東京

巣鴨・駒込・王子

SUGAMO / KOMAGOME / OJI

懐かしさただよう街の各所に名園が点在する東京23区の北部

ローカル感と町の賑わいがほどよく混じり合った山手線の北部エリア。庭園や公園、寺社の多い落ち着いた雰囲気で、歴史をたどる街歩きが楽しい。この地には古くから人々が暮らしており、日本最大級といわれる中里貝塚が見つかっている。古代には律令制のもと、豊島郡衙(地方役所)が置かれて栄えた。江戸時代に入ると人口も増え、街ごとの個性がはっきりしてくる。巣鴨は中山道の休憩所として賑わい、駒込には六義園が造営された。王子の飛鳥山は桜の名所となり、江戸っ子たちが無礼講で花見を楽しんだという。現在の豊島区、文京区、北区にまたがるこれらの街を徒歩で巡り、バラエティに富む見どころを一度に訪れることも可能。歩いてみれば、懐かしさ漂よう雰囲気が心地良く、人々の飾らない暮らしが垣間見える。都心の喧騒を離れてのんびりと過ごせる場所だ。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    六義園
    和歌に詠まれた名勝を映し出す大名庭園の代表格
    小石川後楽園とともに「江戸の二大庭園」と讃えられる大名庭園。和歌や中国の古典にちなんだ景観を庭園に取り入れているのが大きな特徴で、「和歌の庭」とも称される。
    約8万8000平方メートルの面積をもち、しだれ桜、ツツジ、アジサイなど花の名所としても知られる
  • spot 02
    東洋文庫ミュージアム
    貴重な書籍とカフェに癒やされる知のミュージアム
    有名な著作や貴重な資料など、東洋に関する選りすぐりの文献を展示する東洋文庫ミュージアム。建物のデザインや展示の美しさも見どころで、すてきなカフェも併設するなど魅力いっぱいの博物館だ。
    現在の価値で総額70億円に相当する書籍などを陳列するモリソン書庫
  • spot 03
    巣鴨地蔵通り商店街
    歩いて、食べて、買って楽しい「おばあちゃんの原宿」
    道の両側に和菓子や衣料品、仏具などを売る店が並び、買い物客で賑わう巣鴨地蔵通り商店街。昔ながらの懐かしい雰囲気と、人との触れ合いを楽しみつつ散策できる、ちょっとしたテーマパークのような通りだ。
    大きな看板が目立つ賑やかな商店街
  • spot 04
    とげぬき地蔵尊髙岩寺
    病気平癒の霊験あらたかな巣鴨のシンボル的存在
    赤い山門をくぐり、参拝客がひっきりなしに訪れる。毎月4・14・24日の縁日にはさらに多くの人で賑わう。江戸の昔から「とげぬき地蔵」として親しまれる高岩寺は、地域の中心的存在で人々の心のよりどころでもある。
    巣鴨地蔵通り商店街に面した高岩寺の山門
  • spot 05
    旧古河庭園
    和と洋が調和する稀有な庭園で大正ロマンに浸る
    色とりどりのバラが咲く洋風庭園と、それを見下ろして建つ洋館で知られる旧古河庭園。敷地内には京都の名庭師による日本庭園もあり、和洋2つの異なる趣を同時に楽しめるのが大きな特徴だ。
    洋風庭園の斜面の上に、外壁を安山岩で覆われた重厚な洋館(旧古河邸)が建つ
  • spot 06
    旧古河邸
    優美な装飾が施されたジョサイア・コンドル最晩年の作
    旧古河邸は、旧古河庭園内にある重厚な洋館。日本に西洋建築の技術を伝えたイギリス人建築家のジョサイア・コンドルが設計し、1917年(大正6)に完成した。地上2階、地下1階からなるレンガ造りで、賓客を迎えた1階はすべて洋室、生活の場でもあった2階は2つの寝室を除く全室が和室という珍しい様式となっている。古河財閥3代目当主・虎之助の本邸として建てられ、のちに迎賓館となった。昭和に入って荒廃するが、修復されてかつての姿を取り戻している。玄関扉のステンドグラスには古河家の家紋をデザイン。中に入ると、ビリヤード室や書斎などいくつもの部屋がある。メインの大食堂は、赤い壁と白い天井のコントラストが美しい。天井の果物の装飾などの細かい部分にも注目してみよう。応接室は随所にバラの装飾が施され、「バラの部屋」とも呼ばれる。建物を貸し切って結婚式や披露宴を行うことも可能だ。貴重な文化財でのウエディングは、一生の思い出になるに違いない。
    大食堂は喫茶室にもなっており、洋風庭園を眺めつつ紅茶やケーキを楽しめる
  • spot 07
    飛鳥山公園
    大人も子どもも楽しめる緑豊かな都民のオアシス
    都内有数のお花見スポットとして知られる公園。駅前の便利なロケーションにありながら豊かな自然に恵まれ、3つの博物館があるなど見どころも充実している。昔から多くの人々に愛されてきた憩いの地だ。
    木々が多く爽やかな空気に満ちた公園内の散策路
  • spot 08
    北区飛鳥山博物館
    歴史・自然・文化に関する豊富な展示で北区がわかる
    調査研究などの活動を幅広く行う郷土博物館で、北区に関する展示がわかりやすく興味深いと好評。特別展示室や講堂のある2階から入って階段を下りると、まず見えてくるのが豊島郡衙(ぐんが)の正倉だ。奈良時代にこの地にあった役所の米倉が実物大で復元されており、ウェルカム映像が楽しく展示を紹介してくれる。その奥には、北区とその周辺地域の考古、歴史、民俗、自然などに関する14のテーマに沿って展示物が並ぶ。「縄文人のくらし」のコーナーでは、高さ4.5mにも及ぶ中里貝塚の標本が目をひく。実際の中里貝塚は保存のために埋め戻されており、貝層を見られるのはここだけという貴重な場所だ。ほかに弥生時代の竪穴式住居の実物大模型や、江戸時代の花見弁当のレプリカも人気の展示物となっている。見学後は3階の喫茶カフェ・ヴァーチュで、飛鳥山名物というおはぎを味わいながら休憩したい。
    1階は常設展示室で、一部が吹き抜けとなっており開放感がある。古代関連の展示物が豊富
  • spot 09
    紙の博物館
    奥深い紙の世界に触れられる、全国でも数少ない専門博物館
    日本の伝統的な和紙と、近代日本の発展を支えた洋紙の両面から、紙の歴史と文化、産業について紹介する博物館。明治初期に製紙工場のさきがけとなった抄紙(しょうし)会社が開業した王子にあり、4万点の資料と1万5000点の図書を保管、展示している。2階の入り口を入ったエントランスホールの壁には、6畳もの大きさの手すき和紙に描かれた『聖徳太子御影(みえい)』が飾られている。展示室は、2、3階が常設展、4階が常設展と企画展のスペースだ。2階では「紙と産業」をテーマに、洋紙に関する資料などを公開。大量生産に必要な大型機械の実物や模型が興味深い。3階の「紙の教室」では、紙の基本とリサイクルについて小学生向けにわかりやすく紹介している。4階の常設展のテーマは「和紙と文化」。日本文化を支えてきた和紙の歴史や用途、産地などを、豊富な展示物を用いて解説している。
    博物館入り口向かって右脇には、紙の原料となる植物の鉢植えが並ぶ
  • spot 10
    渋沢栄一旧飛鳥山邸跡
    渋沢栄一の旧邸宅跡に建つ大正時代の建築と博物館
    日本の近代経済社会の基礎を築き、社会公共事業や国際交流においても指導的役割を果たした実業家・渋沢栄一(1840~1931)。かつて飛鳥山の一角には渋沢の邸宅があったが、建物の多くが太平洋戦争の空襲により焼失した。大正時代に建てられた「晩香廬(ばんこうろ)」と「青淵(せいえん)文庫」の2棟が現存し、どちらも国の重要文化財に指定されている。旧邸宅跡地には1982年(昭和57)に、渋沢の生涯と事跡をより広く深く紹介するための「渋沢史料館」がオープン。常設展示室ではその91年の生涯、活動や思いについて、資料や映像、自身の言葉などからたどることができる。史料館のチケットで、晩香廬と青淵文庫の内部見学も可能。渋沢は丹念に造られた晩香廬をこよなく愛し、国内外の賓客をここに迎えたという。青淵文庫には渋沢家の家紋「丸に違い柏」にちなみ、柏の葉をデザインしたステンドグラスやタイルが配されており、こちらも美しい。
    渋沢栄一の80歳と子爵に昇格したお祝いを兼ね寄贈され、書庫や接客の場として使われた「青淵文庫」
  • spot 11
    あすかパークレール
    飛鳥山をゆっくりと上る小さくてかわいいモノレール
    公園入口駅と山頂駅間の48mを運行する自走式モノレールのあすかパークレール。飛鳥山の「アスカ」とエスカルゴの「カルゴ」を組み合わせた「アスカルゴ」の愛称をもつ車両が、飛鳥山のへりをカタツムリのように上る姿がかわいらしい。6つの椅子席が並ぶ最大16人乗りの車両に乗り込むと、無人運転が始まる。上がっていくにつれて路上の都電や車が小さくなり、起伏に富んだ街並みを見下ろせるようになる。到着までたった2分だが、車内アナウンスも流れ、ちょっとした旅行気分だ。あすかパークレールは2009年(平成21)から運行を開始した。運賃は無料で、車いすやベビーカーにも対応していることから、子どもや高齢者、障害者など、誰もが気軽に飛鳥山公園を訪れることができるようになった。初夏には沿線に植えられたアジサイが花を咲かせ、車窓の風景に彩を添える。
    飛鳥山山頂に向かってゆっくりと上るアスカルゴ。ふもとには都電荒川線が走る
  • spot 12
    あらかわ遊園
    3年間の休園期間を経て全面リニューアルした区立遊園地
    2018年(平成30)12月から休園していたあらかわ遊園が、2022年(令和4)4月リニューアルオープンした。同園の目玉ともいえる観覧車の高さが約30mから約40mへと大きくなったのをはじめ、全面的に乗り物や施設が新しくなった。同園の歴史は1922年(大正11)にさかのぼる。明治、大正の時代には今の隅田川沿いに数多くのレンガ工場があった。その跡地のひとつに造られたのが「荒川遊園」。園内には大小の滝や築山、池などがあり、たいへん賑わっていたという。戦時中は一時閉鎖されたが、1950年(昭和25)に荒川区立荒川遊園として生まれ変わった。都内唯一の区立遊園地である。園の中央にある観覧車があるエリアは「のりもの広場」と呼ばれ、メリーゴーランドなどがあり、広場を取り囲むようにスカイサイクルのレールが空中に続いている。その奥は「どうぶつ広場」で、ヤギが元気に鳴いていたりフクロウたちがじっとこちらを見ていたりする。ポニーの乗馬サービス(3~10歳)は大人気だ。周辺を眺めると、すぐ近くに住宅があるのもここならではの風景。素朴に気軽に楽しめるあらかわ遊園の魅力は変わっていない。
    あらかわ遊園を代表する乗り物の観覧車
  • spot 13
    眞性寺
    かつては中山道、今は商店街を行く人たちを見守るお地蔵様
    巣鴨地蔵通商店街の入り口にある眞性寺(しんしょうじ)の門から境内を見ると、大きなお地蔵様が目に入る。江戸六地蔵尊第三番のお地蔵様で、高さは2.7m、台座を含めると3.5mの大きな銅製の座像だ。眞性寺は真言宗の寺で行基が開いたと伝えられるが、寺の始まりについてはよくわかっていない。中興されたのは、大坂夏の陣で徳川家が勝利した1615年(元和元)という記録が残っている。江戸六地蔵は、江戸深川の僧、地蔵坊正元(じぞうぼうしょうげん)が1706年(宝永3)に願主となって人々の寄進を募り、造られたもの。14年間に6体の地蔵菩薩を造立し、眞性寺のものは1714年(正徳4)に完成した。地蔵房正元は大病を患い地蔵菩薩に祈願すると完治したため、京都の六地蔵にならって江戸の街道筋の入り口6か所に1つずつ地蔵菩薩を造ることにしたと伝えられる。この正元という人物像については不明な点も多いが、東京に六地蔵尊を造り(1つは現存せず)、今も人々がそのお地蔵さまにお参りしているのは事実。かつて中山道を行く旅人たちが無事を願った眞性寺のお地蔵様は、今は商店街を行き交う人たちを見守っている。
    右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に宝珠を持ち、穏やかな表情をしている眞性寺のお地蔵様
  • spot 14
    巣鴨ときわ食堂 本店
    うまさと安さを追求した正統派の食堂で定食に舌つづみ
    数あるメニューのなかから定番人気の「えびフライ定食」(1140円)を注文。えびフライの大きさにまずは驚く。計ってみるとおよそ18cm。頬張ると、フライの先までえびの身があり、ジューシーな味わいをひと口目から楽しむことができた。衣だけが厚いフライも少なくないなかで、ときわ食堂がていねいな仕事をしている正統派ともいうべき店であることが、このえびフライを食べただけでもよくわかる。魚介類は毎日魚河岸で選び、米や肉類は生産者から直接仕入れている。すべての商品が自家製で、ぬか漬けもぬか床を毎日かき回して提供。みそ汁は1人前ずつ片手鍋で作り、熱々の風味にこだわる。さらにメニューを見ると、どの料理もリーズナブルな値段だ。「えびフライ」は単品だと850円。「えびフライ」と同様に人気がある「あじフライ」は550円。「メンチカツ」(600円)、「さば塩焼」(690円)、「まぐろ刺身」(710円)とどれもお手頃。これに290円追加すると定食を楽しめる。ご飯は1杯目のおかわりは無料。メニューはどれもおいしそうで迷ってしまうが、おすすめの「ポテトサラダ」(330円)はぜひ試してみたい。
    「えびフライ」はおいしいのはもちろん、ボリュームもたっぷり
  • spot 15
    わらび餅もとこ 巣鴨本店
    リーズナブルな値段で究極のおいしさを実現したわらび餅
    巣鴨にある眞性寺の横の通りに店を構える「わらび餅もとこ 巣鴨本店」。「三温糖」「黒糖」「抹茶」「紫芋」「しお」が練り込まれた5種類のわらび餅を販売している。「しお」は夏の期間限定品。どれも価格は540円だ。とてもやわらかいが弾力もあり、独特の食感がたまらないわらび餅は高級品として知られる。実際、日本のわらびにこだわり、高い価格で販売されているわらび餅も多い。だが、「わらび餅もとこ」がこだわるのは、リーズナブルな庶民的な価格。原材料はそれに見合ったものを探して使っているが、かといって味に妥協はしていない。「この値段で実現できる最高の味です」と代表の須永さんは断言する。その言葉のとおり、同店のわらび餅はどれも秀逸な味わい。定番人気の「三温糖」や「黒糖」は上品な深い甘みが感じられる。「抹茶」はほのかに抹茶の風味があとから追いかけてくる。「紫芋」は薄いピンク色のかわいらしい見た目で、芋のまろやかさが独特の甘みとなった仕上がり。「しお」はわらび餅のおいしさを塩が引き立てている。人気の期間限定商品は、春には「さくら」、秋から冬には「黒ごま」が販売される。
    定番人気の「わらび餅 三温糖」(手前)と「わらび餅 黒糖」
  • spot 16
    東京さくらトラム(都電荒川線)
    東京都に残る東京さくらトラム(都電荒川線)
    三ノ輪橋と早稲田間の12.2kmを結ぶ東京に残る路面電車、東京さくらトラム(都電荒川線)。運営する東京都交通局は2017年(平成29)4月、愛称を「東京さくらトラム」と決定し、その魅力のアピールを続けている。
    王子駅付近ではカーブの坂を行き交う電車が見られる
  • spot 17
    都電おもいで広場
    懐かしい停車場風のスペースで都電の旧型車両に遭遇
    東京さくらトラム(都電荒川線)「荒川車庫前」下車すぐの東京都交通局荒川電車営業所内に、2007年(平成19)にオープンした都電おもいで広場。旧型車両が2両展示されていて、土・日曜、祝日(振替休日含む)の10時から16時まで見学できる(無料)。車両の1両は1954年(昭和29)製造の5500形(5501号車)。アメリカの路面電車委員会(Presidents’ Conference Committee)が開発したことからPCCカーとも呼ばれ、品川駅・上野駅間を1954年(昭和29)から1967年(昭和42)まで走り続けた。もう1両は旧7500形(7504号車)。1962年(昭和37)に製造された20両のうちの1両で、いくつかの路線で1998年(平成10)まで運行された。引退前の数年間は、おもに朝のラッシュ時の通学用電車として大塚駅前と町屋駅前間を走行し、「学園号」の愛称でも親しまれたという。PCCカーのなかには、東京さくらトラム沿線をイメージしたジオラマのほか、歴史的資料の展示や模擬運転台などがあり、都内の各所を走っていた都電の歴史に触れることができる。
    PCCカー(左)と「学園号」が展示されている都電おもいで広場
  • spot 18
    王子稲荷神社
    大晦日、狐が各地から集まってくる伝説で有名な関東稲荷総社
    JR王子駅西口から赤羽方面へ線路と並行する通りを5分ほど歩くと、王子稲荷神社に到着する。徳川家代々の将軍から崇敬されたこの神社は、狐にまつわる伝説が数多いこととでも知られている。
    社殿は1987年(昭和62)に総塗り替えが行われた
  • spot 19
    北区ふるさと農家体験館
    北区の真ん中で江戸時代の茅葺き屋根の古民家へタイムスリップ
    JR赤羽駅から歩いておよそ15分。商店街と住宅街を抜けて高層の大型マンションをすぐそばに見上げられる場所に、緑豊かな赤羽自然観察公園が現れる。その一角には、立派な茅葺きの家が立っていた。
    旧松澤家住宅。左奥に見えるのはうまやの建物
  • spot 20
    石鍋商店
    「葛餅」とは違う関東の「久寿餅」の奥深さを堪能する
    「くず餅」と聞いて、ほとんどの人が葛粉を原料とした「葛餅」を思い浮かべるだろう。だが、関東には別の「久寿餅」が存在する。「久寿餅は『麩』の副産物といえます」と話すのは石鍋商店の4代目ご主人。小麦粉をたんぱく質とでんぷんに分離し、たんぱく質を原料としたものが麩となるが、でんぷんは江戸時代、ふすまや障子を貼る糊として利用されていた。だが、それをもったいないと考えた人物がいたのか、あるとき食べてみると意外においしいということになったのではと考えられている。久寿餅は小麦のでんぷんを1年半から2年間、発酵させて作られた発酵食品。石鍋商店では、茨城の焼き麩店で1年間発酵させた小麦でんぷんを、さらに同店で半年から1年間発酵させる。その後、種類や発酵期間の違う小麦でんぷんを独自のブレンドで配合し、タンクへ入れて攪拌して12時間おくと、でんぷん質が底に沈殿するので、上水を排水して新しい水を入れる作業を4、5回繰り返す。そうすることで、発酵したでんぷんの酸味や臭いがなくなる。この原料をふかしたものが久寿餅だ。やわらかく、同時に歯ごたえもある食感は独特。久寿餅を食べるためだけに石鍋商店を訪ねる価値がある。
    タンパク質の入っていない久寿餅(店内600円。テイクアウト490円)は元祖グルテンフリーの食品ともいえる
  • spot 21
    本妙寺
    遠山の金さんのお墓参りもできる徳川家ゆかりの寺院
    JR巣鴨駅から国道17号線を板橋方面へ歩くことおよそ5分。豊島市場の先で右折すると遠くに本妙寺(ほんみょうじ)の門構えが見えてくる。著名人の墓所が数多くあるこの寺は、明暦の大火の火元とされるが、その真偽は不明だ。
    本妙寺の境内には墓所の案内板もあり、著名人の墓の場所が記されている
  • spot 22
    明壽庵
    下町の人の絆がはぐくんだ新しいのに懐かしい味わいの「あん食パン」
    JR東十条駅東口から商店街を10分ほど歩くと、ガラス張りの明るい建物が現れる。店名の明壽庵は明治、大正から続く地元の老舗に由来している。「明」は1889年(明治22)創業の明治堂から。明壽庵は明治堂の支店で、明壽庵代表の中山さんは明治堂の5代目。「壽」は久壽餅で有名な1887年(明治20)創業の石鍋商店から、久壽餅の「壽」をいただいた。「庵」はあんこ製造ひと筋の王子製餡所の「餡」に由来。王子製餡所は1925年(大正14)の創業だ。この3社は代々つきあいがあり、明壽庵はそのなかから誕生したといえる。中山さんが明壽庵を立ち上げるにあたって考案したのが、食パンの中にあんこを入れた「あん食パン」。明壽庵を代表する商品であり、明治堂にもないオリジナル商品だ。「あん食パン」のあんこは王子製餡所が独自に開発し、季節や天候にあわせて毎日炊き上げている。食パンには、石鍋商店が久壽餅の原料としている小麦でんぷんを発酵種として使用。久壽餅特有の甘い香りともちもちとした食感が生かされている。実際に「あん食パン」を食べると、弾力のある生地とふくよかな甘みのあんこのバランスが絶妙。その奥深い味わいには目を見張るに違いない。
    あんこを巻き込んだ「あん食パン」(1本1300円。ハーフ700円)。写真は1本
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旅のヒント

  1. その1

    JR山手線や京浜東北線、東京メトロ南北線の駅から徒歩で行ける見どころがほとんど。移動と観光を兼ねて都電荒川線に乗車してみるのもいい。

  2. その2

    旧古河庭園など駐車場のない見どころも多いので、車で行く場合は周辺のコインパーキングなどを利用することになる。事前に場所を調べておこう。

  3. その3

    飛鳥山公園は春の桜、旧古河庭園は春と秋のバラの季節に特に混雑するので注意。

  4. その4

    飛鳥山公園の散策に疲れたら、お食事処「飛鳥山さくら亭」か、北区飛鳥山博物館の3階にあるカフェ・ヴァーチュでひと休みを。カフェ・ヴァーチュのみを利用する場合、博物館の入館料は不要。

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