ここにしかない、絶対的価値。「Salmon&Trout」でただ目の前の料理を楽しもう


2019.07.24

Harumari TOKYO

ちょっと食に興味のある東京人なら、「Salmon&Trout(サーモン アンド トラウト)」という店の名を一度は耳にしたことがあるだろう。最寄りの下北沢駅からは歩いて10分ほど。茶沢通り沿いにある赤い鉄扉が目印だ。和食料理人と共に始動した、新生サモトラ「サモトラ」の愛称で親しまれている同店が、2019年6月、リニューアルオープンした。これまで厨房を担ってきた森枝 幹シェフに代わり腕を振るうのは、中村 拓登(なかむら たくと)シェフ。都立大学「八雲茶寮(やくもさりょう)」で副料理長を務めていた、和食料理人だ。アメリカンヴィンテージを思わせるガレージ風のカウンターは変わらない。ここに、和食料理人が?これはなかなかおもしろくなりそう。
これまで、美味しさは大前提としながら、ジャンルにとらわれず自由な発想と遊び心のある料理の数々で、「食べることって、楽しい!」を表現し続けてきたサモトラ。訪れた人だけが体感できる、食の楽しさがここにはあった。それを今度は和食とペアリングで表現しようというらしい。相変わらずの人気ぶりで、連日予約はいっぱい。アメリカのロックバンド“グレイトフル・デッド”の熱狂的な愛好家「デッドヘッズ」にちなみ、「サーモン・ヘッズ」と呼ばれる客たちが毎晩集まって来る。コースは8,000円、アルコールペアリングは5,000円メニューは全10品ほどのおまかせコースのみ。コースに合わせたアルコールかお茶のペアリングも備える。料理の一覧はないので、何が出てくるかは正真正銘、皿が運ばれて来てからのお楽しみだ。この日のスターターは「トウモロコシの白和え」。ペアリングの微発泡のナチュールワインと供に現れた「白和え」は、かき揚げにされた旬の甘いトウモロコシにフェネグリークとナツメグを振りかけ、和え衣が添えられている。確かに、和食だ。それも、シンプルに旬の素材の美味しさが引き出された正統派の和食。だが、白和えをかき揚げで表現しスパイスとかけ合わせることも、コースの出だしから揚げ物を出すことにも、ちょっとした遊び心を感じる。スパイスが香るかき揚げを豆腐の和え衣にディップし、ワインをクイッと。バーでフィッシュアンドチップスをつまむのと似た感覚を覚え、「なるほど!」とこの料理が今の季節のスターターであることに納得する。と同時に、そんな気づきが楽しい。ティーペアリング(5,000円)ではヴィンテージものの中国茶のほか国産ウーロン茶などが楽しめる中村シェフ曰く「メニューは、その時季に食べたいと思うもので構成します。それから、食べ疲れないこと。最後まで美味しく食べられて、食べ終わった後に『気持ちいい』と思ってもらいたいですね」。中盤には、そうめんカボチャとスイカの果汁でスープのように仕立てた一皿を挟む。トマトの甘酸っぱさが加わったスイカの果汁と瑞々しいそうめんカボチャの組み合わせは、優しく繊細でありながら全身で夏を感じられる。終始、いわゆる超高級食材が飛び出すこともなければ、特別豪華なスペシャリテが登場するわけでもない。だが、食べ方だったり組み合わせだったり味わいだったり、一皿ごとにちょっとした発見やアイデアがちりばめられ、旬の美味しさの中でそれを見つけられると、ちょっと嬉しくなる。料理は、自分で感じてこそ楽しいオーナーカヴィストの柿崎さんはいう。「お酒も食材もすごくいいものを使っています。でもそれは、本場フランス産のトリュフだの北海道どこどこ産の高級ウニだのと、ブランド化されたものという意味でも、何かの金賞やランキング1位を獲ったとか、他人の評価で価値をつけられたものでもありません」。例えば、日本のごく限られた地方でしか食べられない完全魚食の淡水魚“ハス”、20年以上前から独自に環境保全を考えた漁を行う鳴門の漁師から直接仕入れるスズキ……。大事にするのは、他人が作った評価要素や求める基準に合わせるために、自分の思想や自然のサイクルを曲げることなくものづくりをする生産者。「風土に根付き、自身の哲学を貫きながら絶対的価値を作り上げる人を尊敬しています」。ここに集まるサーモンヘッズたちは、食材のブランドに価値を求める人ではなく、この店が表現する世界観や料理の楽しみ方に共感し、そこに絶対的価値を感じている人たちなのだろう。「やっぱり、サモトラは美味しくて楽しい」。この店は、何度来ても、そんな体験を与えてくれる。その楽しみは、料理を目にした時の第一印象から始まる。今回は
一部メニューを紹介しながら筆者の感想を述べてしまったが、できれば前情報は持たずにいた方がよりこの店を楽しめるだろう。どう感じるか、どう楽しむはあなた次第だ。ぜひサモトラスピリッツを自身で体感してもらいたい。取材・文 : RIN 

サーモン アンド トラウト
rating

4.0

9件の口コミ
place
東京都世田谷区代沢4-42-7 1F
phone
08048161831
opening-hour
月・木-日ディナー 18:00-24:…

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