岡山

高梁・吹屋

TAKAHASHI / FUKIYA

雲海に浮かぶ「天空の城」と夕日に染まるベンガラの町並み

「天空の城」といえば兵庫県の竹田城が有名だが、「天守が雲海に浮かぶ城」といえば「備中松山城」である。その「天空の城」がある高梁は、岡山県の西部に位置する備中松山藩の城下町。旧武家屋敷や土塀が「石火矢町ふるさと村」に残り、往時の面影を伝える。かつて備中松山城の外堀の役割を果たしていた紺屋川畔は、桜と柳の並木道が続き、沿道に情緒豊かな町並みの広がる「紺屋川美観地区」となっている。高梁では、美しい庭園のある「頼久寺」も見逃せない。また、高梁市街地から少しはずれた山中に、もうひとつの注目町歩きスポット「吹屋」がある。ジャパンレッド発祥の地として日本遺産に認定され、また国の重要伝統的建造物群保存地区となっている「ベンガラの町並み」を散策し、「ベンガラ館」や「郷土館」で往時を偲しのぼう。高梁から吹屋への途中には、「高梁市成羽美術館」や、映画『八つ墓村』『燃えよ剣』のロケ地となった「広兼邸」があるので立ち寄ってみよう。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    備中松山城
    天守が現存する国内唯一の山城
    臥牛山(がぎゅうざん)の標高430mの地点にある「備中松山城(びっちゅうまつやまじょう)」は、天守が残る「山城」。秋には雲海に浮かぶ神秘的な姿を見せるほか、猫城主の「さんじゅーろー」が人気となっている。
    高梁市街地を眼下に、臥牛山に立つ「備中松山城」。堅牢な石垣が連なり、難攻の山城だったことがわかる
  • spot 02
    頼久寺
    日本を代表する江戸初期の庭園が有名な禅宗の寺
    岡山県の備中エリアで唯一の城下町、高梁市。国指定の名勝となっている頼久寺は、茶人としても知られる備中国奉行の小堀遠州(こぼりえんしゅう)の作庭と伝わる庭園が有名だ。
    石垣の上に建つ頼久寺
  • spot 03
    石火矢町ふるさと村
    今も武家屋敷が立ち並び、かつての城下町のたたずまいを残す
    備中松山藩の城下のなかで武家の町として営まれたのが石火矢町。今も格式ある黒瓦に白壁の門構えの武家屋敷が道の両側250mに立ち並び、岡山県のふるさと村に指定されている。
    武家屋敷が残り、城下町の面影を残す
  • spot 04
    紺屋川美観地区
    高梁川の支流紺屋川沿いは桜と柳並木が続き歴史スポットも点在
    備中松山城(びっちゅうまつやまじょう)が築かれた臥牛山(がぎゅうざん)から高梁川へ、城下町の中心部を通って流れ込む紺屋川。川沿いには桜と柳の並木道が続き、岡山県下最古の教会である高梁基督教会堂や藩校・有終館跡などが点在する町並みが広がる。
    紺屋川沿いの高梁基督教会堂はこのエリアの中心的スポット
  • spot 05
    高梁市成羽美術館
    安藤忠雄設計の公立美術館は3本柱の多彩なコレクションを所蔵
    高梁市成羽美術館は、同市出身の画家児島虎次郎(こじまとらじろう)の作品を中心とした絵画、虎次郎が収集した古代エジプトの遺物、成羽地域産出の植物化石がコレクションの3本柱。建物の設計は安藤忠雄氏(あんどうただお)。周辺の自然と調和して、ここにしかない景観を作り出している。
    自然と調和する安藤忠雄氏の建築
  • spot 06
    吹屋町並保存地区
    町並み保存されたベンガラ製造で栄えた山間の小さな集落
    高梁市成羽町吹屋は標高約500mに位置する小さな集落。銅山と赤色顔料のベンガラ生産で栄え、江戸時代末期から明治期の商家や宿屋跡が約750mにわたって連なる吹屋町並保存地区は官民一体で魅力的な町づくりが進むエリアだ。
    ベンガラ独特の色彩で町並みに統一感がある
  • spot 07
    旧片山家住宅
    吹屋地区の核となっている近世ベンガラ商家の居宅
    片山家は、江戸時代の1759年(宝暦9)創業以来、200年余り吹屋ベンガラの製造、販売で財をなした豪商。その居宅が旧片山家住宅で、格子戸やなまこ壁などが老舗商家の趣をとどめ、主屋などが国の重要文化財に指定されている。ベンガラ色の古い町並みで知られる国重要伝統的建造物群保存地区を代表する施設であり、日本遺産「『ジャパンレッド』発祥の地-弁柄と銅の町・備中吹屋-」の22ある構成文化財のひとつ。住宅は増築を繰り返し、20世紀初めには敷地面積が当初の約7倍に広がったそうだ。主屋のほか、ベンガラの袋詰めをする作業場、保管庫など計8棟が創建当時のままの「近世ベンガラ商家の典型」とされる。なかでも公開されている主屋には、屋久杉などの銘木を使った欄間や凝ったデザインの電灯など豪華な装飾が随所に施され、往時の繁栄ぶりを伝える。
    建てた当時の姿が残る旧片山家住宅
  • spot 08
    郷土館
    片山家の分家を郷土館として公開
    吹屋を代表するベンガラの窯元片山家の総支配人が分家され、建てられた邸宅を「郷土館」として公開している。向かいにある「旧片山家住宅」(国の重要文化財)を本片山(ほんかたやま)と呼ぶのに対して、こちらは角片山(かどかたやま)と呼ばれるそうだ。1874年(明治7)頃から建設を企画し、本家の材木蔵の良材を使い、石州の宮大工を呼び寄せて1879年(明治12)に完成した。2階建て妻入の入母屋型。土台と外回りには栗の角材を使い、縁敷居は桜の巨材、書院回りは生漆とベンガラで塗り上げている。壁をびっしりと覆うベンガラ格子も1階はケヤキ、2階は杉で、精緻な印象の外観だ。木の部分はすべてベンガラのすす塗り。2階には6畳ほどの「隠し部屋」もある。角片山の隣には、やはり片山家の分家である中片山(なかかたやま)があり、角片山と同様2階建て妻入の入母屋型で、角片山と同じ宮大工が手がけたものだそうだ。
    石州の宮大工を呼び寄せて築かれた建物。ベンガラ格子が印象的だ
  • spot 09
    広兼邸
    豪壮な石垣の上にそびえるベンガラ原料製造の豪商の邸宅
    江戸時代後期に銅山とベンガラ原料の製造で富を築いた大庄屋の広兼家。その居宅が豪壮な石垣の上に山城のように建つ広兼邸だ。映画『八つ墓村』の映画、テレビのロケが行われたことでも全国的に有名。
    山城のような姿でそびえる広兼邸。駐車場から見上げただけで圧倒される
  • spot 10
    ベンガラ館
    世界も驚かせた吹屋ベンガラの製造工程を紹介
    江戸中期、日本で初めてベンガラの生産が吹屋で始まった。その深みのある赤色は漆器や焼き物の着色顔料などに使用されて人気を集め、吹屋は繫栄した。ベンガラ館は、明治期のベンガラ工場を復元、昔使われていた道具を展示している。
    明治時代の工場の様子がわかるベンガラ館。建物の外観も内観もベンガラ色。室内では衣服にベンガラが付ききやすいので注意が必要
  • spot 11
    高梁市図書館
    観光案内所や見晴らしのいいテラスがある図書館
    「高梁市図書館」はJR備中高梁駅に直結しており、観光の情報収集や休憩にも使える便利な場所になっている。延べ床面積は2251平方メートル、吹き抜けの4階までそびえる壁一面の書架は見るだけでも圧巻、蔵書は約14万冊を誇る。指定管理者はレンタル大手のTSUTAYAの運営会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)で、岡山県内では初めて民間企業が運営する公立図書館として注目を集めている。CCCが運営する公立図書館としては、佐賀県武雄市などに続き、全国4館目。都会的なデザインが随所に施され、カフェ・スターバックス、蔦屋書店、観光案内所も同じビルに併設している。休館日はなく、開館時間は9~21時。市外の人も利用できるとあって観光客などからも人気となっている。本や雑誌をゆっくり読めるスペースや、パソコンを使えるスペースなども設置、無料Wi-Fiを一日に最大4時間使えるのもうれしいサービスだ。図書館が入っている建物の1階はバスセンターと飲食店などが入っている。
    やわらかな照明の心地よい館内でゆっくり読書が楽しめる
  • spot 12
    高梁市観光物産館紺屋川
    高梁を訪れる人々に周辺観光の拠点として利用される
    かつて城下町として栄えた高梁市を流れ、桜の名所として知られる紺屋川(こうやがわ)。両岸に桜や柳の並木、古い家並みが続き美観地区を形成している。紺屋川美観地区の入り口に位置するのが、「高梁市観光物産館紺屋川」だ。敷地面積は約150平方メートル、木造瓦葺き2階建て、白壁の建物は街並みにマッチして映えている。この建物は「第2回たかはし町並み建築デザイン賞」を受賞している。元は、1946年(昭和21)に建てられたもの農機具倉庫。その後、取り壊されることになっていたそうだが、「紺屋町美観地区の景観を代表するこの建物を保存しよう」と市が買い取って整備、1999年(平成11)に観光物産館として生まれ変わった。館内は2階まで吹き抜け。高梁周辺の総合観光案内所、高梁紅茶やユズ味噌などの特産品、土産品、地酒の販売コーナー、喫茶コーナーなどが設けられている。観光の拠点としての高梁観光には欠かせない存在だ。
    白壁、格子窓の景観が、歴史のある高梁の町並みに溶け込んでいる
  • spot 13
    御土産あさだ
    多彩なベンガラ製品と地元の特産品がそろう
    1902年(明治35)創業の地元企業が経営する「おみやげ あさだ」は、赤い石州瓦とベンガラ塗りで統一された家並みが続く吹屋のメインストリートにあり、古民家を店舗として利用している。吹屋名物の「草だんご」(810円)をはじめとする特産品も販売しているが、なんといってもベンガラを生かした土産の品ぞろえがすごい。向かいにある「麻田百貨店」と、通りを少し西へ行ったところにある「ベンガラ屋」も姉妹店で、いずれの店舗にも所狭しとベンガラ製品が並んでいる。ストールやシャツ、トートバッグ、帽子、ポーチ、暖簾、コースターなど多彩なジャンルがそろう「ベンガラ染」は、すぐ横の工房で染職人が1枚ずつ手で染めたもの。「ベンガラ焼き」も手作りで箸置きやカップが人気だ。また、ベンガラで染められた和紙はとても丈夫で1000年もつといわれ、美術に携わる人にファンが多いが、手軽に購入できる封筒(5枚517円)や一筆箋(770円)などもある。陶芸、染めもの、絵の具、塗装に使用できる「ベンガラ」そのものも販売しているので、家でオリジナルのベンガラ染に挑戦してみるのも楽しい。
    吹屋の赤い町並みのなかにある土産店。吹屋の伝統的な家屋を利用している
  • spot 14
    魚富
    鮮魚店が営む日本料理店で旬の魚料理を味わう
    JR高梁駅から歩いて約10分。地元でも人気の日本料理店「魚富」は、道を挟んで向かいにある「土井鮮魚店」直営の食事処だ。魚屋さん直営だから、いつでも旬の魚介を味わえると評判が高い。高梁市は海から少し遠い立地のようなイメージがあるが、日本海、瀬戸内海を結ぶ高速道路の整備によって、新鮮な魚が日々届けられるようになった。名物のひとつが「魚屋さんの海鮮丼」。鯛やマグロ、海エビ、イカなどのスタンダードなものから岡山名物のシャコといった珍しいものまで料理人がその日選んだ約8種の魚介が入る、この店ならではの逸品といえるだろう。ほかにも、寿司、刺身、焼き物、揚げ物といった一品料理から、手軽に楽しめるセット、6品から9品までを選べる「夜の会席料理」など多彩なメニューがそろっている。そして、高梁川で育った天然の鮎や川がに、うなぎも名物。高梁川上流域は石灰岩の地帯を流れ、カルシウムを豊富に含んだ水で育つので、その味わいは格別だそう。「あゆの甘露煮」1400円、「あゆの酒粕漬」1400円はお土産として買って帰ることができる。旬の食材を組み合わせ、季節ごとの味を発信する名店で魚料理を堪能したい。
    「魚屋さんの海鮮丼」1652円は持ち帰りも可能
  • spot 15
    吹屋の紅や
    茅葺きの屋根が目印のユニークなカフェ
    国重要伝統的建造物群保存地区の「吹屋ふるさと村」に唯一残っていた茅葺き屋根の古民家を活用しているのが、このカフェ。下町駐車場からすぐの場所にある。建てられてから約140年が経つ古い民家を、なんとか利用したいと内部を改装し、10年ほど前からカフェとしての営業をスタートさせた。店内は骨董屋さんかと見紛うほど、所狭しと昭和レトロの雑貨が飾ってある。レコードジャケットや書籍、ラジオ、空きビン、うちわ、スタンド、カップ、玩具、人形など、眺めているだけで時が経つのを忘れそう。おすすめは地元で栽培された茶葉を使った「高梁紅茶」500円。ストレートで飲んでも甘みを感じる香り高い紅茶だ。コーヒー、紅茶などの飲みものにはクッキーなどのお菓子が付いている。また、広島県福山市の地コーラ「ふくやまコーラ」450円もある。茅葺き屋根は老朽化が進んだため、国重要伝統的建造物群保存地区の建造物の修理費90%を補助する高梁市の制度を活用し、2020年(令和2)に約30年ぶりに葺き替えられている。
    古い家屋が並ぶ吹屋の町並みのなかで、茅葺き屋根が目をひく
  • spot 16
    カフェ燈
    吹屋の伝統的な建物を利用した施設で「地元野菜たっぷりランチ」を満喫
    ベンガラの町「吹屋ふるさと村」にある、築約140年の町家を活用した一棟貸しの滞在型宿泊施設「町家ステイ 千枚」。「千枚」はこの地区の小字にちなんでいる。外観や間取り、柱や梁などは元のものをできるだけ残してくつろげる空間を提供する。この「町家ステイ 千枚」のに併設されているのが、宿泊客以外も利用できる「カフェ燈(あかり)」だ。地元の食材にこだわったメニューが話題となっている。日替わりのランチは、地元産の野菜や調味料がふんだんに使われ、ほっとするような懐かしさが特徴。プラス300円でコーヒーとデザートが付く。スイーツも高梁エリアの食材を使用する。ケーキは、高梁市宇治の「もち麦ミルクレープ」か、「もち麦シフォンケーキ」を選ぶことができる。高梁市の地紅茶「高梁紅茶」といっしょに味わうのがおすすめ。器も吹屋のベンガラで色付けしたケーキ皿やコーヒーカップ、箸置きなどオリジナルで作成したものを使用している。ベンガラ色の器には吹屋の風景が描かれている。
    地元の食材を使ったランチ(1400円)には田舎の「おかあさんのおかず」が並ぶ
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旅のヒント

  1. その1

    備中松山城の「天守が雲海に浮かぶ姿」は、もちろん現地では見ることができない。それを見るには「雲海展望台」まで行く必要がある。

  2. その2

    吹屋の「ベンガラの町並み」が夕日に映え、オレンジ色に染まる光景は必見。

  3. その3

    高梁から吹屋へは、車で約25kmの山道を走って約40分。吹屋から中国自動車道新見ICへも同じぐらいかかる。吹屋は意外と遠いので、時間配分に注意しよう。

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