福井

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FUKUI

悲運の歴史が眠る、戦火に消えた戦国武将の夢の跡を訪ねる

福井県の県都である福井市は、織田信長の宿将として知られる柴田勝家が、越前支配の拠点として1575年(天正3)に北ノ庄城と城下町を整備したのが始まりだ。江戸時代には石高68万石を誇る福井藩の城下町だったが、空襲や戦後に起きた震災で残念ながら貴重な町並みは失われている。とはいえ、市内には北ノ庄城の遺構が残っており、勝家と夫人のお市の方(信長の妹)が壮絶な最期を遂げた悲劇の地を訪れる歴史ファンは多い。また、福井市街の南東約10kmの位置にある一乗谷朝倉氏遺跡には、一見の価値がある。一乗谷は戦国大名の朝倉氏が拠点とした場所で、最盛期には人口1万に達し、「北陸の小京都」と呼ばれるほどの栄華を誇った。朝倉氏は1573年(天正元)に織田信長に攻められ滅亡し、城下町も灰塵に帰したものの、発掘調査の結果や史料を参考に約200mにわたる「復原町並」が1995年(平成7)に整備され、公開されている。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    名勝 養浩館庭園
    代々の福井藩主が愛でた回遊式林泉庭園の「美」を楽しむ
    養浩館(ようこうかん)庭園は、福井藩主・松平家の別邸跡だ。大きな池の周りには、数寄屋造りの屋敷や築山、石製の造形物などが緻密に配置され、美しい景色を織りなしている。園路を歩き、ゆっくりと観賞しよう。
    屋敷は池に面して建てられている。写真左側の盛り上がった部分は、山に見立てて土を盛った築山(つきやま)
  • spot 02
    えがわ
    冬にこたつで食べるのが福井流。やさしい口あたりの「水羊かん」
    水羊羹に、「暑い日の涼菓子」というイメージをもつ人は多いだろう。しかし、福井県では「冬にこたつに入って食べる菓子」として定着している。大正から昭和の頃、福井から京都の商店へ奉公に出た丁稚(でっち)が、年末年始に羊羹を持って帰郷した際、水で延ばして作り直し、近所に配ったことが、冬に水羊羹を食べる習慣の由来といわれている。えがわは、そんな水羊羹の老舗専門店だ。3cm×5cmの大きさにカットされた一片を木べらですくって口に入れると、なめらかな舌触りと上品な甘さが感じられる。その絶妙な味わいは、ていねいな手作業によって生まれる。まずは、大釜に、熱湯で溶かした寒天とあずき餡、黒砂糖、ざらめ糖を投入して煮詰めていく。寒天とあずき餡が分離しないよう、根気よくゆっくりとかき混ぜ続けるのがポイントだ。40-50℃まで温度が下がったタイミングで容器に流し込み、1時間ほど冷まして固めたら完成となる。冬の定番の「水羊かん」に加え、えがわでは「夏の定番」として「水かんてん」も販売している。福井県産のブランド梅・黄金の梅といよかんをあわせたマーマレードを混ぜ込んでおり、爽やかな風味を楽しめる。
    「水羊かん」(800円)。保存料などの添加物はいっさい使用していない
  • spot 03
    ヨーロッパ軒 総本店
    ドイツ仕込みのソースが特徴の決め手。福井のB級グルメの代表格
    福井県では、卵でとじたカツ丼ではなくソースカツ丼がスタンダード。その発祥の店が、ヨーロッパ軒だ。看板メニューのカツ丼には、ご飯の上にソースのしみた3枚のカツが載っている。肉は、薄くスライスした上質の豚ロースと豚モモ。パン粉をまぶし、ラード(豚脂)にヘッド(牛脂)を加えた油で揚げ、あつあつのうちに香辛料を混ぜ合わせた秘伝のウスターソースにくぐらせて味付けする。パン粉は目が細かいため油切れがよく、まったくしつこくない。ソースの甘みや酸味が、肉のうまみを引き立てており、福井県産のコシヒカリと華越前(はなえちぜん)をブレンドしたご飯との相性は抜群だ。考案したのは、1906年(明治39)から6年間、料理研究のためドイツ留学をした同店創業者の高畠増太郎氏。ドイツで学んだウスターソースの味を日本で広めようと、ご飯と合う調理方法を試行錯誤するなかで、薄いカツとの組み合わせを考え出した。1913年(大正2)に、東京都の早稲田鶴巻町でヨーロッパ軒を創業し、ソースカツ丼の販売を開始した。1923(大正12)の関東大震災を機に郷里の福井県へ移転後、暖簾分けをしながら県内19店にまで規模を広げている。
    カツ丼セット(カツ3枚、サラダとみそ汁付)1300円
  • spot 04
    松岡軒
    絹織物のやさしさを表現した羽二重餅(はぶたえもち)の名店
    絹のように真っ白で艶やかな見た目。口に入れるとふわりととろけ、餅米の甘さがほんのりと口中に広がっていく。松岡軒の看板商品・羽二重餅だ。現在では福井県内の多くの和菓子店が同名商品を取り扱っているが、元祖は、1905年(明治38)に販売開始した松岡軒とされる。創業者の淡島恒(つね)氏が、10年にわたる東京の和菓子店での修業後、福井で独立開業する際に考案した。着想のヒントは、上品な光沢が特徴的な「羽二重」という福井特産の高級絹織物だ。やわらかな羽二重の感触を和菓子で再現しようと、試行錯誤を重ねて完成させた。淡島氏の生家は福井県の織物業で、越前羽二重の起源といわれる奉書紬(ほうしょつむぎ)を生産しており、そのつながりを表現したいという思いもあったそうだ。羽二重餅が誕生してから100年以上が経つが、独特の食感を生み出す餅粉と砂糖、水飴の絶妙な配分は、今も変わっていない。同店ではほか、羽二重餅とあんこを詰めた羽二重もなかや羽二重どら焼きも人気だ。
    羽二重餅(2枚6袋756円)。上品な香りと繊細な食感を両立させるため、福井県産の餅粉にコシの強い京都丹波産の餅米を独自にブレンドしている
  • spot 05
    一乗谷朝倉氏遺跡
    現代によみがえった城下町で、戦国時代の暮らしに思いを馳せる
    戦国時代に越前朝倉氏が本拠地としていた一乗谷は、当時、日本有数の城下町として繁栄していた。最盛期には人口1万人を超えたという。「京の都に勝るとも劣らない」とうたわれた栄華の跡を訪ねてみよう。
    朝倉氏館の正門跡にある唐門。江戸中期に建てられた遺跡のシンボル
  • spot 06
    福井市立郷土歴史博物館
    模型や映像を駆使した展示で福井の歴史をたどる
    縄文時代から昭和時代までの福井の歴史を大型模型や映像、音声案内などを駆使してわかりやすく展示する福井市立郷土歴史博物館。福井藩主松平家に伝わる宝物や文書も多数所蔵し、藩政期の歴史についても理解が深まる。
    公園や住宅に囲まれた静かな環境に立地する
  • spot 07
    北の庄城址・柴田公園
    柴田勝家が築造した「幻の城」の遺構に歴史ロマンを感じる
    戦国武将の柴田勝家が1575年(天正3)に築城を始めたとされる北庄城(きたのしょうじょう)。その遺構の上に整備されたのが北の庄城址・柴田公園だ。勝家の銅像が見下ろす園内には往時の名残が今も見られる。
    北庄城の遺構の上に整備された公園。左奥に柴田神社が見える
  • spot 08
    福井城山里口御門
    福井城の守りを固める枡形門。復元され、かつての姿を取り戻す
    徳川家康の次男、結城秀康が1606年(慶長11)に築いた福井城。現在は本丸の石垣や内堀などを残すだけだが、2018年(平成30)3月、失われていた山里口御門が復元され、往時の雰囲気がよみがえった。
    山里口御門と御廊下橋、石垣、堀が一体となり江戸時代の風情が漂う
  • spot 09
    足羽山公園遊園地
    自然と歴史を体感できる市民のオアシス。山頂の遊園地も大人気
    足羽山は全体が公園として整備され、豊かな自然のなかに散策路や展望台、遊園地、歴史スポットなどが点在する。福井市の中心部から南西約2kmと気軽に立ち寄れる距離にあり、市民の憩いの場として親しまれている。
    足羽山公園からの眺め。園内には展望スポットがいくつもある
  • spot 10
    足羽神社
    継体天皇ゆかりの神社は樹齢370年超のシダレザクラがシンボル
    足羽山中腹に鎮座する足羽(あすわ)神社の起源は5世紀後半。その頃、のちの継体(けいたい)天皇である男大迹王(おほどのおおきみ)が越前を治めており、越前平野の大規模な治水事業を行う際に、朝廷に祀られている大宮地之霊(おおみやどころのみたま)を勧請して安全を祈願したのが由緒と伝えられている。男大迹王は天皇即位にあたり、自らの生御霊(いきみたま)を足羽神社に鎮めて越前を離れたとされ、現在も大宮地之霊と継体天皇が祭神となっている。また、足羽神社のシダレザクラは、「日本さくら名所100選」に選ばれている同山のなかでも、特に多くの花見客が訪れる名木だ。境内の中央に枝葉を伸ばし、高さは約12m。樹齢は370年以上と推定される。これまで度重なる風害と雪害に遭い、1900年(明治33)の橋南大火や1945年(昭和20)の福井空襲で焼損した経緯もあるが、今も毎年春には、傘状に広げた枝々にピンクの花を力強く咲かせている。
    満開のシダレザクラ。福井市の天然記念物に指定されている
  • spot 11
    おさごえ民家園
    福井県内各地の古民家を移築して展示。昔話の世界が目の前に
    園内には江戸時代に建てられた豪農や庄屋の古民家5棟と板倉1棟が福井県内各地から移築、復原されている。一歩足を踏み入れると、タイムスリップしたかのような景色が広がり、当時の人々の暮らしぶりが垣間見える。
    新緑や紅葉、雪景色など、四季折々の風情を感じられる園内
  • spot 12
    料亭 丹巌洞
    地物を使った懐石料理に舌鼓。庭園には歴史好き必見のスポットも
    地元で採れた旬の食材を使った創作懐石料理を味わえる。苔むした庭園は風情たっぷりで、その一角には幕末に開明派の志士が密会した「丹巌洞草庵」や福井特産の笏谷石(しゃくだにいし)を採掘した跡が残されている。
    落ち着いた雰囲気で趣向を凝らした創作和食をいただける
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旅のヒント

  1. その1

    福井市へのアクセスは、自動車の場合、北陸自動車道福井北ICか福井ICを利用しよう。一乗谷朝倉氏遺跡へは福井ICが最寄りだ。

  2. その2

    鉄道の場合は、JR福井駅が観光の起点となる。一乗谷朝倉氏遺跡、東尋坊、永平寺などへ向かう特急バスが同駅前から出発している。

  3. その3

    一乗谷朝倉氏遺跡にJRで行く場合は、福井駅から越美北線に乗り換え、「一乗谷」で下車を。

  4. その4

    福井の3大グルメとして人気なのは、香り高いそばと大根おろしが絶妙にマッチする「越前おろしそば」、各店自慢のソースがカツに染みわたる「ソースカツ丼」、そして冬はズワイガニのトップブランド「越前がに」。福井の味覚の王様として君臨している。

  5. その5

    地元特産のお土産菓子としては、「羽二重餅」や「水羊かん」がおすすめ。

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