“渋谷の観光案内所”。カオスなコーヒースタンドはディープな夜の入り口


2020.02.19

Harumari TOKYO

異彩を放つ、唯一無二の「コーヒースタンド」夜になるにつれて歓楽街のネオンが光り始め、なんともカオスな様相を見せる、渋谷の百軒店。行き交う人は歓楽街で働く人々から、外国人観光客、仕事帰りのサラリーマンまで実に様々な層だ。この場所は、「無料案内所」の跡地。現在は良質なコーヒーとコーヒーカクテルそして渋谷の街情報を提供するコーヒースタンドとなっている。中でも、外国人観光客の姿が目立つ。周辺の小規模な宿泊施設も近年増えてきたのが大きな原因だ。近隣に良質なコーヒーを提供してくれるコーヒーショップは意外とないため、さまざまな人たちに重宝され、異彩を放っている。一見するとバーのように見えるが、店頭にある黒板がアイキャッチとなり、人々が足を止める。店内はカジュアルなコーヒーショップの装い。外国人観光客が多いためか、英語のインフォメーションが多め。それが日本人の目には“かっこよく”映る。また、フライヤーやステッカー、アパレルグッズなども渋谷らしいストリート感溢れるデザイン。東京を代表するストリートカルチャーの街・渋谷らしさを存分に感じられるしつらえと無機質なデザインが、歓楽街とのギャップを見せてくれる。朝も夜も毎日通える、本格派コーヒーのクオリティ7時から23時と幅広いシーンを想定したオープン時間だが「18時以降は会社帰りの方が仕事終わりの一杯を、20時から22時くらいまでは飲み帰りの一杯を飲んで行かれる方が多いですね」と店長の吉川さん。3坪ほどの極小のスペースながら、本格的なコーヒーを淹れてくれる設備が整っている。その整理されたつくりはさながら飛行機のコックピットのようだ。エスプレッソマシンも完備、そしてコーヒーはハンドドリップで丁寧に淹れてくれる。コーヒーは海外で主流であるシングルオリジンの浅煎りにこだわる。オーストラリアのロースター“SINGLE O”と上品なフルーティさが特徴の“GLITCH COFFEE”から豆を仕入れる。月に一度の周期で前月と被らないよう吉川さんが豆をセレクト。毎日通ってもさまざまな味を楽しむことができる。
エチオピアの豆で淹れたコーヒーは飲みやすく、口当たりが優しい。なるほどこれはシメの一杯として飲みたくなる気持ちがわかる。カップと別容器とで出されるドリップコーヒー。時間の経過で風味が変わるコーヒーを楽しめ、満足度が高い。SHOTのもうひとつの顔は「コーヒーカクテルを提供するバー」。一番人気はエスプレッソマティーニ。海外ではメジャーなメニューだというが、日本でコーヒーショップでお目にかかる機会はそう多くない。「本当に美味しいコーヒーで作らないと飲みにくいんですよね」。3種類のリキュールに抽出したばかりのエスプレッソを加え、吉川さんがシェイカーを振る。ドリップコーヒー同様、ライブ感のある作成過程は飲む側のワクワク感を最大限に高めてくれる。グアテマラのコーヒー豆がトッピングされた芸術的な見た目。甘さがありまろやかな飲み口だが、一口で身体が熱くなるのを感じた。チビチビと揺れる泡を見ながら楽しみたいドリンクだ。多様な街・渋谷。夜こそカフェで、人間観察。コーヒーを淹れてもらっている間、百軒店通りを眺めていると個性豊かな人の流れに釘付けになってしまう。
「本当にいろんな人がいて…オープン当初はこの場所でお店をやっていけるのか不安だったんですよ。お客さまもなぜこんな所にコーヒー屋?と不思議だったと思います」。そんな話をしている最中にも踊りながら動画を撮影するyoutuberらしき外国人が現れた。ダンスを眺めつつ、出来上がったコーヒーを飲みながらスタッフの方と会話を楽しむ。テイクアウトでフラっと立ち寄ったつもりだったのに、会話や人間観察の沼にはまり、意外なほど時間が経っている。なんとも不思議なコーヒースタンドだ。SHOTでも配布している、タイムアウトの渋谷ガイドマップ。掲載されているSHOTの説明文にはこう記してある。“tourist-friendly cafe-bar.” このスタイルはかつての「無料案内所」ならぬ、「観光案内所」。そんな気持ちで立ち寄れるカフェだ。もちろん、一見さんにも常連さんにも等しくフレンドリー。目的・人種・年齢・性別など多様な個性を受け入れてくれる、東京らしい「SHOT」。渋谷の夜の帰り道、ふらりとコーヒー一杯しに寄り道を。 取材・文:森田文菜
撮影:きくちよしみ 

渋谷
place
東京都渋谷区渋谷2丁目

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