富山

南砺・五箇山

NANTO / GOKAYAMA

タイムカプセルから飛び出したような古き良き日本に触れる

1995年(平成7)に世界文化遺産に登録された「五箇山(ごかやま)の合掌造り集落」と創建600有余年の歴史を誇る大伽藍「井波別院瑞泉寺(ずいせんじ)」を擁するのが南砺(なんと)・五箇山エリアだ。五箇山では、深い山の中で連綿と受け継がれてきた山里の景観が広がる。茅葺き屋根の合掌造り家屋が並ぶ集落は、写真映えするスポットも豊富。一方、北陸最大の大伽藍を今に受け継ぐ南砺市井波では、瑞泉寺の広さ450畳の本堂がその規模で圧倒し、日本の木彫刻の名品を随所で見ることができる。ともにタイムカプセルを開いたような懐かしさに満ち、旅心をはずませてくれる。富山市と金沢市のほぼ中間にあるので、車なら両市から小一時間ほどで移動できる。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    瑞泉寺
    彫刻の町・井波に建つ、北陸最大の木造大伽藍
    1390年(明徳元)、本願寺第5代綽如(しゃくにょ)上人が開創。600有余年の歴史のなかで地元に木造建築と木彫刻の技術を根付かせる役割も担った。信仰の地のおごそかな空気に触れながら、見ほれるような彫刻の数々を鑑賞したい。
    八乙女山のふもとに建つ単層入母屋造りの本堂(写真中央)と重層伽藍として造られた太子堂(左)
  • spot 02
    八日町通り
    散策のBGMは、心地良いリズムを刻む木彫りの槌音
    瑞泉寺の門前町であり、木彫刻の拠点として発展した八日町通り。100m弱の石畳の通りには町家や彫刻工房、酒造店などが並ぶ。どの家にも木彫りの看板や表札が掲げられ、さながら美術館のように多彩な木彫刻を楽しめる。
    八乙女山麓の瑞泉寺までなだらかな坂道が続き、格子戸のある町家が軒を連ねる
  • spot 03
    よいとこ井波
    時代小説作家・池波正太郎の足跡をしのぶ複合施設
    よいとこ井波は、八日町通りのなかほどにある観光と物販の複合施設で、「池波正太郎ふれあい館」を併設する。館内の売店では、麦芽とでんぷんで作る素朴な「太子あめ」をはじめとする地元菓子や、地元作家によるドライフラワーアレンジメントなど、手作り小物を販売する。「太子あめ」は、富山の丸薬の苦みを和らげ、つなぎとしても使われた麦芽飴を、よく練り上げて作られたものだ。長年地元で親しまれており、かつて樽入りで売られた時代を思わせる木製の容器で販売する。館内にはほかに木彫り工房とお食事処、フロントショップの店があり、町歩きに疲れたら休憩がてら立ち寄るのにちょうどいい。建物奥には、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛け人 藤枝梅安』などの時代小説で人気を博した池波正太郎氏の文学館がある。父祖の地が井波であった縁から地元との交流が始まり、2006年(平成18)に開設された。遺族の意向を尊重して無料で入場できる。
    彫刻工房、お食事処、フロントショップ、「池波正太郎ふれあい館」を併設。売店では地元の特産品を購入できる
  • spot 04
    菅沼合掌造り集落
    9棟の小規模合掌造り集落は、まるで昔話の舞台
    菅沼は小さいながらも、日本を代表する農山村風景だ。かつて岐阜県白川郷と富山県五箇山で最大2000軒近くあった合掌造り家屋は、今では10分の1以下に激減している。まさに現代に残る貴重な人類の遺産なのだ。
    展望広場駐車場にほど近い高台から、庄川の谷あいにせり出した合掌造り集落を見渡せる
  • spot 05
    塩硝の館
    加賀藩の密かな塩硝製造所で歴史の舞台裏に触れる
    五箇山では、鉄砲に欠かせない黒色火薬の原料になる塩硝が密かに作られていた。奥深い山に隠れ、加賀藩の軍事物資生産を担っていたのだ。蚕(かいこ)のフン等を弾薬の材料へ変えた製造の仕組みが、ここでわかる。
    入り口横では、戦国時代の火縄銃に関する映像が流れ、実際に銃を構えて写真を撮ることもできる
  • spot 06
    五箇山民俗館
    雪深い山村の暮らしを追体験できる資料200点を展示
    集落のほぼ真ん中にある200年ほど前に建てられた合掌家屋のひとつを使い、五箇山の歴史と伝統を追体験できる施設。展示資料は約200点を数える。さらに建物は菅沼で最も古く、しかも、ほとんど改修の手が加えられていないという。合掌造りは、養蚕や塩硝、和紙づくりといった生業の場と家族の暮らしの場が一体となっていることが特徴だ。1階は暮らしと和紙作り、床下が塩硝、2階から上は養蚕用に分かれる構造は、実に合理的。館内1階では、生活用品や衣類を置き、アマと呼ぶ2階の天井裏には養蚕用具や民具を展示する。最長で4か月近く雪に覆われる豪雪地帯でもあり、家屋や生活用品には暮らしを快適にするための、さまざまな知恵と工夫がうかがえる。
    江戸末期に建てられた合掌家屋を民俗館として公開する。五箇山は今も3mほど雪が積もる豪雪地帯だ
  • spot 07
    五箇山旬菜工房 いわな
    いけすから取り出した、さばきたてのイワナの握りは絶品
    全国的にも珍しい「イワナのにぎりずし」を求めて、週末には開店早々から行列ができる人気店。イワナは、さばいたそばから身が縮むため、独特の弾力があるコリコリした食感が早々に失われる。これを理由に刺し身やすし種より、塩焼きなどで提供するのが一般的だ。しかし、店主の丹保実さんは、店内にイワナを100匹ほど生かして泳がせる生け簀を設置し、店舗近くで湧く伏流水をかけ流しにすることで、鮮度を保ったままイワナを提供できるようにした。やわらかいのにプリっとした歯ごたえもあるイワナならではの食感を、ぜひここで味わってほしい。そばは二八そばで、追いがつおを施した濃厚なダシと相性がいい。添えられる山菜や野菜類も地元産で、近所の南砺市楮(こうず)の農家から直接仕入れている。棚田で育てられた五箇山ぼべら(カボチャ)などの野菜類は、朝どれらしい鮮度で食が進む。イワナは、にぎりずしのほかカルパッチョも人気だ。
    「いわなのにぎり付山菜そば定食」1760円。地元産の野菜の天ぷらを添えたそばと五箇山豆腐、煮物が付く
  • spot 08
    相倉合掌造り集落
    五箇山最大の合掌集落に残る、懐かしさと感傷を呼ぶ農村風景
    20棟の合掌造り家屋と4棟の茅葺き家屋の計24棟が残る五箇山最大の合掌集落。1995年(平成7)に世界文化遺産に登録されたあとも、人々の暮らしの場であり続けている。今も朽ちない農村風景に心揺さぶられるはずだ。
    第1駐車場から5分ほど坂道を上った場所に全景撮影スポットがあり、集落を一望できる
  • spot 09
    相倉民俗館
    旧尾崎家の合掌造り家屋をそのまま使い、民俗資料などを展示
    相倉集落で世界遺産として保存される範囲は、合掌造り家屋だけではない。田畑や山林に加えて、屋根を葺(ふ)くための茅(かや)を育てる「茅場」や、集落を雪崩から守る「雪持林(ゆきもちりん)」も含まれる。つまり、人々の生活空間が丸ごと残されている希有な場所だ。相倉民俗館は、昔ながらの村びとの暮らしがわかるように旧尾崎家の住宅をそのまま活用し、生活の道具や農具などの民俗資料を展示する。合掌造り家屋同様、民具も金具などを使わず、頑強で長く使えるよう合理的に作られたものが多い。素朴ながら生命力にあふれた民具や装飾品からは、物に執着するのではなく愛着していた暮らしぶりが伝わってくる。館内では助け合いながら生きてきた往事の暮らしを解説したビデオを流し、囲炉裏端で、こきりこなどの伝統楽器を使った民謡を体験することもできる。
    先人の知恵と苦労が詰まった江戸時代の生活道具などを展示する。入場料は大人300円
  • spot 10
    流刑小屋
    「お縮り小屋(おしまりごや)」の異名、全国唯一の有形民俗文化財
    幅約3m、六畳板敷(約10平方メートル)で三方板囲いの小さな建物が、全国でただひとつ残る流刑小屋だ。庄川に近い斜面の一角にあり、車なら気づかず通りすぎるほど、さりげない遺構である。小屋が残る田向(たむかい)集落には、1690年(元禄3)に加賀藩士の安見与八郎が流されたのをはじめ、藩政期中に24人ほどが送られたという記録が残る。流刑人は住民との交友を許され、学問や社会知識を村人に伝えて慕われた者もいたらしい。しかし重罪人は、この狭い「お縮り小屋」に閉じ込められ住民と話すことも許されなかった。小屋は集落内に3棟あったもののひとつで、1769年(明和5)の大火で消失したのち、新築されたとされる。1963年(昭和38)の豪雪で倒壊したが、1965年(昭和40)に復元後、富山県の有形民俗文化財に指定された。柱には食べ物を出し入れした小穴が今も残る。穴から中をのぞくと罪人の怨嗟(えんさ)の声が暗闇から響くようで、思わず身震いしそうだ。
    流刑小屋の遺構は全国的にも珍しく、唯一現存する民俗文化財だ
  • spot 11
    道の駅たいら 五箇山和紙の里
    手土産にもなる和紙のはがきを作り、イワナの唐揚げに舌鼓
    道の駅たいらは、五箇山の特産品を扱う売店と飲食の複合施設で、相倉合掌造り集落から国道156号を車で13分ほど走った場所にある。奥には和紙作りを体験できる施設があり、はがきなら800円で3枚の作品を作れる。和紙にすき込むカラフルな素材が、あらかじめ用意されているので、子どもでも簡単に挑戦できそう。およそ30分かけて作り上げる和紙は、旅の思い出を閉じ込めた格好の土産品になる。土産品はほかに「和紙の里売店」で選ぶこともできる。プロの職人が作った和紙をモダンにデザインした製品が並び、じかに強度や手触りまで確認できるのは製造販売所ならではだ。また、館内の食事処「ふるさと」では、合掌造り家屋を思わせる黒光りする太い梁が特徴的な店内で、五箇山の味を堪能できる。香ばしいイワナの唐揚げを盛った岩魚そばがいちばん人気だ。
    道の駅案内所、和紙体験館、和紙や特産品の売店、飲食施設が集まる「道の駅たいら」
  • spot 12
    喜平商店
    豆腐本来の姿を味わえる五箇山最古の堅豆腐の老舗
    堅豆腐(かたどうふ)は、白山を中心とした北陸の山間地で広く作られている。豆腐はもともと、中国から製法が伝わったとされ、堅豆腐が本来の姿という。戦後に普及した絹ごし豆腐のようなやわらかさはなく、文字どおり縄で結わえて運べるほど堅めだ。五箇山伝統の堅豆腐を提供する喜平商店は、相倉集落から車で10分弱の国道156号沿いにある。五箇山で最古、大正初期創業の豆腐店だ。味の決め手になる水は、標高1000mほどのブナ林から湧く弱アルカリ性の伏流水を使う。にがり(硫酸カルシウム)は、豆腐が分離しやすいよう強め。南砺市産のエンレイ大豆本来の味をギュッと凝縮して生かすのが最大の特徴である。小さく切っても型崩れしないので扱いやすい。3代目店主の岩崎喜平さんは「刺し身でもいけるが、薄めに切って揚げるか田楽にすると、さらにうまみが増す」とイチ押しの味わい方を紹介する。薫製(くんせい)は日持ちするので土産品にもおすすめ。
    写真左から「五箇山どうふ」一角(ひとすみ)500円、薫製した豆腐を意味する「いぶりとっぺ」1本440円、「うすあげ」1枚150円、「あつあげ」1枚200円
  • spot 13
    井波彫刻総合会館
    欄間の名作からウルトラ怪獣までが並ぶ、木彫刻の殿堂
    館内には運気の上がる縁起のよい作品を中心に、名工の手による欄間(らんま)から円谷プロとコラボしたウルトラマンの怪獣まで、200点以上の多彩な作品が並ぶ。匠の技と歴史に触れながら、木彫刻をより身近に感じられる施設である。
    広大な敷地内には、彫刻を屋外展示する芝生広場「井波芸術の森」がある
  • spot 14
    道の駅井波 いなみ木彫りの里創遊館
    巧みの技を間近で見学、木彫刻作りにも挑戦を
    井波彫刻総合会館に隣接する道の駅井波では、めでたさ一杯の七福神の木彫刻が訪れる人を出迎えてくれる。木彫刻に親しみながら土産に最適な特産品を買えるほか、自ら作品を作り濃厚な時間を過ごせる複合施設だ。
    井波彫刻総合会館に隣接し、普通車で100台収容の広々とした駐車場を備える
  • spot 15
    南砺市立福光美術館
    地元ゆかりの版画家棟方志功、日本画家石崎光瑤(こうよう)らの代表作を展示
    南砺市(なんとし)の旧福光町にゆかりのある版画家棟方志功と日本画家石崎光瑤(こうよう)、彫刻・陶芸家の松村秀太郎の3氏の作品を展示する美術館として1994年(平成6)10月に開館。美術愛好家ら年間約2万人が訪れている。
    緑豊かな場所に立地。屋外展示されている作品にも静かに向き合うことができる
  • spot 16
    分館 棟方志功記念館 愛染苑
    世界的作家の創作の原点が、ありのままの姿で残る
    美術好きや棟方志功ファンなら、福光美術館から車で10分ほどの場所にある分館の棟方志功記念館 愛染苑(あいぜんえん)へも足を運んでみるといい。棟方が疎開当時に暮らした旧住居「鯉雨画斎(りうがさい)」と、彼のよき理解者で仕事も手伝った石崎俊彦の旧住宅=民藝館「青花堂(しょうげどう)」などが、当時の姿のまま残されている。最大の見どころは、アトリエを兼ねていた住まいの座敷や風呂、トイレの壁や天井まで、棟方が住居のいたるところに直接描いた作品の数々だ。8畳の座敷には鯉やナマズ、厠(かわや)には生きいきとした天女や菩薩像が残る。40代前半の働き盛りの棟方が発した、あふれんばかりの創作意欲のすさまじさをマジマジと感じることができる。さらに、表の庭を見渡せば、山登りが好きだった棟方らが持ち帰って植えた花々が、今も可憐な花を咲かせている。予約をしておくと当時の暮らしぶりや美術サロンの役割を果たした福光の土壌など、知識豊富な職員からより詳しい解説を聞くことができるのでおすすめ。
    棟方志功旧住居「鯉雨画斎」や、棟方のよき理解者だった石崎俊彦の旧住宅と庭がそのまま残されている
  • spot 17
    南砺バットミュージアム
    マニア垂涎の550本のコレクション、オリジナルバットも作れる
    ミュージアムは、うっかり見過ごすほど、さり気ないたたずまいだ。しかし、中に入ると2フロアを埋め尽くす大量のバットに圧倒される。その数およそ550本。ベーブ・ルースや王、長嶋ら球界のレジェンドに加え、掛布雅之、イチローら往年の名選手たちが使ったバットが、ずらりと並ぶ。一部のバットは、見るだけでなく実際に手に取ることもできる。ファンやマニアには感慨もひとしおで、思わずニンマリせずにはいられないだろう。ミュージアムがある南砺市福光は、国内で作られる木製バットの約半数を占める日本の一大生産地だ。原材料産地の北海道、九州と大消費地の大阪、東京との中間に位置する地の利を生かし、大正時代から生産拠点として栄えたという。昭和をピークに中国産の台頭などで生産総数は下がったものの、今もシェア1位は変わらない。プロで活躍する有名選手らも究極の一本を求めてこの地に足しげく通う。予約すれば提携する工場を見学することも可能だ。また、館長を務める酒店店主の嶋信一さんのバットの知識はピカイチで、野球好きのよき相談相手になってくれる。
    全バットに選手名、所属球団、出身地などのプロフィールが記されている。2階に展示されている一部は、実際に手に取ることができる
  • spot 18
    Gelateria ZUCCA
    厳選した地元食材の味をそのまま楽しめるジェラート専門店
    富山県産100%の生乳と地元産食材にこだわり、素材の味をそのまま楽しめるジェラートとして販売する専門店だ。味の決め手となる生乳は、南砺市福光にある牛乳工場で、自然の風味や栄養を生かすため、65℃の低温で30分じっくり時間をかけて殺菌されたものを使う。さらに、露地栽培で育った南砺市立野原のイチゴや五箇山の山間部で放し飼いされたニワトリの卵などを厳選して使い、食材そのものの味が濃厚で、コクがありながらあとをひかないジェラートを作り上げる。子どもから高齢者まで、食べやすくさっぱりした味わいが特徴だ。食材の収穫は、農家側のタイミングにあわせるため、季節限定のメニューも多い。店内には10人ほどの座れるイートインスペースがあるほか、テイクアウトもできる。また、Gelateria ZUCCA(じぇらてりあずっか)に立ち寄ったら、周辺のまち歩きもおすすめだ。同店の立地する「本町通り」から1本細い路地に入ると、昔ながらの民家や歴史を感じる商店が軒を連ねている。細い小路の向こうに見える坂道など、リズムのある風景が散策をいっそう楽しくしてくれる。
    いちごミルクとパンプキン(左)、フレッシュミルクとブルーベリーヨーグルト(右)、ともに450円
  • spot 19
    城端別院善徳寺
    城端に450年の歴史を刻む、加賀藩の庇護を受けた大刹
    真宗大谷派の寺院・城端別院善徳寺(じょうはなべついんぜんとくじ)は約450年間、城端の中心にあり、華麗な井波彫刻で飾られた山門、本堂、太鼓楼、鐘楼の4棟は、富山県の指定文化財である。また、戦災、火災を免れていることから、貴重な寺宝を数多く有している。
    山号は「廓龍山」。約200年前に建てられた山門は、2月の涅槃会(ねはんえ)と7月の虫干法会のときに限り公開される
  • spot 20
    城端曳山会館
    絢爛豪華な庵屋台、曳山、剱鉾を、一年を通して公開
    絢爛豪華な曳山(ひきやま)が城端の町を巡る曳山祭りは、毎年5月に行われる。この曳山や庵屋台(いおりやたい)を、一年を通して公開するため、1982年(昭和57)に開館したのが城端曳山会館だ。300年の歴史を誇る祭りの主役を間近で見学できる。
    館内では昼と夜の照明を数分ごとに繰り返す。提灯の明かりに浮かぶ曳山は、雅な雰囲気に満ちている
  • spot 21
    土蔵群 蔵回廊
    明治期の4棟の土蔵群を「豪商の蔵」として再生
    城端の豪商・野村理兵衛が1903年(明治36)頃、自邸とともに建てた4棟の土蔵群を「豪商の蔵」として改修、再生した展示施設。銀行家だった野村の邸宅は、第二次大戦後に解体され姿を消したものの、もともと独立していた真っ白な4つの蔵を1つに結ぶことで、展示施設に生まれ変わった。設計はイギリスから招いた建築家のアラン・ホーサイスとゴードン・ベンソンである。建物は城端曳山会館と直結しており、館内では曳山の車輪の実物、欄間のほか、城端蒔絵などの伝統工芸品や町の歴史がわかる資料類も展示する。1階内部は3室の展示室、2階は回廊形式で展示室を一巡しながら鑑賞できる構造だ。近代的な雰囲気でゆるやかなカーブを描く回廊は、城端別院善徳寺の山門に彫られた龍をイメージしたもので、建物そのものが美しい展示品でもある。一方、外観では、窓部分の白漆喰を塗った片開きの土戸が土蔵群の色調の強いアクセントになっており、白が上品さも醸し出し印象的だ。
    城端別院善徳寺へとつながる通りに面して立つ土蔵群。板張りで趣のある建物が、回廊で結ばれている
  • spot 22
    手づくりの店 桂湯
    有形文化財の昭和の銭湯が手作り雑貨の店に変身
    昭和初期に建てられ、2019年(令和元)9月に国の登録有形文化財に認定された銭湯を、そのまま再利用した雑貨店だ。店主の山本富士子さんは2004年(平成16)、約120年続いた銭湯を廃業した。夫を亡くしたことが廃業の理由だった。その後、さびしそうにしている山本さんを見かねた友人や親類が、手作りした雑貨品やクラフトを手に立ち寄るようになる。着物を再利用した布製品など丹精を込めた品々を前に、やがて元銭湯を活用して販売しようという話が具体化していく。友人らは店の改装にも力を貸し、かつての洗い場は販売スペース、番台はレジに変わった。今では友人にも山本さんにも、店が活力の源になっている。城端では今も、農産物などを「お福分け」する習慣がある。店には、その返礼品にちょうどいい雑貨を求めて、常連客らが訪れる。また、レトロな昭和の風情を懐かしもうと、立ち寄る観光客も少なくないという。ノスタルジーに浸りながら、ほっこりするような手作りの品々を選んでみてはいかがだろう。
    国道304号線から西側へ50mほど入った筋の角地にあり、正面外観が目を引く
  • spot 23
    じょうはな織館
    レンガ張りのハイカラな擬洋風建築で織物体験を
    城端の絹織物は500年近い歴史を誇り、主要産業として町の隆盛を支えてきた。その栄華を感じられるのが「じょうはな織館」だ。歴史的建造物の中で機織り体験に興じたり、一服しながらくつろいだりしてみよう。
    間口約10m、奥行約22mの建物。実は木造2階建てだ
  • spot 24
    菓子蔵処 田村萬盛堂
    江戸時代から続く老舗、菓子文化の歴史がわかる木型館も併設
    田村萬盛堂(たむらまんせいどう)は、寛政年間(1789~1801年)に初代萬屋幸助が創業した、200年を超える歴史を誇る老舗の和菓子店である。近隣に、菓子作りで使用してきた木型の展示施設も設けており、城端の菓子文化の伝承を担う役割も有している。
    写真右は「木の葉石」。左は漢方薬にも使われる城端産の蚕(かいこ)の糞(ふん)が入ったクッキー「蚕紗(さんしゃ)」。ともに1個162円
  • spot 25
    ANGO安居
    和洋融合のオリジナルスイーツは鮮やかな色合いも人気
    ANGO安居(あんごやすい)が店を構える城端は、人口比で菓子店の数が多いとされる地域。「お福分け」の返礼として菓子を選ぶ住民が多いのも理由のひとつだとか。多くの菓子舗が競い合う土壌で1909年(明治42)の創業以来、変わらぬ人気を誇るのがANGO安居だ。4代目の安居範光さんは、富山県内のフランス料理店とヨーロッパで修業を重ねたのち、2012年(平成24)に店名と店舗をリニューアルして老舗に新風を吹き込んだ。新たな代表作が、和洋を合体させた「もちフィナンシェ」である。もっちりとした餅に、アーモンドパウダーと芳ばしい焦がしバターを使ったフィナンシェを重ね、生地を2層仕立てにして焼いた異色の組み合わせ。抹茶やイチゴなど加えるフレーバーによって変わるカラフルな色合いも目を楽しませる、店いちばんの売れ筋商品となっている。安居さんは味のほか、「開封したときに美しさと喜びを感じてもらう」ことも想定しながら、菓子作りに励むという。気分を盛り上げるオリジナルのスイーツは、格好の城端土産になりそうだ。
    写真右は地元産イチゴなどのゼリーを7色に重ねた「葛(くず)のレインボー」(480円)。左に並ぶ「もちフィナンシェ」は1本180円で、18種類の味がある
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旅のヒント

  1. その1

    五箇山へはJR北陸新幹線の新高岡駅やJR高岡駅から世界遺産バスに乗り換えて50分で着く。車なら東海北陸自動車道の五箇山ICが最も近く、菅沼集落まで3-4分だ。

  2. その2

    井波地区へは、あいの風とやま鉄道高岡駅からバスで55分。車なら北陸自動車道砺波ICから約15分で八日町通り下の「井波交通広場駐車場」に着く。

  3. その3

    井波と五箇山の間は車で20分ほどなので、足早に1日で両エリアを巡ることもできる。バスは運行本数が限られるので注意が必要だ。

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