それぞれの形でスピリットを受け継ぐ、新顔喫茶へ、ようこそ。


2023.05.20

Hanako.tokyo

昭和を感じる佇まいや前店主の精神を大切に継承し、次世代が新たに発信する喫茶店が増えている。コーヒーの味や喫茶メニューも密かに進化。“新解釈”の喫茶店が今、最高に居心地がいい。ぱるふぁん[神戸]唯一無二の雰囲気に魅せられた姉妹が引き継ぐ円の空間。
外観、アーチを描く壁と天井、鏡、照明。全てが円で構成された空間は、1976年創業当時の姿を今に残す。
「丸のモチーフが大好きだった先代のオーナーが、建築家の天藤久雄さんに依頼して作ったもの。ほかにない唯一無二の雰囲気に感動して、たちまち虜になりました」と店主の増田比呂さんは振り返る。ところが姉の宮山友里さんと共に通い始めて6年が過ぎた頃、残念ながら店は閉店してしまう。
「テナントを募集しているのを知ったものの借り手は決まった後。とはいえ、この空間を愛する想いを伝えたくて、オーナーに取り次いでもらったところ、私たちに貸してもらえることになったのです」。そのエピソードからも姉妹の熱量が伝わってくる。宮山さんは当時、別に営んでいたカフェを畳む決断をし、〈ぱるふあん〉は閉店の2週間後に新たなスタートを切ることになったのだ。空間を構成するものは当時のまま。メニューはシンプルにし、“おしゃべりは控えめに”の文字が加わった。
「私が喫茶店で好きなのは、自分と向き合う時間が手に入れられるところ。大好きな空間で、そんな時間を過ごしてもらえたら」と増田さん。2代にわたる店主の想いが凝縮する、オンリーワンの場所がここにある。受け継いだものかつては白かったであろう壁も、経年の変化で飴色に。椅子はドイツ・フロトット社のスタッキングチェア。埋め込まれたスピーカーは時おりある音割れが、レコードの音を思わせる。カップ&ソーサーも先代から受け継いだもののひとつ。コーヒー豆は同じものを使用しつつも、一杯ずつハンドドリップするのが姉妹のスタイル。店名も同じまま。新たなエッセンス静かな時間のお供にと、壁面のニッチには本が置かれている。内装を際立たせるため、余計なものは置かない。丸い器で運ばれてくるコーヒーゼリー500円など、喫茶メニューは一新。ほかにサンドイッチなどもある。ぱるふあん2021年9月開店。阪神電鉄・高速長田駅からすぐの場所ながら、意外なほど静か。
住所:兵庫県神戸市長田区北町2-63 
TEL:なし 
営業時間:10:00〜18:00(17:00LO) 
定休日:月休 
席数:14席DORSIA(ドーシア)[神戸]偶然が重なり受け継がれたチェアと絨毯のブルーに感じる港町のノスタルジー。
建物の取り壊しで惜しまれつつ45年の歴史に幕を閉じた、神戸・花隈の喫茶〈セリナ〉。アールを描いた天井の装飾と鮮やかなブルーが印象的だった空間の、エッセンスを受け継ぐ形で継承したのが〈ドーシア〉だ。
「ちょうど喫茶店を開きたいと考えていたときに、理髪店だった今の物件を紹介されて。〈セリナ〉では同じタイミングで閉店を決めたと言われ、それならと家具を譲り受けることに」と店主は振り返る。望んでもなかなかないタイミングで、ブルーの椅子セットのほか、照明やゲーム機のテーブル、シュガー入れ、コーヒーグラインダーまでを譲り受けることになる。新しい空間に〈セリナ〉時代の一式がすっとなじむのは、かつてと同じブルーの絨毯が敷かれているから。経年によって存在感を増した椅子やテーブルが、たちまち店の雰囲気を作りあげたという。「ブルーのクリームソーダは〈セリナ〉のメニュー。フルーツサンドはコーヒー・喫茶店研究家の柄沢和雄さんによる昭和のレシピ本をもとにしたもの」と福田さん。もともと70年代80年代が好きというだけに〈セリナ〉が放っていた空気感は大切にしつつ、アーティストによるロゴやイラストで今っぽさを加えた。懐かしさと新鮮さの入り交じる加減が絶妙。受け継いだものブルーの座面の椅子が空間を引き締める。新調した絨毯は、鮮やかな色を受け継いだ。今は動かないというゲーム機のテーブルも、昭和の喫茶店ならでは。ときには〈セリナ〉店主夫妻が訪ねてくることもあるそう。新たなエッセンス喫茶店の雰囲気が漂う器。フルーツサンド900円、セリナクリームソーダ(青)600円。ロゴやイラスト入りTシャツは、現代美術作家・加賀美健や平山昌尚(HIMAA)、イラストレーターanccoによるものも。ドーシアブレンドコーヒー450円はマンデリンベースの中深煎り。マッチの先もブルー。トートバッグ各3,300円などグッズも充実。DORSIA2021年10月オープン。プリンなど王道の喫茶メニューが揃う。11時まではモーニングも。
住所:兵庫県神戸市中央区旭通3-1-29 
TEL:なし 
営業時間:8:00〜21:00 
定休日:無休 
席数:18席photo : Yoshiko Watanabe text : Mako Yamato No. 1220喫茶店に恋して。/道枝駿佑 (なにわ男子) 2023年04月27日 発売号一日一杯のコーヒーを素敵な喫茶店でゆっくりと飲めたら。今号では、喫茶のスピリットを受け継ぐ新店、本や音楽、器選びに空間づくり…店主の哲学が隅々までいきわたる「学び」のある喫茶店などを徹底ガイド。全国の心地いい空間とおいしいコーヒーで、あなたのオアシスになる一軒を見つけてみませんか。コーヒー好きも魅了する、新たな日本のお茶の世界を覗く第二特集も必見です。 もっと読む 

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DORSIA(ドーシア)
place
兵庫県神戸市中央区旭通3-1-29
opening-hour
8:00-21:00
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