【僕はまだ死んでない】矢田悠祐×上口耕平インタビュー「今この瞬間を大切にしたいと思う作品です」
2022年2月17日(木)から28日(月)まで、東京 銀座・博品館劇場にて、ウォーリー木下さんが原案・演出を手がける舞台「僕はまだ死んでない」が上演されます。もし、自分の大事な家族が、友人が、最愛の人が、あるいは自分が、生死の境をさまよう事態になったら……? 終末期医療という、誰しもが直面する可能性が高いテーマに、実力派キャストが挑みます。本作で、主人公・直人役とその幼馴染・碧役を回替わりで交互に演じられる矢田悠祐さんと上口耕平さんに、お話を伺いました。
CONTENTS
- インタビュー
- 公演概要
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インタビュー
――まずは出演が決まられた時のお気持ちを教えてください。
矢田「3年ぐらいストレートプレイの舞台をやっていなかったので、久しぶりに自分の芝居だけで勝負する作品になります。それがまずは楽しみだなと思いました。それと、突然自分や身近な人が重い病にかかる、あるいは会話を交わすことが難しくなるというのは、誰しもに起こりうる可能性がありますし、考えないといけないテーマですから、そこに向かい合えるというのは、やりがいがあるなと思いました」
上口「僕もストレートプレイは久しぶりです。(2021年に配信された)VR演劇バージョンを見せていただいた時に、単純に、言葉がすごくリアルだと感じました。とても現実的で生々しい会話だなということをすごく感じて、そういった作品に参加することに緊張もしましたけれど、それよりも喜びの方が大きかったですね。こういう掛け合いに参加できるんだ、作り上げる日々が始まるんだということへの期待感が大きくて。テーマについても、一瞬で考えがまとまるような話ではありません。なので、出演が決まった時からテーマについて考える日々がスタートを切った感じでした。あと、僕らの仕事って出会いや縁が豊かになって成り立つものなので。矢田君やウォーリーさんはじめ、彩吹さん以外の方とは「はじめまして」でしたから、その出会いにすごく感謝しました」――お二人が直人と碧を回替わりで交互に演じられますが、どんなところが特徴的でしょうか。
矢田「一つの役について、二人で考えられるということですよね。一人だと煮詰まったり、考えが凝り固まったりとかもしちゃいますけど、二人だと口に出して話せますし、そうすることで腑に落ちることもたくさんあって。ディスカッションがしやすい環境であることは、すごくありがたいなと思います」
上口「矢田君といると自然体でいられるんです。矢田君と出会えたことは、とてもラッキーなことだなと思っています。そんな矢田君と演じる役について一緒に考えられることが嬉しいですね。稽古場に二つの脳があるようなイメージです。一緒に考えられたり、確認し合ったりできることで救われることも多いですし、吸収することも多いので。こういう企画はいいなあと思いました」
矢田「こうですかね?と聞いた時に、結構、同じ感覚を持ってらっしゃることが多くて」
上口「そうそう、多いよね」
矢田「そうすると、これでいいんだっていう自信にもなるというか」
上口「走り方はお互い違いながらも、並走して同じゴールを目指している感じがして、心地いいです。刺激もあるし、自分を鼓舞できる。矢田君がすてきなお芝居をした時には、一緒に走りたいですから」
矢田「あとは、先輩の持っているいいものを盗まないとなって(笑)」
上口「いやいやいや(笑) 役者ってもう、先輩とか後輩とか関係なくなるじゃない。実際は5歳差だよね?でもそう感じないですね、矢田君も大人なので」
矢田「同じ役をやっている時は同じ目線になれるというか、年齢差を感じなくなるというか」
上口「そうそう。この関係性が、いいなと思います」
――直人役を矢田さんが演じられる時と、上口さんが演じられるときでお芝居の流れや空気というのは変わるのでしょうか。
矢田「考えること、目指すことは同じでも、本人の持っている核の部分というんですかね、それが違うとやっぱり全然変わってくるんですよね。それが面白い所でもあります」
上口「そうだね。あとはウォーリーさんがおっしゃっていたのは、VR演劇版と何が一番違うかというと、ステージの真ん中に直人が実体として存在しているということだと。直人が舞台上に存在することで、お客様に届くものがあるとおっしゃっていたんです。僕らは最初、言葉も発さず動きもなく舞台上にいるということに壁を感じていたんですね。役者としてどうアプローチすればいいんだろうと迷うこともありました。でもウォーリーさんの言葉で、一つ答えが出たというか。直人として舞台上にいることで、周囲を動かしていく。ちゃんと影響を与えられるんだと気づいた時に、であれば、そもそも自分と矢田君とでは個体が違うのだから、そこに存在するだけで周囲への影響も変わってくるし、お芝居が変化していくんだと気づいて。それは発見でしたね」
――稽古場の雰囲気はいかがでしょうか。
上口「家族みたいな感覚に近いですね。とことん同じ感覚、ベクトルで作品に向かい合えていると感じています。会話をぶつけ合うだけでも刺激的だし、自分の中に生まれてくるものがあります。自由な空気の中で、真面目に、同じ方向を向いているなと感じます」
矢田「耕平さんがおっしゃったように、すごく自由な空気感です。毎回毎回いろいろな挑戦ができますし、それを許していただける雰囲気があります。いったん好きなようにやってみて、そこから深掘りしていこう、細かいところは修正していこうとウォーリーさんがおっしゃってくださるので、その言葉にも甘えさせていただきながら、様々なチャレンジをしているところです」
――ウォーリー木下さんの演出は、お二人は初めてですね。
矢田「はい。ウォーリーさんはすごく朗らかな方で、重いテーマの作品だからこそ良かったなと感じることがありますね。何でも相談しやすいですし、コミュニケーションが取りやすい演出家さんです」
上口「とても遊び心を大切にされる方だなと感じます。今までウォーリーさんが手掛けられた作品はいくつも観せていただきましたが、映像にしろ音楽にしろ、緻密に計算し尽くされた演出が多いなと感じていたんですね。実際にお仕事をさせていただいて、その緻密に計算されているのと同じくらいのレベルで、少年のように自由な遊び心を大切にされている方なんだなと感じました。だから僕達も自由でいられるんだろうなと。誰よりも稽古場を楽しんでらっしゃる方で、僕たちの一挙手一投足を楽しんでくださっているなと思います」――この作品に出演されるにあたって、考えられたこと、ご自身の中で変化したことなどはありますか。
上口「いまこうして会話をしていること、こうして伝えさせていただける言葉。それがどれだけ大切で、奇跡の連続であるのかということを改めて実感しました。「記憶」って、時には人を勇気づけたり、支えたり、悲しみを和らげたりしてくれますよね。いろいろなことがありますけど、自分は何を残していけるのかと考えるのと同時に、どういう言葉を残せるのか、伝えていきたいのかということを考えるようになりました。今のこの瞬間がとても大切だし、その尊さを噛みしめる時間が増えましたね」
矢田「人間って贅沢ですから、いざその立場にならないとわからないことというのも、すごく多いと思うんです。直人を演じていると、何もできない、伝えられないということはこんなにもしんどいことなのだと愕然とします。この感覚を疑似体験することって、この役以外では、なかなかないと思うんですよね。実際に同じ状況になったら「あの時こうしておけば良かった」と思うこともたくさんあると思いますが、今こうしてその感覚を味わうことで、当たり前のことは当たり前じゃないということをすごく感じます。忘れてしまいがちですけれど、この一瞬一瞬に感謝したいですし、時々立ち止まって考えることは大切だなと思いました」
――演劇として新しいことへのチャレンジとなる作品ですが、お二人は、2022年、何かチャレンジしてみたいことはありますか。
矢田「キャンプをやってみたいですね」
上口「全くの未体験?」
矢田「うーん、やったことはなくもないですけど、テントで泊まるとかはしたことがないんです。親友がテントとか寝袋を買ったらしくて、お前も寝袋さえあれば泊まれるよと言われまして(笑)」
上口「自分は父親がキャンプ好きだったので、小学生の時とかはよく行ってましたね。テントを張ったり、寝袋で寝たり、家族や仲間と自然の中で生きるというのは最高だよ!いつか一緒に行こう」
矢田「行きたいですね!バーベキューとかしたいです」
上口「楽しそうだよね。僕は、ショートショートとか星新一さんとかすごく好きで。なので、ああいうショートショートのようなお話を書いてみたいかなって」
矢田「へえ!すごい」
上口「実現できるかどうかは全くわからないですけど、チャレンジしてみたいこと、と聞かれてとっさに思い浮かびました(笑) 小説とかを書かれる方をとても尊敬しているので、簡単なことではないと思いますが、いつかチャレンジしてみたいですね」
――お客様へのメッセージをお願いします。
矢田「この作品は、何か一つの答えにたどり着くとか、そういったものではないと思います。人それぞれの正義があり、思いがあり、それは観に来てくださったお客様が置かれている立場や環境でも変わるものですよね。ですから、こちらからこういう意図があってメッセージがあってというのを具体的に伝えようとは考えていません。ただ僕たちは、稽古場でも本番でも、真剣に役として悩んで、真剣に演じますので、何か皆さんが考えるきっかけになったらいいなと思います。重いテーマだと思われがちですが、演劇として楽しい要素であったり、コメディタッチな部分もあるので、そういった部分も楽しみにしていてほしいですね。生で観ていただくことで伝わるものも多い作品だと思いますので、ぜひ劇場でご覧ください」
上口「終末期医療というのは、日常で触れる機会は少ないテーマのようですが、誰にでも訪れる可能性が高いものです。『僕はまだ死んでない』という作品の直人を取り巻く状況は、ある一つの例なのかなと。コミカルなシーンもあるのですが、でもそれもリアルというか。どんなにシリアスな場面や状況でも、少し滑稽な会話が繰り広げられる時があって、それも案外リアルなんだよって思うんですね。なので、この作品を通じて身近な問題として、医療のこと、家族のことを感じて考えてもらうきっかけになればと思います。自分は何を大切にしようか、そんなことを考えていただけたら、演じている僕達も嬉しいです。矢田君と交互に演じる中で日々変化があり、波がある作品になると思いますので、その空気感や呼吸をぜひ劇場でお楽しみいただけたらと思います」 -
公演概要
■タイトル:舞台「僕はまだ死んでない」
■日程:2022年2月17日(木)~28日(月) 銀座・博品館劇場
■原案・演出:ウォーリー木下
■脚本:広田淳一
■出演:矢田悠祐 上口耕平 中村静香/松澤一之・彩吹真央
2月17日・18日はVR生配信あり
詳しくは公式サイトへ
https://stagegate-vr.jp/
■公式サイト:
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2022/bokumada2022/index.html
■公式 Twitter:@Bokumada2022
■主催/企画・製作 シーエイティプロデュース
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