ワーカーたちの日常に“ちょうどよく”溶け込む「Lit COFFEE&TEA STAND」(芝公園)


2020.02.05

Harumari TOKYO

東京屈指のオフィス街でありながら、近くには昔ながらの商店街や緑豊かな公園を有する芝公園エリア。普段は落ち着いた様子の街も、ランチタイムともなればたちまち周辺のビルからワーカーたちが現れ、賑わいを見せる。
そんな彼らがこの街に望んでいたであろう店が、2020年のスタートと同時にオープンした。大手チェーンでもやたらとハイブランド志向でもない、毎日気軽に使えて十二分に心を満たしてくれるカフェ、「Lit COFFEE&TEA STAND」だ。Litが店を構えるのは、町中華や定食屋が軒を連ねる芝公園ワーカーたちの定番ランチスポットの一角。店内はコンクリートを基調としながらも、テーブルや天井など随所に白木が取り入れられ、クールさと和らかさが調和する。ひとりでもグループでも気兼ねなく入れる20席ほどの広さも、居心地の良さをつくり出している要素のひとつだろう。どこか和洋折衷な装いとともに気になったのは「COFFEE&TEA」という店名だ。昨今、スペシャルティコーヒーに特化したコーヒースタンドや本格茶葉を扱う日本茶カフェは珍しくないが、“どっちも”とはどういうことだろう?
メニューに目を移すと店名に偽りなく、アメリカーノにフラットホワイト、ラテなどの各種エスプレッソドリンクが並ぶ一方で、煎茶や抹茶ラテなどの日本茶メニューも。コーヒー豆は金沢の「Sunny Bell Coffee(サニーベルコーヒー)」、茶葉は「カネ十農園」からと確かなクオリティのものが揃っている。「僕たちの目的は、スペシャルティコーヒーや日本茶の文化を根付かせることではありません」。と、取材に応じてくれたのはマネージャーの吉田直矢さん。「シンプルに、“街の人の『日常にあったらいいな』がある店”がコンセプトです。周辺で暮らしたり働いたりする人たちが毎日使える、生活に馴染んだ店でありたいと思っています」。「毎日来る」と想像したとき、「多くの人が毎日欠かせないものといえば、やっぱりコーヒーだよね」「家で急須で淹れることはなくても、なんだかんだでみんな日本茶はコンビニで買うよね」。そんな考えから「だったらどっちも欲しいよね」という答えにたどり着いたのは、自然な流れだったという。いわれてみればごもっとも。たとえば、豆の産地にこだわるほどの大のコーヒー好きでも、出勤前にコンビニでペットボトルのお茶を買ってデスクに常備していたり、逆にコーヒーマニアではないが、ランチのあとには必ずコーヒーを飲んだりと、シーンに応じて様々な採り入れ方をしているはずだ。「でも、普段飲んでいるコーヒーやお茶って『この店で飲みたい』というより『オフィスの近くに大手コーヒーチェーンがあるから』とか『コンビニのお茶も十分美味しいし』とか、意識せずに手にしていることが多いと思うんです。もちろん、そういう楽しみ方があっていいと思うんですけど、心のどこかで『すごくハイブランドでも、どこにでもありふれているものでもない、“ちょうどよく”味もサービスも満足させてくれるものが日常にあるといいな』と思っている人は少なくないと思うんですよね」。Litのバリスタはネクタイとベストスタイル。ひとりのプロとして大切にしているという。この店でコーヒーやラテを淹れるのは、数々のラテアートの大会で受賞歴を持つキム・ソンヨンバリスタ。厳選したコーヒー豆や茶葉を使い一杯ずつ丁寧に抽出、ラテには美しいアートを施してくれる。しかし、やたらとそれをブランド化して高級感を打ち出すことも、専門的な用語を並べて質の高さをアピールすることもない。
どちらかといえば、“出勤途中に素直に「ラテが飲みたい」とオーダーをしたら、思わず美味しいものに出会えて嬉しくなった”。そんな感覚だ。店の扉を開けた瞬間に、一流バリスタの彼が満面の笑顔で「こんにちは!」と声をかけてくれるのも実に気持ちがよく、「また明日も寄りたいな」と思える。イートイン限定の各種ホットサンドはオーダー後に調理。できたてのサンドイッチの美味しさは格別!た、ワーカーにとってランチは仕事の合間の大きな楽しみのひとつ。中には、本当は美味しいコーヒーを飲みたいけど、コーヒーショップではちゃんと食事ができないから、ランチを優先しコーヒーは適当なもので済ませてしまうという人もいるのではないだろうか。「やっぱりお昼時にはしっかり食事もしたいだろうな、と」(吉田さん)。食事メニューも特別豪華なものではなく、誰もが手に取れるサンドイッチ。ただしすべて店内で手作りし、工夫を凝らしたオリジナリティあふれるものを揃える。「ほうじ茶エスプレッソラテ」(手前)と「スペリオールラテ」(奥)。“スペリオール”はイタリア語で“スペシャル”という意味。Litにあるのは、コーヒー、お茶、サンドイッチ。そして数種類のソフトドリンクやアルコールとケーキ。そう、決して特別なものではない。目の前にはコンビニ、すぐ近くにも大手コーヒーチェーンがあり、ただお腹を満たすだけなら同じものをそこで賄うこともできてしまうだろう。しかしそんな当たり前のものだからこそ、産地や生産者によるコーヒーやお茶の味の違い、プロのバリスタが仕立てるフォームドミルクの甘み、手作りサンドイッチにつまったアイデアなど、確かな美味しさやちょっとした発見を与えてくれるものだったら、1日を少し豊かにしてくれるのではないだろうか。親しみあるものから得られる、毎日の“ちょうどいい”幸せがLitにはあるのだ。店を出すのにオフィス街を選んだのも、休日に他の街から人が集まるような繁華街でトレンドになりたいわけではなく、あくまでこの地で過ごす人々の生活に溶け込むため。店の前を通るたびに、ガラス扉越しに挨拶をしてくれる街の人の姿が嬉しいと吉田さんは話す。「みなさんの声に寄り添いながら、少しずつこの街に馴染んでいきたい」。善は急げだ。まだ様子をうかがっていたという界隈のワーカーは明日にでも早速、立ち寄ってみてはいかがだろう。これからは少し、職場に行くのが楽しみになりそうだ。取材・文 : RIN 

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LIT COFFEE&TEA STAND(リト コーヒー アンド ティー スタンド)
place
東京都港区芝2-15-15 ラディーチェ芝 1F
phone
0367220038
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