新しい“好き”を探しに。渋谷パルコに誕生した映画館で過ごすひとり時間


2019.12.29

Harumari TOKYO

新生渋谷パルコにオープンしたミニシアター
WHITE CINE QUINTOって、どんな映画館?映画を観る。ひと昔前は、映画は映画館で観るか、VHSやDVDをレンタルして家で観るか、大きくわけてその2つの選択肢だった。時代は変わり、今は配信サービスの普及によって、電車の中でもカフェでもどこでも観られる、場所を問わずに楽しめる手軽な娯楽となった。それでもやっぱり映画館で観たくなるのは、大画面の迫力だったり、音響を身体で感じたり、1つの映画を何十人何百人の人と同じ空間で感動を共有する体験だったりする。けれど老舗の映画館はどんどん姿を消していて、この10月にも有楽町スバル座が惜しまれつつ75年の歴史に幕を閉じた。そんななか11月22日、新生渋谷パルコの8階に「WHITE CINE QUINTO(ホワイト シネクイント)」がオープンした。名前のなかに「CINE QUINTO」とあるように、「シネクイント」の姉妹映画館となる。もともと旧渋谷パルコに入っていたミニシアター「シネクイント」は、ビルの建て替えのため渋谷ロフト隣に移った。そのシネクイントに続く映画館が「WHITE CINE QUINTO」だ。映画をどんな環境で観るか
映画を観てどう過ごすか個でも映画を楽しみやすい印象があるミニシアター。「WHITE」とつくこのミニシアターは、どんなコンセプトのもと作られたのか──パルコのエンタテインメント事業部(映画チーム)のチーフプロデューサー、堤氏に話を聞いた。WHITEには「新しい発見、可能性、才能、楽しみ方、そして無限に広がる無垢な場所という意味が込められている」そうだが、シネコン全盛期の昨今にミニシアターで勝負する、しかも「WHITE CINE QUINTO」のスクリーン数は、1スクリーンのみ(108席+車椅子スペース1席)。そこにどんな挑戦があるのだろうか。「基本的にシネクイントもWHITEもミニシアターであることは同じですが、WHITEのコンセプトとしては、渋谷パルコに来るお客様に向けた作品やイベントを選んでいきたいと思っています。以前は、シネコンとミニシアターには(上映作品において)見えない線引きがありましたが、最近はなくなってきました。要は、シネコンでもミニシアター系と言われる作品を上映するようになってきた。ですから、自分たちの上映したい映画をどこまで独占的に上映できるかが課題ではありますが、現実的に独占は難しくもある。だからこそ、渋谷パルコの客層が観たいと思う映画、興味を持つ映画をしっかり選んでいきたい」IMAXも4DXもないけれど
ひとりのスペースが贅沢で見心地がいい!「WHITE CINE QUINTO」の位置づけとしては、渋谷の街にある映画館というよりも、渋谷パルコという小さな街のなかにある映画館といった感じだろうか。実際、渋谷パルコを構成するのは「FASHION」「ART&CULTURE」「ENTERTAINMENT」「FOOD」「TECHNOLOGY」の5本の柱で、193もの個性あふれる魅力的なショップが出店している、まさに小さな街のようだ。ターゲットは「ノンエイジ」「ジェンダーレス」「コスモポリタン」。そのターゲットにぴったりな映画が「WHITE CINE QUINTO」のオープニング作品として選ばれた。世界的芸術家・草間彌生の人生を追ったドキュメンタリー『草間彌生∞INFINITY』だ。Artist Yayoi Kusama drawing in KUSAMA – INFINITY. © Tokyo Lee Productions, Inc. Courtesy of Magnolia Pictures.「草間さんをよく知っている世代は少し上の世代かもしれませんが、知っている人も、知らない人にもぜひ観て欲しい映画です。若者には、あの水玉は何だ? と興味を持って欲しい。そして、劇場から出てくるときに、お客さんが会話をしながら出てくるような、語りたくなる作品をかけていきたいですね」映画館内の特徴については「この映画館はIMAXも4DXも入っていませんが、そのぶん、映画館での過ごしやすさ、映画の見心地の良さ、快適なスペースを追求しています」というように、ひとりの座席スペースがかなり広い。 座席に座っている状態で目の前を人が通っても通路には余裕があり(身長150cmの私は脚を思いっきり伸ばしても前の席に届かないほどゆったり!)、肘掛けやドリンクホルダーは隣の席と共有するタイプが多いなか、この映画館のシートは隣の人を気にしなくていい造りになっている。ひとりで映画の世界に没入するにはこれ以上ない空間だ。また、ミニシアターだからこそ「さまざまなイベント上映も展開していきたい」と、スクリーン前にはステージもある。オープニング作品は『草間彌生∞INFINITY』
今後、上映作品はお客さんによって変化していく『草間彌生∞INFINITY』に続く上映作品は、デザイナー三宅一生のショーの製作現場を記録したドキュメンタリー『PLAYGROUNDS Stories behind HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE』や、矢野顕子の“一発録”レコーディングを追いかけた伝説のドキュメンタリー『SUPER FOLK SONG ~ピアノが愛した女~ [2017デジタル・リマスター版]』、ほかにも『森山直太朗 人間の森をぬけて』(コンサートツアー)、再開発が進む渋谷を舞台にした青春映画『転がるビー玉』、ワムの名曲を題材にしたアメリカ映画『ラスト・クリスマス』などがラインアップされている。「映画館自身がカラー(特色)を出すよりも、やって来るお客さんによって映画館が変わっていく、それがこの映画館の特徴のひとつになればいい」と堤氏。何色にも染まる色=WHITEが名前に入っているこの映画館が、さまざまな情報と人が集まる渋谷の街で、どんな映画館として色を発していくのか楽しみであるのはもちろん、この渋谷の街に来れば自分が“好き”だと思える新しい“何か”と出会えるのではないか、というワクワクする街と同じように、このミニシアターも自分の“好き”を探す場所のひとつになるのではないか、そんな場所になってくれることを期待している。 取材・文/新谷里映 

WHITE CINE QUINTO(ホワイトシネクイント)
rating

4.0

1件の口コミ
place
東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ 8F
phone
0367127225
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