酒蔵とカフェの共通点とは? 蔵元とバリスタが大切にしていること


2019.09.02

Harumari TOKYO

酒とコーヒー。一見かけ離れた飲み物だが、コーヒービールやアイリッシュコーヒーなど酒とコーヒーを掛け合わせたドリンクは数多い。現に、坂尾さんは「ONIBUS COFFEE」にてコーヒービールを、茂吉さんはオリジナルコーヒー「モキチブレンド」を発売しており、親和性の高い飲み物だとわかる。そこで、坂尾さんと熊澤さんのつくり手そして経営者としてのこだわりを伺ったところ、おふたりの共通点を発見した。美味しい食がある場所は、人が集う――そもそも酒とコーヒーは、人が集まる場所にあるイメージ。飲むタイミングは違えど、ひとつのコミュニケーションツールだという共通点がありますよね。坂尾さん:そうですね。カフェは世界中どの地域に行っても一軒はあるもので、店員さんやお客さんとコミュニケーションすることで、いろいろな情報が集まる場所。僕がこの世界に入ったのも、バックパッカー時代に訪れたカフェで、「ここは行くべきだよ、あそこはおもしろかったよ」と、カフェにいる方たちが、見ず知らずの僕に、次へ進むヒントを与えてくれたことが嬉しくて、僕もそんな場所をつくりたいと思い、カフェをオープンしたんです。熊澤さん:僕もカフェが好きで、実は熊澤酒造もカフェを意識しています。というのも、僕は、那須高原の山奥にある「SHOZO CAFE」に衝撃を受けて、酒造人生がスタートしました。ひとつの場所に、カフェや洋服屋、古本屋、ライブハウスがあって、人が集まる。まさに熊澤酒造が目指すイメージに近かったんです。――その熊澤酒造が目指したイメージとは?熊澤さん:酒造所の多くは、ただお酒をつくる工場ですよね。しかし、熊澤酒造が創立した明治5年まで歴史を遡ると、酒造所は地域のハブであり、住民たちの憩いの場でした。当時は役所も、喫茶店も、車もない時代。仕事終わりに徳利を持ち寄って、みんなでお酒を飲み交わし、家主は自家製のおつまみを出して、最後は酔い覚ましの熱いお茶を出して解散。それがいつの間にかお店が増えて、地域のハブとしての存在感が薄くなってしまった。僕はその酒造所の本来の姿を取り戻すために、さまざまな仕掛けをつくっています。坂尾さん:人が集まると、街が変わるといわれていますが、飲食店としても理想的な姿ですね。熊澤さん:そういった理由もあり、湘南唯一の蔵元である熊澤酒造は、より長く在り続け、湘南の食文化を象徴する場所でいたいと思っています。そのために原材料や味はこだわらざるを得ないくらい大切なこと。特に良い日本酒の要となる、米の選定には注力しています。湘南地域の水田の減少を食い止めるため、7年前から地元の米開発プロジェクトを始動。本当にいい日本酒をつくる米をつくり、湘南の食文化の発展に貢献できるよう尽力しています。坂尾さん:湘南のお米をつかった日本酒、とても興味深いですね。僕も毎日飲んでも飽きない美味しいコーヒーを提供するため、製造方法や原材料には強くこだわっていて、コーヒー豆の原産国まで足を運び、自分の目で確かめることも多いんです。しかしいかんせん遠いので、頻繁に行くことはできない。そこでコーヒー豆と製造方法が似ている日本酒の酒造所へ、醸造方法などを勉強しに行くこともあるんです。発酵によって味わいが変化する発酵科学はおもしろくて、自分たちの発見にもなりますね。人が集まる場所であり続けるために、生産者とのコミュニケーションを大切にし、本当のおいしさを追求しているおふたり。最後に、これからのコーヒー業界、酒類業界を担っていくうえで、目指すべき未来像を伺った。坂尾さん:僕らの仕事は単純で、毎日お客さまが当たり前に来てリラックスできる場所をつくること。仕事中も、親しいお客さまと何気ない会話をしているときがいちばん幸せなんです。今後もお客さまの声が届く範囲で、自分たちのやりたいことやっていきたいと思っています。熊澤さん:現在のテーマである湘南らしさと酒造所の本来あるべき姿の融合を実現させて、熊澤酒造を次の代へとつなげていきたいですね。2018年11月には、従業員の子どもも預けられる保育園を開園しました。熊澤酒造の理念や価値観を空気のように吸い込んで成長した子どもたちが、いつか入社して、ここで働いてくれたら、僕がおじいさんになったとき、満足して死ねるんじゃないかな(笑)。まだまだ先の話だからわからないですけどね。オーナーの人柄がお店に反映すると言われるが、熊澤酒造の見学と熊澤さんのお話を伺ったことで、より強く実感することができた。酒造所の多くは、見学を行なっているので、蔵元の成り立ちや思いなどを質問してみても楽しいだろう。ストーリーを知った上で飲むお酒はきっともっとおいしく感じるはずだ。<プロフィール>(右)坂尾篤史
1983年生まれ。千葉県出身。約1年間のオーストラリアでのバックパックにてカフェの魅力に取りつかれる。帰国後、バリスタ世界チャンピオンの店で経験を積み、2012年に独立。2016年1月には4店舗目となる「ONIBUS COFFEE」中目黒店をオープンした。(左)熊澤茂吉
1969年生まれ。神奈川県出身。早稲田大学教育学部に入学。卒業後、アメリカ留学を経て、祖父が経営していた熊澤酒造を継ぎ、日本酒の新ブランド「天青」や地ビール「湘南ビール」などを開発。 

read-more
熊澤酒造(株)
place
神奈川県茅ヶ崎市香川7-10-7
phone
0467526118
すべて表示arrow
no image
ONIBUS COFFEE Nakameguro(オニバス コーヒー ナカメグロ)
rating

4.5

29件の口コミ
place
東京都目黒区上目黒2-14-1
phone
0364128683
opening-hour
9:00-18:00
すべて表示arrow
no image

この記事を含むまとめ記事はこちら