南砺・五箇山
NANTO / GOKAYAMA
タイムカプセルから飛び出したような古き良き日本に触れる
1995年(平成7)に世界文化遺産に登録された「五箇山(ごかやま)の合掌造り集落」と創建600有余年の歴史を誇る大伽藍「井波別院瑞泉寺(ずいせんじ)」を擁するのが南砺(なんと)・五箇山エリアだ。五箇山では、深い山の中で連綿と受け継がれてきた山里の景観が広がる。茅葺き屋根の合掌造り家屋が並ぶ集落は、写真映えするスポットも豊富。一方、北陸最大の大伽藍を今に受け継ぐ南砺市井波では、瑞泉寺の広さ450畳の本堂がその規模で圧倒し、日本の木彫刻の名品を随所で見ることができる。ともにタイムカプセルを開いたような懐かしさに満ち、旅心をはずませてくれる。富山市と金沢市のほぼ中間にあるので、車なら両市から小一時間ほどで移動できる。
エリアの見どころ
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よいとこ井波
- 時代小説作家・池波正太郎の足跡をしのぶ複合施設
- よいとこ井波は、八日町通りのなかほどにある観光と物販の複合施設で、「池波正太郎ふれあい館」を併設する。館内の売店では、麦芽とでんぷんで作る素朴な「太子あめ」をはじめとする地元菓子や、地元作家によるドライフラワーアレンジメントなど、手作り小物を販売する。「太子あめ」は、富山の丸薬の苦みを和らげ、つなぎとしても使われた麦芽飴を、よく練り上げて作られたものだ。長年地元で親しまれており、かつて樽入りで売られた時代を思わせる木製の容器で販売する。館内にはほかに木彫り工房と食事・喫茶の店があり、町歩きに疲れたら休憩がてら立ち寄るのにちょうどいい。建物奥には、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛け人 藤枝梅安』などの時代小説で人気を博した池波正太郎氏の文学館がある。父祖の地が井波であった縁から地元との交流が始まり、2006年(平成18)に開設された。遺族の意向を尊重して無料で入場できる。
- スポットの詳細
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よいとこ井波
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五箇山民俗館
- 雪深い山村の暮らしを追体験できる資料200点を展示
- 集落のほぼ真ん中にある170年ほど前に建てられた合掌家屋のひとつを使い、五箇山の歴史と伝統を追体験できる施設。展示資料は約200点を数える。さらに建物は菅沼で最も古く、しかも、ほとんど改修の手が加えられていないという。合掌造りは、養蚕や塩硝、和紙づくりといった生業の場と家族の暮らしの場が一体となっていることが特徴だ。1階は暮らしと和紙作り、床下が塩硝、2階から上は養蚕用に分かれる構造は、実に合理的。館内1階では、カンジキなどの履物や生活用品、衣類、農機具に塩硝の製造用具を置き、アマと呼ぶ2階の天井裏には養蚕用具を展示する。最長で5か月近く雪に覆われる豪雪地帯でもあり、家屋や生活用品には暮らしを快適にするための、さまざまな知恵と工夫がうかがえる。
- スポットの詳細
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五箇山民俗館
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五箇山旬菜工房 いわな
- いけすから取り出した、さばきたてのイワナの握りは絶品
- 全国的にも珍しい「イワナのにぎりずし」を求めて、週末には開店早々から行列ができる人気店。イワナは、さばいたそばから身が縮むため、独特の弾力があるコリコリした食感が早々に失われる。これを理由に刺し身やすし種より、塩焼きなどで提供するのが一般的だ。しかし、店主の丹保実さんは、店内にイワナを100匹ほど生かして泳がせる生け簀を設置し、店舗近くで湧く伏流水をかけ流しにすることで、鮮度を保ったままイワナを提供できるようにした。やわらかいのにプリっとした歯ごたえもあるイワナならではの食感を、ぜひここで味わってほしい。そばは二八そばで、追いがつおを施した濃厚なダシと相性がいい。添えられる山菜や野菜類も地元産で、近所の南砺市楮(こうず)の農家から直接仕入れている。棚田で育てられた五箇山ぼべら(カボチャ)などの野菜類は、朝どれらしい鮮度で食が進む。イワナは、にぎりずしのほかカルパッチョも人気だ。
- スポットの詳細
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五箇山旬菜工房 いわな
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相倉民俗館
- 旧尾崎家の合掌造り家屋をそのまま使い、民俗資料などを展示
- 相倉集落で世界遺産として保存される範囲は、合掌造り家屋だけではない。田畑や山林に加えて、屋根を葺(ふ)くための茅(かや)を育てる「茅場」や、集落を雪崩から守る「雪持林(ゆきもちりん)」も含まれる。つまり、人々の生活空間が丸ごと残されている希有な場所だ。相倉民俗館は、昔ながらの村びとの暮らしがわかるように旧尾崎家の住宅をそのまま活用し、生活の道具や農具などの民俗資料を展示する。合掌造り家屋同様、民具も金具などを使わず、頑強で長く使えるよう合理的に作られたものが多い。素朴ながら生命力にあふれた民具や装飾品からは、物に執着するのではなく愛着していた暮らしぶりが伝わってくる。館内では助け合いながら生きてきた往事の暮らしを解説したビデオを流し、囲炉裏端で、こきりこなどの伝統楽器を使った民謡を体験することもできる。
- スポットの詳細
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相倉民俗館
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流刑小屋
- 「お縮り小屋(おしまりごや)」の異名、全国唯一の有形民俗文化財
- 幅約3m、六畳板敷(約10平方メートル)で三方板囲いの小さな建物が、全国でただひとつ残る流刑小屋だ。庄川に近い斜面の一角にあり、車なら気づかず通りすぎるほど、さりげない遺構である。小屋が残る田向(たむかい)集落には、1690年(元禄3)に加賀藩士の安見与八郎が流されたのをはじめ、藩政期中に24人ほどが送られたという記録が残る。流刑人は住民との交友を許され、学問や社会知識を村人に伝えて慕われた者もいたらしい。しかし重罪人は、この狭い「お縮り小屋」に閉じ込められ住民と話すことも許されなかった。小屋は集落内に3棟あったもののひとつで、1769年(明和5)の大火で消失したのち、新築されたとされる。1963年(昭和38)の豪雪で倒壊したが、1965年(昭和40)に復元後、富山県の有形民俗文化財に指定された。柱には食べ物を出し入れした小穴が今も残る。穴から中をのぞくと罪人の怨嗟(えんさ)の声が暗闇から響くようで、思わず身震いしそうだ。
- スポットの詳細
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流刑小屋
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道の駅たいら 五箇山和紙の里
- 手土産にもなる和紙のはがきを作り、イワナの唐揚げに舌鼓
- 道の駅たいらは、五箇山の特産品を扱う売店と飲食の複合施設で、相倉合掌造り集落から国道156号を車で13分ほど走った場所にある。奥には和紙作りを体験できる施設があり、はがきなら700円で3枚の作品を作れる。和紙にすき込むカラフルな素材が、あらかじめ用意されているので、子どもでも簡単に挑戦できそう。およそ30分かけて作り上げる和紙は、旅の思い出を閉じ込めた格好の土産品になる。土産品はほかに「和紙の里売店」で選ぶこともできる。プロの職人が作った和紙をモダンにデザインした製品が並び、じかに強度や手触りまで確認できるのは製造販売所ならではだ。また、館内の食事処「ふるさと」では、合掌造り家屋を思わせる黒光りする太い梁が特徴的な店内で、五箇山の味を堪能できる。香ばしいイワナの唐揚げを盛った岩魚そばがいちばん人気だ。
- スポットの詳細
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道の駅たいら 五箇山和紙の里
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喜平商店
- 豆腐本来の姿を味わえる五箇山最古の堅豆腐の老舗
- 堅豆腐(かたどうふ)は、白山を中心とした北陸の山間地で広く作られている。豆腐はもともと、中国から製法が伝わったとされ、堅豆腐が本来の姿という。戦後に普及した絹ごし豆腐のようなやわらかさはなく、文字どおり縄で結わえて運べるほど堅めだ。五箇山伝統の堅豆腐を提供する喜平商店は、相倉集落から車で10分弱の国道156号沿いにある。五箇山で最古、大正初期創業の豆腐店だ。味の決め手になる水は、標高1000mほどのブナ林から湧く弱アルカリ性の伏流水を使う。にがり(硫酸カルシウム)は、豆腐が分離しやすいよう強め。南砺市産のエンレイ大豆本来の味をギュッと凝縮して生かすのが最大の特徴である。小さく切っても型崩れしないので扱いやすい。3代目店主の岩崎喜平さんは「刺し身でもいけるが、薄めに切って揚げるか田楽にすると、さらにうまみが増す」とイチ押しの味わい方を紹介する。薫製(くんせい)は日持ちするので土産品にもおすすめ。
- スポットの詳細
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喜平商店
人気スポット
旅のヒント
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その1
五箇山へはJR北陸新幹線の新高岡駅やJR高岡駅から世界遺産バスに乗り換えて50分で着く。車なら東海北陸自動車道の五箇山ICが最も近く、菅沼集落まで3-4分だ。
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その2
井波地区へは、あいの風とやま鉄道高岡駅からバスで55分。車なら北陸自動車道砺波ICから約15分で八日町通り下の「井波交通広場駐車場」に着く。
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その3
井波と五箇山の間は車で20分ほどなので、足早に1日で両エリアを巡ることもできる。バスは運行本数が限られるので注意が必要だ。