週3日パンを焼き、他の日は畑仕事に出る。行列が絶えない、栃木県のベーカリーカフェ〈一本松農園〉とは?


2019.05.08

Hanako.tokyo

パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、自ら栽培した無農薬の野菜をパンやカフェメニューに仕立てるパン屋さん〈一本松農園〉をご紹介します。土をいじり、パンをこねる。ベーカリーの新しい姿。シェフの福田さん(右)と池田さん。手前カフェは左奥がベーカリーで、の扉から。その奥に農園の一部がある。11時半のカフェオープン時間には、続々と予約客が到着する。週に3日パンを焼き、他の日は畑仕事に出る。半農半パンのベーカリーカフェ〈一本松農園〉。古い家屋をリノベ、自ら栽培した無農薬の野菜をパンやカフェメニューに仕立てる。町から離れた田園の中、ここだけはにぎわい、行列ができている。それはなぜなんだろう。併設のカフェ〈蒔時〉。野花を飾り、益子焼でもてなす。地元産イチゴのスイーツも美味。自然が直接パワーをくれる野菜とパンの共通点。自家栽培農園福田大樹さんはパン職人になった途端、小麦アレルギーに見舞われた。パン職人生命に関わる困難。でも、そのことが、新しい扉を開かせた。「土に触ったり、屋外で陽に当たるといいと聞いて、農業をはじめました」
パンと農業。はじめてみると、通じるものがあった。「パンは自分が作ってるんじゃなくて、微生物が作っている。野菜も同じですね」酵母、そして土の中の微生物との共生。福田さんの中で、自然を感知する回路が開いた。「今日春になったんだって畑から教わる。土がしーんとしてたのがわーわー言いだすんです」「畑のサンドイッチプレート」1,080円 サバと宇和島産無農薬レモンをフォカッチャにはさんで。好きなパンを選べる。自ら作ったパンと野菜を盛る「畑のサンドイッチプレート」。食べ終えると、心の深い部分から感動が湧き上がった。収穫時期も自分で見定める。だから、スーパーでは決して売ってない野菜を出せる。「間引きの赤ちゃんにんじんや、ルッコラの花を使ったり。毎日味見をしてたら同じ野菜でも甘くなったり、苦かったり、味が変わるんです」「あんぱん」180円 自ら栽培した小豆で(北海道産の場合もあり)。あんぱんを、あんこの自家製どころか、小豆から自家栽培する。収穫、乾燥。福田さんのお母さんが、さやから一粒ずつ取り出し、選別、それからやっとあんこを炊く。まるで味噌のように濃密で力強い味わいは、たっぷりとかけた手間と愛情から生まれてくるものだ。すべて栃木県産小麦を使用。
「『身土不二』(土地のものを食べるのが体にいいという考え方)を心がけています。同じ空気、水で育つ、地元の作物が、いちばん体に合うのかな」ここに来ると、なにかいい気持ちがする。都会で縮こまっていた心が目覚め、生き生きしてくるように。きっと、福田さんをアレルギーから救ったのと同じ力をもらえたのだろう。〈一本杉農園〉自ら栽培した作物を使ったあんぱんやピーナッツコッペ。週替わりのカレーパンに、知り合いの生産者の小麦で作るカンパーニュ。カフェは混み合うので予約を。
栃木県鹿沼市西沢町380-2
080-3453-1205 鹿沼市
9:00(カフェは11:30)〜17:00 日月火水休
20席/禁煙池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog(Hanako1172号掲載/photo:Kenya Abe)前回のパン屋さん〈petit à petit〉はこちらから。
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一本杉農園
place
栃木県鹿沼市西沢町380-2
phone
08034531205
opening-hour
9:30-17:00
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