なようだが、公共施設とは思えないスタイリッシュな設えが並ぶ。まるでどこかのデパートにあるような授乳室におむつ交換台。ここには「男性も入室できます」と明記されており、昨今のダイバーシティにも配慮が感じられる。今や当たり前になりつつあることとはいえ、公共施設が堂々と宣言してくれることに時代の変化を感じる。
また管理事務所には8時から17時まではスタッフが、その他の時間帯は警備員が常駐し24時間体制で公園を見守り、安全面にも気を配る。さらに特筆すべきは公園での禁止事項を細かく設定していないこと。「◯◯禁止」というような公園でよく目にする立て看板のようなものもないのだ。
確かに、キャッチボール禁止・花火禁止・乗り入れ禁止……都内の公園はやたら「禁止」が多い。
「自由に遊べる公園が欲しいというのが街の人たちの声だったのでその要望にできるだけ添うように、具体的にやってはいけないことをあえて明記していません」とのこと。
施設を傷つけない・利用者や近隣の方に迷惑をかけない範囲で過ごし方は利用者の自由。今後、公園の利用状況に応じて変更する可能性はあるとのことだが、そのような公園は都内では意外に少なく、貴重な場所だ。街を守る防災公園としての役割もうひとつ、IKE・SUNPARKが近隣住民の声を取り入れて実現させたのが防災機能を備えることだ。
大規模災害発生直後は一時避難場所として、その後は物資の集積拠点としてヘリポートとなり、さらに豊島区へ物資を供給する物流の拠点として機能する。
公園を見渡すと、広い芝生広場のなかに木や大きな遊具などがない。これはヘリポートとしての役割があるからだ。結果としてそれは死角を作らず、見通しも良くしてくれているため安心できる。災害時に街を守るだけではなく、平時も人を守ってくれているのだ。飲み水としておよそ100トンが蓄えられている応急給水槽、断水しても排水として利用できる井戸ポンプ、災害用トイレや備蓄品を保管する防災倉庫など命をつなげてくれる設備に、深さ200メートルから地下水を汲み上げ消火に利用する深井戸、延焼を防ぐシラカシの木の並木は防火樹林になるなど周辺の木造住宅密集地で万が一の火災にも備える。公園から広がるコミュニティを作る新しい取り組みしかし防災公園を作っても、その存在を認知してもらわなければいざとなった時に意味がない。防災に関わるイベントを今後開催していく予定だというが、もっと日常的に公園を利用してもらい、防災設備があるということを知ってもらうため、人の動きを活性化させるようなソフト面の展開が充実しているのがIKE・SUNPARKの新しさだ。
その代表的な取り組みのひとつが9月1日にオープンした小型店舗、KOTO-PORTだ。
「公園に集う人々とコミュニケーションを取ってもらいながらファンを増やし、いずれは豊島区で実店舗を構えていただけるようになってもらえたらなと思っています」。
公園にお店があることで人が集まってくる。そこからコミュニティが広がり周辺地域が魅力的になっていく。そして魅力的な地域に人が集まり、また公園へと還元される。公園を介して生まれる人の輪が池袋自体のイメージをプラスに変え、訪れる人の雰囲気もポジティブなものとなり、結果として日々の暮らしの充実感や安心感を高めてくれることにつながる。地域のための公園を掲げるIKE・SUNPARKだが、それは決して近隣の人たちだけのものの公園という意味ではないのだ。大人も満足できる、公園内のグルメスポットKOTO-PORTでは現在4店舗の飲食店が出店中。
HIGUMA Doughnuts × SOUR the parkは学芸大学のドーナツ店と京都のフルーツサワー専門店がタッグを組み新規事業として共同出店。左:山梨の黄桃サワー(700円・税込) 右:ハニーマスカルポーネドーナツ(350円・税込)揚げたてで温かく、しっとりふかふかなドーナツに、フレッシュな桃を生搾りしたジューシーな桃サワー。桃はIKE・SUNPARKで12月から開催される予定のファーマーズマーケットに出店する生産者さんから買い付けているとのこと。大人も虜になるようなお店だ。ソルティチキンカレープレート(1,080円・税込)下高井戸で知る人ぞ知る間借りカレー店を営んでいたというプラマーナ・スパイスは今注目のスパイスカレー店。失礼ながら公園内によくある軽食のクオリティではない超本格派だ。グルメな店舗をラインナップさせているのもこの公園の新しさであり、大人を呼び寄せるポイントだろう。昼間はもちろんだが、お酒を扱う店舗が多いので夜の公園を楽しむのもおすすめだ。
実はIKE・SUNPARKには街灯がなく、植え込みにアッパーライトを埋め込んだり、ベンチにダウンライトを仕込んだりと照明にかなりこだわっている。昼の公園とはまた違った雰囲気が楽しめる。
幻想的な情景は都会のなかの公園だということを忘れさせるほど。しっかりいただける食事から小腹を満たすおやつ、リラックスできる癒しの一杯まで、密を避けながら日常を豊かにしてくれる新しいスペースの提供をしてくれる。KOTO-PORT以外にも12月のオープンを目指してさらなる展開を予定しているIKE・SUNPARK。
食べることから生まれる良いサイクルをテーマにテイクアウトも行う常設のカフェや毎週末開催することで日常的に公園へ足を運んでもらうきっかけを作りたいという想いを込めたファーマーズマーケット、また農作物への関心を培う場としてコミュニティガーデンも開く。ここでは実際に野菜を栽培したり、食育に関するワークショップを開いたり学ぶ場を設けるという。つながりを実感できる公園未知のウイルスの蔓延により、人との接触を極力減らさなければならない状況下に置かれている昨今。だがデジタル上では満たされない心の隙間に気づき始めている人も多いだろう。
リアルなつながりを実感でき、密を避けて過ごせるIKE・SUNPARKはニューノーマルな日常に彩りを添えてくれる最強スポットとなってくれるだろう。取材・文:森田文菜
撮影:きくちよしみ 

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東池袋四丁目
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東京都豊島区南池袋
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