世界一のパン職人がいるベーカリー〈Comme’N TOKYO〉へ。群馬から九品仏に移転、妥協のないパンが勢揃い。


2020.11.12

Hanako.tokyo

パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、8月に群馬から九品仏に移転してきた、世界大会優勝者・大澤秀一さんのベーカリー〈Comme'N TOKYO〉をご紹介します。劇場のようなオープンキッチン。大澤秀一さんの動きも間近で見られる。朝から夕方までノンストップでうつくしいフォルムのパンがたくさん並ぶ。店に入るや聞こえてくる「いらっしゃいませ!」の声。山のように積まれたパンからはオーラが発せられるかのようだ。彫刻のようにうつくしいクープ(パンの表面に入れられた切り込み)、神殿の階段のようなクロワッサンの層。この店には、まるでスタジアムのように、熱気が充満している。完全なるオープンキッチン。生地をこね、成形し、焼くまでの一部始終が、目の前で展開される。「お客さんが入ってきたときに、パン屋に入ってきたんじゃなく、厨房に入ってきたように感じてほしい。職人の一員になったような雰囲気を味わってほしかった。自分たちの仕事、息遣いを感じてほしい」と大澤秀一シェフ。昨年フランスで開かれた世界大会「モンディアル・デュ・パン」で総合優勝した、世界一のパン職人。正確ですばやい動き、体全体で刻むリズム。それは無言のうちにも若いスタッフを鼓舞し、売り場までパン作りのダイナミズムを伝えてくる。ジャンボンブール1,000円、ローストビーフとへしこサンド900円。サンドイッチはフレンチ出身のシェフが担当。メツゲライクスダのハムなど、最高の材料をはさむ。大澤さんが新店のモデルにしたのは、あの「奇跡のプレハブ」。喫茶店の駐車場に建てた、エアコンさえない練習場兼パン販売所のことだ。来る日も来る日も、寝食を忘れてトレーニングに没頭した原点の場所。戦いは終わり、行列はますます長くなっても、大澤さんは少しも慢心していない。クロワッサンA.O.P300円。世界一になったときと同じ製法。パン・ド・ミ400円。もちもちの食パン。高脂肪の北海道産バター使用で、風味のちがいは歴然。「僕にとってパン作りとは、ただただ必死にやることです。それ以外になにもない。必死にやってなかったらできないです。しんどい仕事だし、時間も長いし。お客さんと、パンと本気で向き合ってます。お客さんを満足させるより、世界一になるほうが簡単です。〝0・1〞個でも妥協したり、よこしまな思いで作ったらお客さんに伝わっちゃう。自分にも、スタッフにも一切妥協を許さないで作ってます」お客さんに少しでもおいしいパンを食べて楽しんでもらいたいと、今日も早朝2時から厨房に立ち、「いらっしゃいませ!」と声を出しつづける。〈Comme'N TOKYO〉8月に群馬から九品仏に移転してきた、世界大会優勝者・大澤秀一さんの店。ハード系やサンドイッチを中心に約50種のパンを展開。
東京都世田谷区奥沢7-18-5 1F
03-6432-1061
7:00~18:00 火水休
※イートインなし池田浩明(いけだ・ひろあき)/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblogpanlabo.jugem.jp(Hanako1190号掲載/photo:Kenya Abe) 

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Comme'N(コム・ン)
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3.5

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place
東京都世田谷区奥沢7-18-5
phone
0364321061
opening-hour
7:00-18:00
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